ロボットに「乗る」夢を、現実の体験へ――MOVeLOTが切り拓く“搭乗型ロボット”エンタメの市場

MOVeLOT株式会社 代表取締役CEO 廣井健人氏

2023年2月10日に設立したMOVeLOT株式会社は、ロボットを開発するだけでなく、ロボットを「エンターテイメント」として体験提供するところまで一気通貫で手がける企業です。累計で約1.65億円を調達し、店舗型の体験拠点やイベント出展を通じて、「人生の中でロボットに乗れるなんて思わなかった」という驚きを形にしてきました。

廣井健人氏が掲げるのは、まだ“市場が見えにくい”搭乗型ロボット領域を、事業として成立させながら可視化し、次の挑戦者が参入できる環境をつくること。その歩みと意思決定の背景、そしてこれからの展望を伺いました。

ロボットを「体験」に変える事業――MOVeLOTの現在地

――まず、事業内容と会社の特徴について教えてください。

MOVeLOTは、ロボットを作るところから、そのロボットを使ってお客様に体験を提供するところまで、一気通貫でやっている会社です。設立は2023年2月10日で、今月が終わってようやく3年が経過するタイミングになります。創業時からベンチャーキャピタルの支援を受けていて、これまでに累計で約1.65億円ほどの資金調達を行ってきました。

ロボットというと、介護や工場、自動化といった実用分野を想像されることが多いと思いますが、当社はそういった領域ではなく、エンターテインメントに特化しています。ロボットを「使う」こと自体ではなく、「ロボットに乗る」「操縦する」という体験そのものを価値として提供している点が、最大の特徴です。

開発したロボットを製品として販売するのではなく、自分たちで体験の場を作り、来場者に直接価値を届ける。そのため、ロボット開発だけでなく、施設運営、体験設計、集客まで含めて事業として成立させているのが、MOVeLOTの現在地だと考えています。

「ロボットに乗れない人生」をなくしたい――起業の原点

――この事業に取り組もうと思った背景を教えてください。

僕自身は、かなり長い間ロボットエンターテインメントの現場に関わってきました。ロボットレストランの時代には、年間で約16万人のお客さんに対応していましたし、その後もイベントなどでロボットを使ったショーや体験を数多く手がけてきました。結果として、何万人という単位の方にロボット体験を提供してきたことになります。

その中で、実際にお客さんから言われた言葉で、ずっと心に残っているものがあります。それが、「人生の中でロボットに乗れるなんて思わなかった」という一言です。
この言葉を聞いたときに、ロボットに乗れないまま人生を終える人の方が、圧倒的に多いんだろうな、と感じました。

搭乗型ロボットの領域は、プレイヤーが非常に少なく、挑戦する人もほとんどいません。だからこそ、誰かが本気でやらなければ、この先何十年経っても、この体験は世の中に広がらないかもしれない。そう思ったんです。

一方で、ロボットアニメやロボット作品は世界中にあり、ファンも数多く存在します。ロボットに「乗りたい」と思っている人は、世界中にたくさんいるはずです。その夢を叶えられるタイミングが、今後もずっと来ないかもしれないと考えたときに、「それなら自分がやろう」と思い、この会社を立ち上げました。

両国とパトレイバーラボに見る、体験設計と顧客層

――現在展開している体験拠点について教えてください。

現在、主に二つの拠点を運営しています。一つ目が、両国にある「ロボットベース」と呼んでいる施設です。ここでは、段階的にロボット体験をしてもらう導線を設計しています。

まず最初にVR体験をしてもらい、次にプログラミング型の小型ロボットを操作する体験をしてもらいます。この二つを「達成」した方だけが、最後に3mサイズの大型ロボットを操縦できる仕組みです。いきなり大きなロボットに乗るのではなく、少しずつ体験のハードルを上げていくことで、恐怖感や不安を減らし、没入感を高めるようにしています。

この拠点は2023年10月頃から提供を開始し、現在も継続して運営しています。インバウンド向けに始めたこともあり、来場者の7〜8割は海外の方です。

もう一つが、2024年10月からスタートした「パトレイバーラボ」です。こちらは、1990年代のアニメ作品をモチーフにした実寸大ロボットに実際に乗れる体験施設です。立ち上げ当初は日本人向けに展開しており、チケットが数分で完売することもありました。ただ、常設化を進める中で、日本人だけでは需要が頭打ちになる感覚もあり、現在はインバウンド向けの集客にも力を入れています。

結果として、現在は日本人と海外の方が半々程度の構成になっています。客層としては、パトレイバー世代である4〜50代の男性が多いのが特徴です。一方、両国の拠点はファミリー層が多く、拠点ごとに明確な違いがあります。

資金ショートを越えて――経営のターニングポイント

――これまでで最も大きなターニングポイントは何でしょうか。

正直に言うと、ターニングポイントは毎日のようにあります。その中でも一番「やばかった」と感じたのは、2024年の冬です。

この時期に2回目の資金調達を進めていたのですが、実際に資金が入るタイミングが2025年1月末で、2024年12月の時点では会社の資金が完全にショートしていました。

この1か月をどう乗り切るかが、本当にギリギリの判断でした。自分の預金をすべて会社に入れたり、周囲の人からお金を借りたりして、なんとか延命した形です。結果的に1月に資金調達が完了しましたが、もしあのタイミングで決まっていなければ、この会社はその時点で終わっていたと思います。

ロボット開発には、想像以上にコストがかかります。これまでに調達した資金の大半は、ロボットの開発費に充てています。現時点では、まだ十分な黒字化には至っていませんが、まずは集客を積み上げ、事業として成立させるフェーズだと考えています。

「市場はない」のではなく、まだ作られていない

――現在の課題と、今後の展望について教えてください。

搭乗型ロボットの領域は、正直なところ、まだ「市場がある」とは言えない状態です。プレイヤーもほとんどいませんし、必要性が分かりにくい分野でもあります。ただ、ロボットアニメや作品のファン市場を見ると、世界中に膨大な人数がいます。ガンダム市場は年間1000億円規模とも言われていますし、ロボットに乗りたいと思っている人は、世界中に数億人規模で存在していると考えています。

つまり、市場がないのではなく、まだ誰も可視化できていないだけだと思っています。だからこそ、僕たちが「この領域はビジネスとして成り立つ」「これだけ集客できている」という実績を示すことが重要です。それができれば、競合が生まれ、市場が形成されていくはずです。今はその先頭に立つことを目標にしています。

集客については、チケットサイトを中心に、日本・海外合わせて約20媒体と契約しています。日々の集客はSNS、特にInstagramを活用しており、各SNSで数万人規模のフォロワーがいます。3年後には、売上を今の20倍規模にまで伸ばす必要があると考えています。店舗型の「ベース」を首都圏に増やし、イベント向けの「ユニット」を地方で展開する。そして将来的には、海外にも体験拠点を作っていきたいです。

体を鍛え、心を整える――キックボクシングというリフレッシュ

――忙しい日々の中で、どのようにリフレッシュしていますか。

去年からキックボクシングを始めました。体が強くなれば、心も強くなると思っていて、実際にすごくリフレッシュになっています。痛さも含めて、気持ちを切り替える時間になっていますね。

学生時代は和歌山でサッカーを10年ほどやっていましたし、小学校の頃には少林寺も経験しました。もともと体を動かすことは好きだったので、今も運動することで頭がリセットされて、経営に向き合うコンディションを保てていると感じています。

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