「支えいる・叶えいる・笑えいる」で自己実現を後押しする、AILEが描く訪問看護の未来
株式会社AILE 代表取締役 佐藤 友紀氏
成人領域の訪問看護から始まり、小児、精神科へと専門領域を広げてきたAILE。現在は「えいる訪問看護ステーション」と「ケアプラン支援センターえいる」を運営し、在宅療養を支えながら、利用者一人ひとりの「やりたいこと」に目を向けています。その根底にあるのが、「自己実現」と「支えいる・叶えいる・笑えいる」という考え方です。「自己実現」を理念として掲げる佐藤氏に、創業の経緯や組織づくり、今後の展望を聞きました。
目次
成人から小児・精神科まで、在宅で幅広いニーズに応える
――現在の事業内容について教えてください。
当社は、「えいる訪問看護ステーション」と「ケアプラン支援センターえいる」を運営しています。
訪問看護では、医師の指示やケアマネジャーのプランに基づき、看護師や理学療法士・作業療法士・言語聴覚士といったリハビリスタッフがご自宅を訪問する仕組みです。傷の処置や点滴といった医療処置、医療機器の管理、着替えや入浴などの生活支援にも対応しています。
もともとは高齢者向けの在宅医療を支えるところから始まりましたが、小児や精神疾患の方にも対応してきました。小児分野はニーズの高さを受け、2024年に小児特化の2号店として「えいる訪問看護ステーションにこにこサテライト」を立ち上げ、2026年には精神科に特化したチームも設けました。
――事業を行う上で、大切にしている考え方は何ですか。
当社が掲げている理念は「自己実現」です。その人ができなかったことをできるようにしたり、やりたかったことを実現したりすることを大切にしています。
その際に参考にしているのが、マズローの欲求段階です。今その人がどの段階にいて、何が自己実現の妨げになっているのかを考えます。この考え方は利用者さんだけでなくスタッフにも共通で、自分自身が自己実現に近づくことも重視しているんです。
独立に必要な経験を1つずつ積み、2015年に創業
――経営者を目指したきっかけを教えてください。
私は社会人1年目を病棟看護師としてスタートしました。組織の中で働く経験を通じ、自分が理想とする看護や組織づくりを実現するには、自ら組織をつくる側に回る必要があると考えました。
その後、看護師として何ができるのかを考えたとき、学生時代の在宅実習を思い出したのです。ご自宅で自分らしく過ごす方を支える在宅の良さが印象に残っており、「在宅でも起業できる」と気づいたことが方向性を決めるきっかけになりました。
――独立までには、どのような経験を積まれたのでしょうか。
まず病院で3年ほど働き、基礎的な知識を身につけました。その後は在宅分野に移り、重症者への対応やオンコールを経験しています。
さらに、管理者を募集している企業に移って管理者を務め、新店舗の立ち上げチームにも自ら立候補したのです。10店舗ほどの立ち上げに携わり、2015年に独立しました。振り返ると、「独立するには何が足りないのか」を考え、そのギャップを1つずつ埋めていった形です。
――「自己実現」という理念は、どのように生まれたのですか。
創業当初から「自己実現」という理念があったわけではありません。「何のためにやっているのか」を考え続け、利用者さんと関わるなかで、「支えいる・叶えいる・笑えいる」という考え方が生まれました。
ケアをしながら信頼関係をつくるのが「支えいる」です。信頼関係ができると、「本当はこうしたい」という本人やご家族の本音が少しずつ出てきます。その小さな願いを聞き流さず、否定せずに受け止め、「どうすればできるか」を一緒に考え、形にしていくのが「叶えいる」です。「できるかもしれない」と前向きな気持ちや次の希望が生まれていくことが、「笑えいる」につながっていきます。
この循環を考えていくなかで、マズローの自己実現に近いと気づきました。そこから考え方を掘り下げ、現在の理念につながっています。
信頼関係を土台に、利用者とスタッフの「やりたい」を支える
――利用者さんの自己実現を、具体的にどのように支えていますか。
私たちは身体的な状態をみるだけでなく、「この方は今、何をしたいのだろう」と考えることも大切にしています。
以前、がん末期の方に希望を聞いたところ、「お花見に行きたい」とわかりました。そこでご家族と計画を立て、一緒にお花見に行ったんです。また、ホスピスに入院していた方から「遺品整理をしたいから家に帰りたい」と希望され、一緒にご自宅へ戻ったこともあります。
「家の裏の公園に行きたい」という小さな希望もあるんです。1つ叶うと次の希望が生まれます。その積み重ねが自己実現につながるという考えです。
――スタッフの自己実現には、どのように関わっていますか。
面談を通じて、「今どんな状態なのか」「何をやりたいのか」を話しています。やりたいことが見つかり、当社として応援できる内容であれば、積極的に機会をつくる方針です。
入職時に「社長になりたい」と話していたスタッフとは、どうなれば社長になれるのかを一緒に考え、経験していない役割を整理しました。現在は管理者として経験を積んでいます。
また、「夫の仕事を手伝うためにパン屋になりたい」と話した看護師は、実際にパン屋になった後、看護の仕事と両立するようになりました。挑戦したいことがあれば、できる限り応援しています。
――社内のコミュニケーションで意識していることはありますか。
自己実現の手前には、社会的なつながりや承認が必要だと考えています。そのため、社内でも信頼関係や相互理解を大切にしているのです。
年に数回はテーマを決めてブレインストーミングを行い、毎朝の朝礼も輪番制にしています。お互いの考えを知る機会を設け、日頃のコミュニケーションにつなげているところです。
3つの専門チームを育て、幅広いニーズに応えられる組織へ
――今後1年で、どのような組織を目指していますか。
まずは、成人・小児・精神の3チームをそれぞれ強化していく方針です。成人チームはほぼ自立して動ける状態なので、次は小児チームの人材教育や必要な人材の補充を進めています。
精神科チームはまだ2人ほどですが、今後1年で5、6人ほどまで増やし、規模が整えば店舗として独立させたいという考えです。さらに、2027年1月には武蔵野市に新たなサテライトを開設する計画も進めています。
将来的には、成人・小児・精神のどの領域にも対応できる、いわば地域の「総合ステーション」のような存在を目指しています。特定の領域だけに強いのではなく、地域から相談されたときに「えいるなら何とかしてくれる」と思ってもらえる組織にしたい。その積み重ねによって、100年後も地域から求められ、存続している会社をつくることが目標です。
――地域との関わりについて、挑戦したいことはありますか。
地域住民の方と一緒に取り組めるイベントを企画・実施しており、今後はこうした活動をさらに広げていきたいと考えています。事業としてサービスを提供するだけではなく、地域に根付き、地域から必要とされる存在でありたいと思っています。
「自分の機嫌は自分で取る」日常のなかで楽しみを見つける
――仕事以外では、どのように過ごしていますか。
私はガンダムが好きで、漫画やアニメを見たり、ガンプラを集めたりつくったりしています。子どもが3人いるので、一緒に遊んだり、プラモデルをつくることもあります。
――リフレッシュのために意識していることはありますか。
基本的には「毎日がリフレッシュ」という感覚があります。「自分の機嫌は自分で取る」ことを意識しているのです。
もともと体を動かすことも好きで、社内に設けたトレーニングジムで運動しています。最近は仕事上の付き合いが増えたこともあり、新しいこととしてゴルフにも挑戦するようになりました。
これからも、自分の機嫌を自分で取りながら、事業とも丁寧に向き合っていきたいと思います。