「成功か大成功しかない」――色彩アートで自己肯定感を育む挑戦

一般社団法人 Color Sensing Alliance 代表理事 小林 晶代氏

子どもたちの自己肯定感を育む色彩アートを軸に、教育機関への講師派遣や大人向けのウェルビーイング事業、認定講師の育成などを展開する小林氏。自身もアーティストとして活動し、オルセー国際芸術賞を受賞、清水寺やシェーンブルン宮殿で作品を展示するなど、国内外で活動の場を広げています。「成功か大成功しかない」という考え方の原点には、自身の子どもとアルコールインクアートを楽しんだ経験がありました。現在は約50名の認定講師とともに、資格を取得して終わるのではなく、それぞれが仕事として活動できる「協業」の仕組みを構築しています。本記事では、事業を始めたきっかけや組織づくり、今後目指している展開について伺いました。 

成功体験を育む色彩アート

――現在の事業内容について教えてください。

大きく三つの柱で事業を展開しています。一つ目は、子ども向けの色彩アート事業です。学校やインターナショナルスクールなどに外部アート講師として伺い、アートクラスを行っています。企業と連携したワークショップなども行っており、そこでつくった作品を美術館などで展示する機会も設けています。今後は、教育委員会の後援事業としての実績も生かしながら、学童やスクールとの提携をさらに広げ、より多くの子どもたちに色彩とアートを通した探究型の学びを届けていきたいと考えています。

二つ目は、大人向けのウェルビーイング事業です。これまで企業のイベントやオーナーズラウンジなどで、アルコールインクアートを体験していただく機会をつくってきました。今後は、企業ロゴや地域のキャラクター、推しカラーなど、参加する方が愛着を持てるテーマを取り入れ、当社独自のアート用紙を制作することで、よりオリジナル感や特別感のある体験を提供していきたいと考えています。さらに、音楽やスポーツなど、さまざまな分野とのコラボレーションにも展開し、子どもの教育だけではなく、大人にとっても癒しやリフレッシュ、心が豊かになる体験として広げていきたいです。 これまでにもTBS様とのイベントやLEXUS様でのワークショップなど、企業との取り組みを重ねてきました。 

三つ目が、認定講師の育成と副業支援です。約4年半をかけて認定講座の仕組みをつくり、現在は全国に約50名の認定講師がいます。資格を取って終わりではなく、講師派遣や自身の教室での活動など、その先の仕事につながる仕組みを大切にしています。今年度からは、東京都が推進する乳幼児の教育事業「すくわくプログラム」を実施する園へのサポートも開始しました。ネイルスクールや美容専門学校などと協業し、既存のカリキュラムにJCSAの認定講座を「+αのスキル」として取り入れていただくことで、卒業後の新たな仕事や活躍の場につながる仕組みを広げていきたいと考えています。 

――この事業を始めたきっかけは何だったのでしょうか。

原点は、自分の子どもでした。5歳の頃、幼稚園から持ち帰ってくる絵を見ても、正直なところ心の底から褒めることができていなかったんです。「上手だね」と言いながらも、本気で褒めてはいなかったと思います。そんな時、自宅に飾る抽象画を探している中でアルコールインクアートに出会い、子どもと一緒にやってみました。すると、それまでとはまったく違う作品が生まれて、初めて心から「すごい」「きれい」と褒めることができたんです。その時に「このアートは成功か大成功しかないね」と感じました。

褒められる機会が減ってきている世の中になっていると思います。子どもだけではなく大人もそうで、「私なんて」とか「センスないんで」「絵が下手なんで」という言葉はもう何千人から聞いてきました。それでもインクアートをやってみると、「私、天才かも」というふうになり、ありのままを表現することで認めてもらえるこということで、成功体験を積み重ねることで子どもの自己肯定感が高まっていくことを実感し、年間を通して学べる12クラスをつくりました。「成功か大成功しかない」という挑戦を重ねながら、自己肯定感を高め、人間力につなげていくことを大切にしています。

思いを共有する仲間とともに

――小林さん自身は、これまでどのようなお仕事をされてきたのでしょうか。

もともとはIT関係で正社員として働いたり、英語を使う仕事や総合商社で秘書の仕事をしたりしていました。また、趣味で始めたネイルからプロとなり約18年間ネイルサロンも経営しています。現在もネイルサロンを続けながら、アート教育の事業を立ち上げています。

私自身が別の仕事をしながらこの事業をつくってきたからこそ、認定講師についても、副業として挑戦できる仕組みにしたいと思っています。アート経験の有無にかかわらず、きちんと学び、この思いを伝えたいという方であれば挑戦できます。それが収入にもつながっていくことが、この仕組みの一つのポイントだと考えています。

