地元と旅人の記憶を結ぶ、手づくり駅弁のこれから
株式会社たけし 代表取締役 武士 勢 氏
静岡県伊豆市の駅で、駅弁の製造・販売を手がける武士氏。前身は寿司屋であり、地域に根ざした商いは約100年前から続いています。現在は、地場の食材を中心に用い、手づくりにこだわった駅弁を提供するほか、自宅で旅気分を味わえる通販商品にも力を入れています。駅弁は、旅の最後に手に取られることも多いものです。だからこそ、食べた人の旅の印象を損なわないよう、真心を込めて満足してもらえる商品を届けることを大切にしています。地域の魅力を伝え、駅前の活性化にもつながる存在を目指しながら、新たな挑戦を続けています。
目次
地域の味を守り、旅の記憶を支える駅弁づくり
――事業内容について教えてください。
静岡県伊豆市の修善寺駅にて【舞寿し】という屋号で、駅弁の製造・販売をしている会社です。駅弁の製造・販売以外では、通販にも力を入れています。
通販では、自宅で旅行を味わえるキットを販売しています。駅弁を自宅で作っていただいたり、観光マップなどを入れて発送したりして、自宅でも修善寺の観光を感じてもらえるようにしています。
――株式会社たけしならではの強みはどのような点にありますか。
他の駅弁業者さんと違うところは、すべて手づくりで作っていることです。地場の食材をメインにしていて、来ていただいた観光客の方に楽しんでもらい、修善寺を味わって帰っていただくことを目標にしています。
お弁当については、物凄くこだわりを持って作っています。イメージとしては、カウンターで食べる少し良いお寿司屋さんが渡すお土産のような感覚で提供しています。食べていただければ、きっと伝わるものがあると思っています。
――会社の理念や方針には、どのような想いが込められていますか。
弊社は約100年前からこの地域で商売をしてきました。
駅弁屋なので、お客様は旅行の最後に買って、電車で召し上がって帰られる方が多いです。そこでお弁当がおいしくなかったら、旅行自体が台無しになってしまうかもしれません。
だからこそ、真心を込めて、満足していただけるように作ることを大切にしています。お客様のため、地域のためということが大前提です。そこから外れるようなことはしないという想いがあります。
家業に戻り、代表として歩み始めた背景
――会社の成り立ちについて教えてください。
株式会社たけしの前身は寿司屋です。約70年前に祖父が創業し、そこから寿司屋から派生して駅弁へとつながっていきました。地域での商いとしては、約100年前から続いています。長く地域に根ざしてきた中で、今の駅弁づくりがあります。
代表になったのは今年の3月末からです。家業に戻ってきたのは約5年前になります。もともと家族経営でお弁当を作っていたのですが、母が病気になり、父ひとりでは難しいという状況になりました。そのタイミングで戻ってきた形です。
――経営判断をするうえで、大事にしている考え方はありますか。
一番は、自分たちのためというより、お客様に満足していただけるかどうかです。駅前が活性化するようなことであれば挑戦したいですし、修善寺という温泉地の名前を全国に広げていけるような施策であれば、どんどん取り組んでいきたいと思っています。お客様に満足していただくこと、そして地域のためになることを判断の軸にしています。
任せることで生まれる、現場らしい接客
――従業員の方とのコミュニケーションで大切にしていることはありますか。
従業員の人数はそこまで多くないので、自分が一生懸命やるかどうかというところもありますが、基本的には任せるようにしています。販売員さんや作り手には、好きなようにやってもらっています。ダメなところがあれば、そこは直してほしいと伝えますが、基本的には任せています。
――任せるうえで、どのようなことを重視していますか。
現場ではお客様とのコミュニケーションがあります。何を言われるか分からない部分もあるので、変にテンプレートを作るよりも、商品理解を高めてもらったうえで、あとは好きなように接客してもらう形にしています。商品を理解していれば、自分の言葉で伝えられると思っています。
駅前の活性化と、修善寺の魅力を広げる挑戦
――今後取り組んでいきたい挑戦について教えてください。
前提として、味を守ることや、お客様に満足してもらうことはもちろん大切です。そのうえで、駅前を活性化していくことや、地域のリーダーになっていくことが、自分たちのミッションだと思っています。
今は休業中ですが、駅弁カフェも来年を目安にリニューアルオープンする予定です。観光客の方はもちろん、地元の方にも満足していただけるものを、いろいろ考えていきたいです。
――駅弁カフェ以外にも、考えている展開はありますか。
まだ計画段階ですが、駅弁の車内販売を行ったり、日本酒とセットで駅弁を販売したりすることも考えています。東京から一本で来られる電車もあるので、車内で日本酒と一緒に楽しんでいただくような形も良いのではないかと思っています。
お客様に満足してもらえる面白いことや、修善寺のネームバリューを上げていくことを軸に、いろいろなことに挑戦していきたいです。
――現在向き合っている課題はありますか。
仕入れの部分が少し難しいです。食材を厳選して仕入れているため、なかなか仕入れられないこともあります。その点については、生産者の方と密にコンタクトを取り、円滑に進められるようにしています。
もう一つの課題は人員不足です。メイン商品の仕込みにはとても時間がかかります。骨を一本一本ピンセットで抜いたり、皮をむいたりする作業があり、今は自分が頑張れば何とかなる部分もあります。
ただ、今後さらに伸ばしていくため、また地元の方がもっと誇れる商品にしていくためには、人手が必要になると思っています。
自然と地方の魅力に触れ、次の発想につなげる
――お休みの日のリフレッシュ方法を教えてください。
サーフィンをしに海へ行きます。サーフィンをしていると、頭の中がリセットされる感覚があります。自然相手なので、目の前のことに集中していると頭が空っぽになります。終わった後には、新しいことが入りやすくなるように感じています。
――サーフィン以外に、意識していることはありますか。
積極的に地方へ旅行に行くようにしています。東京や大阪などの都市部で何が流行っているかも見に行きますが、自分たちが知らないお店や世界、食材などは、地方にもたくさん眠っていると思っています。
日帰りでも、できるだけ地方旅行に行くようにしています。そうした経験も、自分たちの商品や今後の展開を考えるうえで大切にしています。
――これからも大切にしていきたいことは何ですか。
お客様のため、地域のためということです。そこが一番です。味を守りながら、観光客の方にも地元の方にも満足していただけるものを作っていきたいです。駅前の活性化や修善寺の魅力を広げることにもつながるように、これからもいろいろなことに挑戦していきたいと思っています。