女性目線でコスチュームの価値を変える――PHARFAITEのブランド戦略
株式会社スタニングアーツ 代表取締役 水月 孝氏
株式会社スタニングアーツは、アパレルブランド「PHARFAITE」の運営を軸に、タレントマネジメントや撮影会などのイベント事業を展開するトータルコンテンツメーカーです。女性自身が着たいと思える価値と品質を追求してきた水月氏に、創業の背景や経営で大切にする姿勢、海外展開を見据えた今後の構想について伺いました。
女性が「着たい」と思える価値を形にする
――現在の事業内容を教えてください。
当社は、オリジナルアパレルブランドの運営を中心に、タレントのマネジメントや撮影会などのイベント企画を手がけている会社です。
タレントやイベントと連動させ、ブランドの世界観を多方面から発信しています。
――アパレルブランド事業の特徴や強みは何でしょうか?
「PHARFAITE」では、主にグラビアモデルやコスプレイヤー、そのファンの方々に向けた衣装を企画・販売しています。ニッチな市場だからこそ、お客様の要望や需要に焦点を当て、独自性の高い商品を形にしてきました。
市場には男性目線の安価な衣装も多く見られます。当社が重視するのは、女性自身が「着たい」と思える価値観と、シルエットを美しく見せる品質です。価格だけで競わず、デザインや着用時の満足感まで含めた付加価値を届けています。
――ものづくりにはどんな想いを込めていますか?
ものづくりでは、ブランディングを大切にしています。衣装を製造・販売するだけでなく、「このブランドだから選びたい」と感じてもらえる価値を積み重ねたいからです。
手に取ったときに品質を感じられ、女性が自分の意思で着たいと思える商品を目指しています。日本発祥のコスチュームメーカーとしての誇りも持ち、事業を続けていきたいです。
価格競争への違和感から始まった起業
――独立に至った経緯を教えてください。
大学卒業後は岐阜のアパレルメーカーに就職し、約10年間、営業や企画、MD業務に携わりました。当初はデザインや細部へのこだわりを追求する面白さがありましたが、ファストファッションの広がりとともに、安さを優先する企画が増えたと感じています。
コストを重視すれば、取引先にも厳しい条件をお願いしなければなりません。誰かが負担を背負う状況に違和感を覚え、必要なコストを反映した適正価格を保ちながら、アパレル本来の面白さを追求したいと思うようになりました。
自分でブランディングや価格決定の裁量を持つ方が、考えを形にできるのではないか。そう考え、独立を決めました。
――コスチューム業界に可能性を感じた理由は何でしょうか?
コスチューム業界はニッチである一方、デザインが重視される分野です。当時は男性目線の安価な商品が多く、女性が自分から着たいと思える衣装には可能性があると感じました。
シルエットをきれいに見せ、より高い価値を感じられる商品には需要があるはずです。そこで、付加価値のある価格帯を持ち込み、こだわりを形にするブランドとして「PHARFAITE」を始めました。
関わる人の幸せを目指すWin-Winの経営
――経営判断の軸や、譲れない想いを教えてください。
正直に言うと、私は自分が経営者に向いているとはあまり思っていません。人を指導することも得意ではありませんが、社員やお客様、仕入れ先に対して誠実であることだけは大切にしてきました。
事業を続ける以上、利益は必要です。ただ、「この人のためになるには、どうすればいいか」を考え、関わる人が少しでも幸せになれる関係を築くことが私の軸です。利他的と言うと少し格好よすぎますが、周囲とのWin-Winを積み重ねた先に、自分たちの利益もあると考えています。
また、日本発祥のコスチュームメーカーとして、海外から注目されるジャパニーズカルチャーの一端を担う。その誇りも忘れずに、事業を続けていきたいです。
――若い社員やタレントとのコミュニケーションで意識していることはありますか?
所属タレントを除く従業員は、業務委託を含めて7名ほどです。社員やタレントには20代の人材も多く、私とは世代や文化、物事の捉え方が異なる場面もあります。
必要なことは厳しく伝えたりもしますが、世代が違うからこそできるだけ相手の考え方や方針も尊重したいと思っています。自分の価値観を押しつけるのではなく、相手が持つ本質も大切にしながら、お互いにより良い関係性を維持できる様に意識しています。
――今後、協業していきたいのはどのような人ですか?
当社の事業の根幹にあるのは、こだわりのある唯一無二の製品を作り出すことや、タレントの魅力を伝えられるコンテンツを様々な形で発信することです。既存の考え方にとらわれず、新しいアイデアを形にできる発想力や、状況に応じて考え方を変えられる柔軟性を持つ方と一緒に働きたいと考えています。
当社は少人数で運営しているため、自社だけですべてを完結させるのではなく、外部との協業もとても大切だと考えています。
「ここなら互いの強みを生かせる」「一緒に取り組むことで相乗効果が生まれる」と感じられる企業とは、積極的に関係を築き、お互いにWin-Winとなる事業を生み出していきたいです。
海外展開と新たなものづくりへの挑戦
――今後取り組みたい事業展開について教えてください。
日本のコスチューム業界では、一定の認知を得られたと捉えていますが、ニッチな市場で新しい顧客を増やすには限界があり、海外展開の強化が必要です。
現在もドイツに代理店があり、海外への出荷は年々増えています。今後は、より多くの国や地域へ届ける仕組みを整え、グローバルにブランドの価値を伝えていきたいです。
――現状の課題と、それに対してどのように向き合っていますか?
物価高騰や円安の影響により、材料や海外からの仕入れコストは上昇しています。さらに、縫製工場の廃業も増え、生産背景そのものが縮小していることに危機感を持っています。
環境の変化に引っ張られるのではなく、新しいものづくりの仕組みを構築しなければなりません。AI等のテクノロジーを活用した製品開発や業務効率化等、これまでの働き方を変えていく事が必須だと考えています。
――認知拡大に向けて、どのような営業活動を行っていますか?
営業活動は積極的には行っていません。SNSや当社の撮影会、メディア等を通じて弊社のコンテンツに興味を持って頂いた方が、自然な形で顧客になって頂けるようなPR活動に力を入れています。ECで購入される方が多いため、オンラインで商品やブランドの魅力を伝えることが重要です。
Webマーケティングは私自身も携わりながら、SNS担当者や所属タレントらと協力しながら実施しています。今後は海外に向けた営業やアプローチも強化する方針です。
「本業+α」で築く独自のビジネスモデル
――経営者や起業家の読者へ伝えたいことはありますか?
当社はアパレルから始まりましたが、現在はタレントマネジメントや撮影会などのイベント事業、ライセンス提供にも取り組んでいます。複数の事業を同時に展開することが、会社の成長や安定に繋がっていると感じています。
ひとつの事業だけにこだわらず、本業を生かして「プラスα」の道筋を考えることが大切です。既存の強みと新しい事業を結びつければ、独自のビジネスモデルを築けます。
可能性を広げる柔軟性と、多くの事業の中で繋がる人との出会いは、事業を続ける上で大きな力になると思います。