――認定講師の皆さんとは、どのような組織をつくっているのですか。

私たちは、いわゆる「協会」という形ではなく、「協業」というスタイルを大切にしています。認定講師には、自分で教室を運営している方やサロン経営者、会社員など、さまざまな方がいます。

12クラスそれぞれに、講師用・生徒用の共通テキストを用意しています。そのため、場所や講師が変わっても、同じ理念や考え方を引き継いだクラスを運営できる仕組みになっています。

資格を取得して終わりではなく、Advance認定講師には年契約で「月1アートクラス」として活動していただいています。イベントや学校などで講師として活動したり、自身の教室でクラスを開いたり、それぞれのライフスタイルに合わせて、学んだことを仕事につなげられる環境をつくっています。

――講師の皆さんとの関係で、大切にしていることはありますか。

一番大きいのは、全員が同じ未来を目指して走っているということです。「子どもたちの自己肯定感を高めたい」「笑顔を増やしたい」「この事業をもっと世の中に広げていきたい」そんな温かい想いを胸に集まってくださっています。

大きなイベント前など、膨大な準備が必要な場面でも、誰からともなく「一緒にやろう」「手伝います」と自然と手が挙がるような、温かいチームです。正直なところ、私自身が周りの皆さんに助けていただいてばかりです。

皆さんと一緒に過ごしていると、心地が良すぎて時の経過を忘れてしまうほど。このような素晴らしい認定講師の皆さんに出会えたこと、それ自体が私にとっての奇跡であり、一生の宝物です。

だからこそ、代表である私の役割は、この活動の認知度をさらに高め、より多くの場所へと届けていくこと。その広がりをつくることこそが、いつも支えてくださる皆さんへの一番の恩返しになると信じています。

アートの可能性を未来へつなぐ

――仕事から離れた時は、どのようにリフレッシュしていますか。

実は休みがあまり多くないのですが、今はJCSAの活動が楽しくて仕方がないので、仕事そのものが一番のリフレッシュになっています。

もともと旅が好きでこれまで35か国を訪れてきました。今はなかなかまとまった時間が取れませんが、家族旅行や息子と過ごす時間は、これからも大切にしていきたいですね。

一方で、私たちのアートクラスは100〜300人規模になることもあり、「アートアスリート」と呼ばれるほど実はかなりの体力勝負です。資材の搬入や準備の中で健康と体力の大切さを実感し、最近はパーソナルトレーナーをつけてジムに通い始めました。毎日少しでも体を動かすと頭がすっきりして、仕事にも良いエネルギーで向き合えます。

また、茶道師範でもある私にとって、忙しいスケジュールの中に意識的に「無」になれる時間を取り入れることも欠かせません。ホテルのスパでゆっくり過ごしたり、価値観や感覚の近い仲間と時間を過ごしたりしながら自分自身を整えています。

仕事も、旅も、家族との時間も、お稽古や素晴らしい出会いも——すべての経験が私の財産です。自分自身が心身ともに満たされていることが、子どもたちに最高のものを届けるエネルギーにつながっているのだと感じています。

――これから挑戦していきたいことを教えてください。

これから5年、10年と、それぞれの事業の柱をさらに大きくし、JCSAを「色とアートの力で、人の可能性を引き出す」ブランドへと成長させていきたいです。

現在、認定講座は対面を中心に行っていますが、より多くの方に学んでいただけるよう、オンラインで学べる仕組みも構築しています。また、学校や学童、行政との連携をさらに広げ、アルコールインクアートを通して、子どもたちが「できた」「認められた」という成功体験を積み重ねられる場を増やしていきたいです。その変化を、出版などを通して社会にも伝えていくことにも挑戦したいと考えています。

企業との取り組みにも、まだまだ可能性があると思っています。企業ごとのブランドやロゴ、地域のキャラクター、スポーツ、推しカラー、音楽など、その分野ならではの「色」をアートと掛け合わせれば、これまでにない体験を生み出せます。アートだから、この業界とは組めないということはないと思っています。

そのためにも、認定講師を全国に育て、さまざまな企業や教育機関とつながりながら、JCSAの活動を全国、そしてその先へ広げていきたいです。

私が目指しているのは、単にアートを広めることではありません。

色とアートを入り口に、一人ひとりが「自分には価値がある」と感じられる瞬間を増やしていくこと。子どもも大人も、関わるすべての人が自分の可能性に気づき、笑顔になれる社会をつくっていくことです。

「成功か、大成功しかない」というJCSAの考え方を、これからもっと多くの人に届けていきたいと思っています。

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