はぐれた花に新たな価値を――謳花が届けるドライフラワーの可能性

謳花 代表 石川 浩章氏

ドライフラワーを用いた空間装飾やインテリア制作を手がける謳花。店舗やミュージックビデオの装飾をはじめ、通信販売向けのプロダクト制作・販売も行っています。同社が大切にしているのは、市場では価値を見出されにくい花々にも目を向け、それぞれの魅力を活かして新たな表現へとつなげることです。今回は代表の石川浩章氏に、事業への想いやこれまでの歩み、今後の展望について伺いました。

「はぐれた花」に価値を見出すものづくり

――現在の事業内容について教えてください。

当社ではドライフラワーを活用した空間装飾やインテリア制作を行っています。店舗装飾のほか、ミュージックビデオの装飾を手がけることもあります。また、通信販売向けのプロダクト制作・販売も行っています。

――事業を展開するうえで大切にしていることや特徴を教えてください。

私たちには「ハグレ」というプロジェクトがあります。市場で流通する花は、生産者の方々が手間をかけて育てた美しい花ですが、一方で山に咲く花や剪定によって取り除かれた植物など、市場では評価されにくい植物にも大きな魅力があります。

例えば、太陽の方向へ向かって曲がった枝や、小さな花、色の薄い花などは、生花市場では価値が低く見られることがあります。しかし、ドライフラワーの表現では、そうした個性こそが魅力になる場合があります。私たちはそうした植物と市場流通の花を組み合わせながら作品づくりを行っています。

また、イベントで飾られた後に役目を終えた花を譲り受け、ドライフラワーとして再び活用することもあります。SDGsのためという考え方ではなく、本当に価値があるものだからこそ使いたいという想いが根底にあります。市場から“はぐれ”てしまったものにも価値があることを伝えていきたいと考えています。

イベント業界から花の世界へ

――独立されたきっかけを教えてください。

もともとはイベント制作会社で働いていました。転機となったのは、たまたま植物に関わる案件を通じて、多くの人が植物に触れて喜ぶ姿を見たことです。企業のプロモーションイベントだけでなく、一般の方々が純粋に楽しめる場づくりにも挑戦したいと思うようになり、イベント事業を中心とする会社として独立しました。

その後、現在のクリエイターである秋田氏と出会い、イベント装飾の一環としてドライフラワーを取り入れるようになりました。大きな転機となったのはコロナ禍です。イベントが止まる一方で、自宅で花を楽しむ人が増えました。私自身も花を学び、自宅に花があることで気持ちが豊かになることを実感しました。

その経験から、「花には人を支える力がある」と感じ、この事業を本格的に伝えていこうと考えるようになりました。

ささやかでも希望が生まれる場所であり続けたい

――経営の判断軸になっている価値観はありますか。

立派な経営理念があるわけではありませんが、会社を始めた時から「希望が生まれる場所にできるだけ多く関わりたい」という想いがあります。

また、長い目で事業を育てることも大切にしています。秋田は「ずっと花に携わって生きていきたい」と言っています。好きなことで生計を立てられることは本当に幸せなことだと思います。その想いが長く続くように事業を育てていきたいと考えています。

もう一つ大切にしている言葉があります。以前お世話になった経営者の方から、「やり切った人には必ず次のステージがある」と言われました。私は音楽活動に打ち込みましたが、その夢は叶いませんでした。しかし後悔はありません。成功や失敗ではなく、やり切ることに価値がある。その考え方は今も大切な軸になっています。

日本らしさを世界へ届ける挑戦

――今後の展望について教えてください。

将来的には日本国内に店舗を持ちたいと考えています。私たちの仕事は大量生産ができるものではありません。一つひとつ手作業で制作しており、その工程自体に価値があると思っています。ですので、商品販売だけでなく、ものづくりの体験を提供する場にしたいと考えています。

代表的な商品の一つに「いちりん」があります。さまざまな背景を持つ花々を集め、一輪の花として表現しています。それぞれ異なる個性を持つ花が集まり、一つの花を咲かせる。その姿は、多様な人々、文化に彩られたこの世界そのものだと考えています。

また、百貨店での販売会では、海外生活の長いお客様から「これは日本の花だ」と言われたことがありました。実在する花ではないにもかかわらず、日本人特有の繊細な手仕事が感じられるという意味でした。その言葉をきっかけに、西洋発祥のドライフラワー文化を日本人らしい感性で表現し、それを世界へ発信したいという想いが強くなりました。

現在は北米市場への展開も視野に入れながら、日本らしい価値観やものづくりを届ける挑戦を進めています。

歴史から学び、未来を考える

――休日のリフレッシュ方法を教えてください。

以前は音楽活動に多くの時間を費やしていましたが、現在は読書が大きな楽しみです。特に日本の歴史に関する本を読むことが多く、日本人の価値観や文化がどのように形成されてきたのかに関心を持っています。

日本らしさとは何かを考えることは、作品づくりや海外への発信にもつながっています。歴史を学ぶことで、自分たちが表現したい価値や文化への理解も深まると感じています。

そして何より、「やり切ること」を大切にしたいと思っています。結果だけではなく、自分自身が納得できるまで挑戦すること。その積み重ねが次のステージにつながると信じています。

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