地域資源を未来のエネルギーへ――創業100周年を目前に挑む木質ペレット事業
株式会社高橋HD 代表取締役 高橋 博志氏
青森県を拠点に、木質ペレットの製造・販売を中心とした事業を展開する株式会社高橋HD。創業からまもなく100年を迎える同社は、時代の変化に合わせて事業を進化させながら、地域資源を活用した木質ペレット事業に取り組んでいます。 木材業からスタートした歴史を受け継ぎながら、新たなエネルギーの可能性を切り拓く高橋博志氏。本記事では、事業への想いや組織づくり、そしてこれから描く未来について伺いました。
目次
地域資源を活かし、木質ペレットで青森の未来を支える
――現在の事業内容について教えてください。
当社は木質ペレットの製造・販売を中心に事業を展開しています。もともとは製材業として木材を扱っていましたが、住宅着工件数の減少などを背景に、新たな可能性を模索する中で木質ペレット事業へ参入しました。
木質ペレットとは、木材を粉砕して圧縮した燃料です。当社ではペレットの製造を主軸としながら、その燃料を利用するペレットストーブの販売も手掛けています。燃料を普及させるためには、それを使う設備も必要になるためです。
私がこの事業に魅力を感じた理由の一つは、地域資源を活用できる点でした。青森県には豊かな森林資源があります。一方で、暖房用の灯油消費量は非常に多く、使えば使うほど地域のお金が外へ流れてしまいます。
それならば、地元の山にある資源を活かし、地域で循環するエネルギーをつくれないか。そんな発想から木質ペレットに可能性を見出しました。
また、放置された山林の活用にもつながります。
使われずに残っている木を資源として循環させることで、山の整備や環境保全にも貢献できます。地域の資源を活かしながら、青森県の未来につながる事業にしたいと考えています。
私が製造する燃料には「青森みらいペレット 」という名前を付けました。青森の未来につながるエネルギーはこれだという想いを込めています。地域に根差した資源を活かしながら、これからも青森の未来づくりに貢献していきたいですね。
時代に合わせて変化し続けることが100年企業の原動力
――経営者として大切にしていることは何ですか。
当社は来年で創業100周年を迎えます。創業当初は石材を扱う事業から始まり、その後は製材業、住宅資材販売へと事業を広げてきました。そして私の代になってからは住宅建材通販事業 や木質ペレット事業など、新たな分野へ挑戦しています。
振り返ってみると、100年間ずっと同じことを続けてきたわけではありません。その時代に必要とされるものを見極めながら、少しずつ形を変えてきました。
私自身も、その時代に必要とされるものを提供し続けることを大切にしています。事業の内容は変わっても、その根底にある考え方は変わりません。必要とされるものを提供し続けることこそが、会社の存在意義だと思っています。
当社の理念として受け継がれているのが「悠久奉仕 」という言葉です。奉仕の精神を持ちながら事業としても持続していく。その両立は簡単ではありませんが、地域のために何ができるのかを考え続ける姿勢は大切にしています。
木質ペレット事業も、単なる利益追求だけではありません。地域資源を活かし、地域経済や環境に貢献する仕組みをつくりたい。その想いが私の原動力になっています。
人が集まる会社には理由がある
――組織づくりで意識していることを教えてください。
現在の社員数は私を含めて5名です。実は当社には定期的な会議やミーティングがほとんどありません。
その代わり、SNSを活用しながらリアルタイムで情報共有を行っています。それぞれが異なる現場で仕事をしていても、常に状況を把握できる環境を整えているため、コミュニケーション量は非常に多い方だと思います。
また、人材採用に関しても特徴があります。当社ではこれまで大規模な募集を行ったことがありません。それでも「働きたい」と声をかけてくださる方が継続的に現れます。
その理由の一つが、以前開催していた「キコリ講座 」です。山を持っているものの活用方法が分からない方々へ向けて、木の伐採や山林活用について学ぶ場を提供していました。
全国から参加者が集まり、講座を通じて会社の取り組みや考え方に触れた方々が、「ここで働きたい」と応募してくださるようになったのです。実際に社員の中にも、その講座をきっかけに入社した人がいます。
活動そのものを見てもらう。その積み重ねが、良い仲間との出会いにつながっているのだと思います。
業界の未来を見据え、次の世代へつないでいく
――今後の展望についてお聞かせください。
木質ペレット業界は、まだ発展途上の分野だと感じています。認知度も高いとは言えませんし、業界としての基準や仕組みも十分に整備されているとは言えない状況です。
だからこそ、この業界をより成熟したものにしていきたいという想いがあります。木質ペレットをもっと多くの人に知ってもらい、業界全体を発展させていきたいと考えています。
また、私自身も60代となり、次の世代への継承について考える機会が増えました。事業そのものは形になっていますが、それを誰が引き継ぎ、どう発展させていくのかは大きな課題です。
私は経営において、常に高い視点で物事を見ることを意識しています。周囲に流されるのではなく、新しい可能性に目を向けながら挑戦を続けたい。その姿勢だけは失いたくありません。
地域資源、環境、エネルギー、そして人。これらを結びつけながら、次の世代へ価値ある仕組みを残していくことが今後の大きな目標です。
仕事そのものが楽しみになっている
――仕事以外のリフレッシュ方法はありますか。
木質ペレットは冬が繁忙期となるため、比較的時間に余裕ができる時期もあります。ただ、私の場合は新しいことを考えたり、新事業 に取り組んだりしている時間そのものが楽しみになっています。
実際に別会社ではAIを活用した仕組みづくりにも取り組んでおり、自動化された仕組みが動いています。新しい技術に触れながら可能性を探る時間は、とても刺激的ですね。
また、私自身は生まれつき聴覚障害があります。その経験もあり、現在は2~3の障害者施設と連携し、ペレット事業に関わるさまざまな仕事をお願いしています。 環境やエネルギーだけでなく、福祉や教育にもつながる活動として広げてきました。
事業を通じて地域が元気になり、人がつながり、新しい価値が生まれていく。その様子を見ることが何よりの喜びです。
創業100年という節目を迎えようとする今も、高橋氏の視線は常に未来へ向いています。地域資源を活かしながら新たな価値を生み出す挑戦は、これからも続いていくことでしょう。