釣りの楽しさを未来へつなぐ――有限会社オフィスユーカリが大切にする人とのつながり
有限会社オフィスユーカリ 代表取締役 石川 優美子氏
ニジマスを中心とした管理釣り場向けのルアーや、ワカサギ釣り用品を手がける有限会社オフィスユーカリ。メーカーとして商品を開発するだけでなく、大会への協賛やイベント開催を通じて、釣りの魅力を伝え続けています。創業当初から支えてくれた人たちへの感謝を胸に、次の世代へ技術や経験を受け継ぐ取り組みにも力を注いでいます。本記事では、代表の石川優美子氏に、事業へのこだわりや創業の経緯、今後の展望について伺いました。
釣りを通して、家族に笑顔を届けたい
――現在の事業内容について教えてください。
当社では、管理釣り場で楽しまれているニジマス釣りを中心に、ルアーなどの釣り用品を製造しています。もう1つの柱がワカサギ釣りです。ボートで楽しむワカサギ釣りにも力を入れ、魚を釣るだけでなく、味わい、自然と触れ合う時間も大切にしています。
子どもたちと一緒に釣りを楽しむ機会には、食育や自然の素晴らしさを伝えることもあります。自然の中で過ごす時間が、子どもたちにとってかけがえのない学びになればうれしいですね。
また、トーナメントへの協賛や大会の開催にも取り組んでいます。当社が目指しているのは、「参加して良かった」と思っていただける大会にすることです。
――大会運営で心掛けていることはありますか。
以前は景品といえば釣り用品が中心でした。でも、それだけでは家に帰っても家族が喜ぶとは限りません。
そこで当社の大会では、お米やバッグなど、ご家族にも喜んでいただける賞品を数多く用意しています。優勝者だけに豪華賞品を贈るのではなく、多くはビンゴ大会形式にしました。順位に関係なく、自分が欲しいものを選べるので、会場全体が盛り上がります。
釣りを楽しむのは本人ですが、その喜びをご家族とも分かち合ってほしい。そんな想いを込めて、皆さんの思い出に残る大会をこれからも続けていきたいですね。
支えてくれた人への恩を忘れない
――会社を立ち上げたきっかけを教えてください。
祖父は和竿師で、その後は父が釣具店を営んでいました。私は子どもの頃から釣りが身近にある環境で育ちましたが、家業を継ぐのは弟でした。自分には何ができるのかと考えたとき、思い浮かんだのは釣りしかありませんでした。
離婚を経験し、食べていくために選んだのがものづくりでした。「自分が使いたいものを、自分で作ろう」。その想いで会社を立ち上げましたが、当時手元にあった資金は30万円ほどしかありませんでした。夜中までルアーを組み立て、両親にも手伝ってもらいながら、1つひとつ形にしてきました。
――経営で何より大切にしていることは何でしょうか。
創業したばかりで、まだ名前も知られていなかった当社の商品を仕入れてくださった小売店がありました。その支えがあったからこそ、今のオフィスユーカリがあります。
そのご恩があるからこそ、利益だけを考えて直接販売をするつもりはありません。直販をすれば利益率は上がるかもしれませんが、長年支えてくださった小売店への恩を忘れるようなことはしたくないんです。
人とのつながりがあってこそ、会社は続いていくものです。支えてくださった方々への感謝を忘れず、これからもメーカーとしての役割を果たしていきたいですね。
社員が笑顔で働ける環境を守りたい
――組織づくりで大切にしていることを教えてください。
会社を大きくしたいという気持ちはあまりありません。それよりも、一緒に働く社員が毎日楽しく、安心して働けることの方が大切です。
従業員が50人いても、その中に苦しい思いをしている人がいるのでは、良い会社とは言えません。今のような少人数だからこそ、お互いの顔が見え、同じ方向を向いて仕事ができます。数字を追いかけるよりも、みんなが笑顔で働ける会社であり続けたいですね。
――次の世代へ受け継いでいきたいことはありますか。
今は若いスタッフに雑誌の連載やメディアへの出演を任せながら、少しずつ経験を積んでもらっています。ただ目立てばいいという世界ではありません。釣りを知り、技術を磨き、ものづくりを経験してこそ、お客様から信頼される存在になれます。
私が積み重ねてきた経験や技術、人とのつながりを、次の世代へしっかり受け継いでいきたいですね。
目指すのは「大きな会社」ではなく「長く続く会社」
――今後、新たに挑戦していきたいことを教えてください。
新しいことへの興味はありますが、今一番考えているのは、私が第一線を退いた後も会社が続いていく体制を整えることです。
私がいなくても社員が自分たちで考え、会社を支えていける状態が理想です。もしそれが難しいのであれば、社員にとって最善の形を選ぶことも必要だと思っています。
――3年後、会社をどのような姿にしていたいですか。
売上を何倍にも伸ばしたいという目標はありません。現状を維持しながら、少しずつ成長できれば十分です。
そのためには、お客様に喜ばれるヒット商品を生み出し、在庫ロスを減らしながら回転率を高めていくことが欠かせません。また、小さな組織だからこそのスピード感も強みです。「こんな商品があったら面白い」と思えば、すぐに形にできる。この身軽さを活かしながら、会社の規模ではなく、中身を育てていきたいですね。
自然を守ることが、釣りの未来につながる
――休日の過ごし方を教えてください。
休日はゴルフやドライブを楽しんでいます。両親を食事や買い物へ連れて行くことも多く、私にとって親孝行は、1つの趣味のようなものです。また、50歳以上を対象とした社会人大学へ通い、学びも続けています。
釣りを続けてきたからこそ、自然の大切さを強く感じるようになりました。子どもたちには「危ないから近づかない」のではなく、自然を正しく知り、安全に向き合うことを学んでほしいですね。
釣りは自然があってこそ楽しめます。豊かな環境を次の世代へつないでいくことも、私たち釣り人の役目だと思います。