「信じるな、疑うな、確かめよ」発酵発芽玄米で、食と生き方の本質を問い直す
合同会社みらい 代表 篠原 正樹 氏
発酵発芽玄米の製造・販売に取り組む篠原正樹さん。元理科教員としての視点を持ち、食や身体、環境について「自分で確かめること」を大切にしてきました。現在扱っている発酵発芽玄米について、篠原さんは「世界中を探しても同等品はない」と語ります。単に玄米の栄養価を伝えるのではなく、白米中心の食生活や精製されすぎた炭水化物が身体に与える影響を見つめ直し、発酵食品を主食として取り入れる意義を広めようとしています。かつては微生物を活用した川や海の浄化にも取り組み、その経験が日本科学振興財団(JSPF)との縁につながりました。食、環境、教育を貫く篠原さんの考え方について伺いました。
発酵発芽玄米を通じて、食の当たり前を見直す
――現在の事業内容について教えてください。
発酵発芽玄米の製造・販売を行っています。ただ、私が伝えたいのは「玄米には栄養がある」という一般的な話だけではありません。
多くの人は、白米は玄米からぬか層や胚芽を取り除いたもので、そこに栄養が含まれているから玄米の方が良い、と理解しています。もちろんそれも間違いではありませんが、私が一番大切だと考えているのはそこではないのです。
白米やうどん、ラーメンなどは、精製されすぎた炭水化物です。そうしたものを多く摂ると血糖値が急激に上がり、インスリンが出て、今度は血糖値が急激に下がる。いわゆる血糖値スパイクが起きます。
私は医師ではありませんので医学的な断定はしませんが、理科の教員として科学的な見方をすれば、この血糖値の急激な変化が空腹感や身体への負担につながっていると考えています。
――扱っている商品のこだわりについて教えてください。
玄米は白米に比べて血糖値が急に上がりにくいと考えられますが、普通の玄米は硬く、食べにくいため続かない人が多い。そこで、寝かせ玄米のように炊いた後で数日保温し、食べやすくする方法もあります。
ただ、私たちが扱う発酵発芽玄米は、生の硬い玄米の状態で、数時間という短時間のうちに発酵させています。玄米の芯まで発酵させるには、水分や工程が必要で、ただ菌を入れればできるものではありません。そこが大きな特徴です。
発酵食品は調味料や嗜好品としては多くありますが、発酵したもの自体を主食にするという考え方は、これまであまりありませんでした。発酵発芽玄米は、普通に炊くだけで食べられ、しかもおいしい。だからこそ、次世代の主食として広めていく意味があると考えています。
環境浄化の経験が、現在の挑戦につながった
――発酵発芽玄米に取り組むようになった経緯を教えてください。
もともと理科の教員として、環境問題や学校の課題に向き合ってきました。いじめや校内暴力の根本には、自分より弱い立場のものを踏んでも勝てばいいという考え方があるのではないかと感じていたのです。
そこで、子どもたちと自然環境を戻す活動に取り組み、微生物を使って川や海の浄化を行いました。岡崎市内の早川では、三面コンクリート張りで魚が来ないような場所に、最終的に天然のアユが上がってくるようになりました。
その記録は生徒たちが映像作品「ドブ川に輝くアユ」にまとめ、全国子ども科学映像祭で表彰を受けています。
自費で活動を続けた姿勢が日本科学振興財団(JSPF)との縁につながり、発酵発芽玄米の開発もその流れの中で始まりました。特別な技術を借りて製品化し、今はそれをどう一般の方に届け、主食として広げていくかが自分の役割だと考えています。
自分で考え、周りも生かす人と進んでいきたい
――現在の組織体制や、今後一緒に働きたい人について教えてください。
現時点では、従業員と呼べる人はいません。忙しい時に妻に手伝ってもらう程度で、家族経営に近い形です。製造については別のところに担ってもらっていますので、私はできたものを会員の皆さんにどう上手に届けていくか、そこを中心に行っています。
現在の会員数は約200名です。ただ、本当に広げていくには、これが何万人という規模になっていかなければなりません。今後事業が大きくなれば、誰かに加わってもらうことも必要になると思います。その時に一緒に働きたいのは、自分で考え、自分の判断できちんと動ける人です。
私は、今の学校教育に染まりすぎていない人がいいと思っています。勝とう、いい地位を得よう、自分がいいところを取ろうという考えではなく、自分が生きるための最低限を確保したら、残った力は周りが喜ぶように使う。そういう考え方を大切にしたいのです。
子どもたちにも、私はそういう説教をしたことはありません。EMのことも、環境活動のことも、細かく教えたわけではありません。
それでも、私がやっていることを見て伝わった部分はあると思います。自分も大切にし、目の前の人も大切にする。そういう人となら、一緒に進んでいきたいです。
認知を広げる先に、自分で確かめる社会をつくる
――今後挑戦していきたいことを教えてください。
まずは、発酵発芽玄米を知っていただくことです。今は、ほとんどの方がまだ存在を知りません。テレビCMがあるわけでもありませんし、誰か有名な人が良いと言っているから広まるものでもない。
だからこそ、実際に食べたり、ホームページを見たりして、自分の価値判断で「これは良い」と確かめられる人を増やしていきたいのです。
私が大切にしている言葉は、「信じるな、疑うな、確かめよ」です。信じるだけでも、疑うだけでもなく、自分で確かめる。発酵発芽玄米を広げることと並行して、一般の人が自分で物事を考えられる状況をつくっていきたいと考えています。
環境の面では、余裕が出てきたら、また三河湾を立て直すようなこともしたいです。現在は、フィリピンのラグナ湖に関わるプロジェクトにも一部携わっています。
水質浄化はその全体の一部ですが、とても大事な部分です。かつて微生物の力で川や海を変えてきたように、今度は発酵発芽玄米を通じて、多くの人に一緒に動いてもらいたい。消費する皆さん自身が、広げる力になっていくことが必要だと考えています。
——お休みの日はどのように過ごしていますか。
休みの日の過ごし方として特別な趣味はあまりありませんが、スーパー銭湯や温泉施設のようなところで、だらっと過ごすことはあります。
また、年に何回か、あえて発酵発芽玄米を食べない期間をつくることもあります。自分の身体で違いを確かめたいからです。理科の教員だったこともあり、誰かが言っているからではなく、自分で体感して確認したいのです。
—―最後に読者の方へ伝えたいことはありますか。
読者の方に伝えたいのは、自分にとって最高の名医は、自分の中にいるということです。その名医が十分に力を発揮できるような生活や考え方をしていくことが大切です。「自分が自分が」ではなく、「周りを生かそうとする」と、結果として自分も生きる。
細胞一つひとつの働きも、そういうものだと考えています。自然に感謝し、周りに「ありがとう」と言える生き方をしていくこと。その先に、良い意味での因果応報が返ってくるのだと思います。