知的財産の価値を「納得できる数字」に――公平な取引を支えるIP経済研究所の姿勢

IP経済研究所 所長 石井 康之氏

IP経済研究所では、知的財産の経済的価値に関する鑑定や、研修・講演、執筆などに取り組んでいます。石井康之所長が大学に所属していた頃から続けてきた仕事を基盤に、2017年の大学退職後も活動を継続。特許や技術、営業秘密などの価値を、具体的な経済取引に活用できる数字として示すことを大切にしています。今回は、事業の特徴や仕事に向き合う姿勢、情報収集への考え方、今後の展望について伺いました。

知的財産の価値を、経済取引に使える数字で示す

――IP経済研究所で現在取り組まれている仕事について教えてください。

現在行っているのは、大学に所属していた当時から依頼を受けていた研修の講師や執筆、知的財産の鑑定評価などを継続したものです。大学を辞めたのは2017年ですが、その少し前からIP経済研究所という名称で仕事をしていました。

特に「この年から事業を始めよう」と明確に決めて立ち上げたわけではありません。大学に所属していた頃から依頼をいただき、その仕事がそのまま続いてきたというのが実態に近いですね。

知的財産の経済的な価値について講義をしたり、知的財産に関わる損害について鑑定したりすることもあります。また、企業から依頼をいただいて社員研修を行ったこともあります。基本的には自分から営業するのではなく、ご紹介や、以前研修を受けた方から声をかけていただく形で仕事が広がってきました。

――事業の特徴や強みはどのような点にありますか。

知的財産という言葉は法律上定められていますが、実際には非常に幅広い概念だと考えています。特許権や著作権だけではなく、事業に関するノウハウなど、財産的価値を持つ情報も含まれます。

私が取り組んでいるのは、そうした知的財産が市場で取引される場合に、どの程度の経済的価値を持つのかを金額として示すことです。例えば、技術の売買やライセンスにおけるロイヤリティを検討する際、その判断材料となる数字を提示します。

特徴は、単に金額だけを示すのではなく、その数字に至る過程を明確にすることです。国際標準的な手段を意識し、財務諸表などとの整合性も踏まえながら、関係する方々が納得できる形で価値を提示することを大切にしています。

「みんなが納得できる」評価を目指して

――仕事をする上で大切にしている理念を教えてください。

例えば一つの技術に金額を付ける場合、売る側、買う側、その周囲の利害関係者など、さまざまな人が関わります。そこで提示された金額について、誰か一方に偏るのではなく、「それなら納得できる」と皆さんが思える状態をつくることが大切だと考えています。

知的財産の取引や取り扱いを通じて、できるだけ平和で、人間的なコミュニケーションが生まれること。それが私自身の基本的な理念です。公平、公正な判断が行われることが望ましいと思っています。

――仕事上の判断で軸にしていることはありますか。

一言でいえば、正直であることです。ごまかさず、相手のことも考える。それが基本ですね。

自分が作成したレポートについても、間違いがあれば正直に伝えます。自分でも間違えることはありますから、その場合は「間違えました」と申し上げてお詫びします。それで信頼を失うのであれば仕方がないというくらい、正直に向き合うことを大切にしています。

肩書きそのものにもあまりこだわりません。相手がどのような立場の方であっても、一人の人間としてどう考え、どう行動しているのかを見るようにしています。

正確な情報を得ることが、判断の土台になる

――クライアントとのコミュニケーションで意識していることを教えてください。

基本は平常心です。相手に対して必要以上に構えるのではなく、お互いが言いたいことを言える関係をつくりたいと思っています。

私自身、冗談を交えながら話すこともあります。場が硬くなりすぎると、本当に必要なコミュニケーションが取りづらくなることもありますからね。相手も私に対して気楽に意見を言えて、私も自分の考えを率直に伝えられる。そのような雰囲気を大事にしています。

――事業のために特に投資しているものは何でしょうか。

一番は情報収集です。以前から信頼している情報提供者から有料で情報を得たり、新たに「この人の情報は信頼できる」と思った方から情報提供を受けたりしています。

原稿を書くときにも、内容が本当に正しいのかを確認するため、出典を一つひとつ調べています。一つの原稿で多いときには30ほどの出典を確認することもあります。時間はかかりますが、正確性は大切にしたいですね。

鑑定の仕事でも、これまで経験したことのない局面に直面すれば、必要なデータを国内外から探します。そこから、多くの方に納得していただける内容を組み立てていく。そうした仕事が私は好きなんです。

知識と経験を、次の世代へつないでいく

――今後取り組んでいきたいことを教えてください。

知的財産というものを広く捉えれば、これから社会をどうつくっていくのかという知恵そのものも、一つの知的財産だと私は考えています。

自分の身近にも若い世代がいますし、これからの人たちにとって住みやすい社会になってほしいという思いがあります。そのため、現在は自分が信頼している方々に、自分が考えたことや新しく得た情報をメールで伝えることも続けています。

IP経済研究所としては、鑑定や講演の依頼がもう少し増えればうれしいですね。自分から積極的に営業活動をしているわけではありませんが、これまで培ってきた知識や経験を必要としてくださる方がいれば、引き続き役立てていきたいと思っています。

バイクと情報収集がリフレッシュの時間

――休日や仕事以外でのリフレッシュ方法を教えてください。

情報を集めること自体が、自分にとってはリフレッシュの一つです。それとは別に、バイクも好きですね。

以前、原付でさまざまな場所へ出かけていましたが、その後、小型二輪の免許を取得し、日本を長期間走る旅にも挑戦しました。年齢を理由に教習を断られたこともありましたが、それでも挑戦して免許を取りました。

今年3月末には事故に遭い、現在は家族からバイクに乗ることを止められています。それでも、いつかまた乗りたいという気持ちはあります。新しいことに興味を持ち、自分なりに挑戦を続ける姿勢は、これからも大切にしていきたいですね。

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