エンジニアが心地よく働ける会社へ――アップステアーズが描く、少数精鋭から次の成長
株式会社アップステアーズ 代表取締役 角田 英太郎氏
株式会社アップステアーズは、受託開発とSES(システムエンジニアリングサービス)を手がける企業です。業務委託を使わず、正社員のエンジニアが開発を担っている点を強みとしています。本記事では、代表の角田英太郎氏に、経営で大切にしている価値観や組織づくり、これからの展望などについて伺いました。
正社員のエンジニアにこだわり、働きやすい環境をつくる
――現在の事業内容や特徴について教えてください。
当社では、受託開発とSESを中心に事業を展開しています。特徴は、業務委託や派遣契約に頼らず、正社員のエンジニアのみで開発体制を構築している点です。派遣契約とは違って、SESでは指揮命令の権限が当社側にあります。ですので、クライアント先で働いていても、教育や評価、将来のキャリアづくりまで、自社の社員として一貫して関わっていけるんです。一定のスキルを備えたエンジニアが社内に在籍し、安定した開発体制を築いていることが、当社の強みだと考えています。
――会社として大切にしている考え方はありますか。
最も大切にしているのは、エンジニアにとって居心地がよく、働きやすい会社であり続けることです。当社にとっての「居心地がいい」とは、ただ楽をすることではありません。エンジニアとして経験を積んでいる実感があり、業務と並行して学ぶ時間も確保できる。疲弊せずに、継続的にスキルアップできている感覚がある。そして、業界歴に見合った市場価値を保てているからこそ、組織にしがみつく必要もない。そうした状態を「居心地がいい」と呼んでいます。明文化した理念やビジョンを掲げているわけではありませんが、この考えは会社を運営するうえで一貫して重視してきました。
大きな目標を掲げて全員を一方向へ引っ張るのではなく、エンジニアが安心して働ける環境を守りながら、会社として着実に成長していきたいと考えています。
世のため、人のために
――これまでの経歴について教えてください。
大学院を卒業後、外資系企業に入社し、1年で退職しました。その後、スタートアップのような会社へ移り、2年ほどで約60人まで組織が拡大する過程を経験しています。
しかし、当時は理系分野の勉強しかしてこなかったこともあり、会社が急成長して利益も大きくなっていくなかで、「お金を稼ぐこと」そのものに懐疑的になった時期があったんです。そこで一度会社を離れ、改めて経営を学ぶために大学院へ進みました。
経営について学ぶことで、利益を生み出すことへの捉え方も変わりました。その後、以前勤めていた会社の代表から声をかけていただいて復帰し、取締役を務めました。
――アップステアーズを立ち上げた経緯についてもお聞かせください。
きっかけは、前職で一緒に働いていたメンバーと会社を離れたことです。2017年の創業当時、資本金100万円、エンジニア7名とバックオフィス1名の8名でのスタートでした。やりたいサービスも、それを作る余力もなく、まずは8名で飯を食っていく。それだけが目標でした。そんな出発点で付けた社名が「UPSTAIRS」です。階段を登ろう、という意味を込めています。
前職では、営業と開発のあいだに距離があり、どちらかというと営業側にとって居心地のいい環境だったことも、独立に至った背景の一つです。そうした経験も、現在の「エンジニアにとって居心地のいい会社にしたい」という考えにつながっています。
――経営判断において大切にしている価値観は何でしょうか。
「世のため、人のため」という考えです。自分の利益を増やすことだけを目的に会社を経営しているわけではありません。
たとえば、社員を傷つけてまで自分の利益を優先するような判断はしたくないと考えています。一方で、仕事としてやるべきことをやっていない場合には、きちんと向き合う必要があります。もちろん、プロフェッショナルとしての責任をお互いに果たすという前提ではあります。
誰かを犠牲にして自分だけが利益を得るのではなく、周囲にとってどうなのかを考えることが判断の軸です。
過度に干渉せず、エンジニア自身の意思を尊重
――社員とのコミュニケーションで意識していることを教えてください。
社員一人ひとりの自主性を尊重し、必要以上に干渉しないことを大切にしています。普段はそれぞれの仕事に任せ、問題や相談が生じた際にしっかりコミュニケーションを取るという考え方です。
私自身、会社員時代に細かな指示を受けたり、飲み会への参加を求められたりすることがあまり好きではありませんでした。その経験もあり、社内イベントへの参加も本人の意思に任せるなど、それぞれが無理なく働ける環境を意識しています。
――社員の成長や定着に向けて、どのような取り組みをしていますか。
スキル向上のための学習費用は会社が全面的にバックアップしており、資格取得時には報奨金制度も設けています。直近では、当社のエンジニアが「Japan All AWS Certifications Engineers」の選出を目指しており、その認定に不可欠なAPNパートナー(AWS Select Tier Services Partner)への登録も完了しました。その社員は全資格の取得目前で、近く表彰対象となる見通しです。できるだけ本人が希望する仕事へアサインすることも、意識している点の一つです。また、3カ月に1回は1on1を行い、現在の状況や要望を確認しています。
採用では、経験者の場合、技術が好きか、継続して勉強しているかといった点を重視しています。一方、今年から始めた業界未経験者の採用では、人柄やコミュニケーション力を見る比重が大きくなっています。
採用と自社プロダクトを軸に、拡大へ踏み出す
――これまでの事業運営で、特に重視してきたことを教えてください。
これまでは少数精鋭で、技術者にとって居心地のいい環境をつくり、会社として黒字になっていればいいという考えで経営してきました。そのため、規模を大きくすること自体を目的にはしていませんでした。
ただ、取引先のプロジェクトが終了し、退職者が出た経験があります。その案件では稼働の自由度が高く、リモートや時短にも柔軟に対応できていたのですが、次の案件先でそれが保証されるとは限りません。
そのなかで気づいたのは、即戦力人材の採用に頼ってしまい、次の世代を育てる体制がまだ整っていなかったことです。特定の顧客の動き一つで会社の存続が左右されてしまう危うさを実感して、何があっても揺るがない、持続的な成長の基盤を作っていきたいと考えるようになりました。そこから、組織を拡大する方向へ踏み出すことを決めました。大前提として、社員であるエンジニアが疲弊しない環境は守り抜きながら進めていきたいと思っています。
――今後、特に力を入れていきたいことは何でしょうか。
一つは、人材採用です。今後も継続的に力を入れ、組織の拡大につなげていきたいと考えています。
もう一つは、自社プロダクトの開発です。実は、複数の客先常駐メンバーが、相次いで休職や離職に至ったことがきっかけで開発に至りました。振り返れば兆候はあったのですが、当時は気づけず、『もっと早く声をかけられていれば』という後悔が残りました。客先常駐という構造上、日々のコンディション変化に客観的かつ早期に気づける仕組みが必要だと痛感しました。
こうした反省から、現在は、社員が毎日AIとの対話でコンディションを共有し、その内容からメンタルリスクを検知する『ClaudeCheckin』を自社で開発・運用しています。半年の運用で1,000件の対話データが蓄積されており、そこから得られた気づきをもとに、日々仕組みの改善を重ねています。社員を孤立させず、会社として適切なタイミングで寄り添うためのデータ活用として、まずは自社で開発した仕組みを社内で活用し、よいものができれば将来的には社外への展開も考えています。
これまで大切にしてきた「エンジニアにとって居心地のいい会社」という軸は変えず、採用と自社プロダクトの開発を進めながら、これからのアップステアーズを着実に成長させていきたいです。