地震で壊れない住宅づくりを目指して――構造設計の知識を広げるヒロモクの挑戦

ヒロモク 代表 戸鳴 宏樹氏

ヒロモクは、木造住宅の構造設計を中心に、構造計算や構造に関する情報発信、建築実務者向けの勉強会などを行う構造設計事務所です。特に2×4(ツーバイフォー)工法に特化した設計を強みとし、専門的な知識を業界内へ広げる活動にも力を入れています。本記事では、代表の戸鳴宏樹氏に、事業内容や住宅の安全性に対する考え方、今後の展望などについて伺いました。

2×4構造設計を軸に、住宅の安全性を支える

――現在の事業内容について教えてください。

構造設計事務所として、木造住宅の構造設計や構造計算を行っています。木造住宅の構造には、一般的な在来軸組構法と2×4工法がありますが、当社は2×4工法の構造設計を専門にしています。

主なお客様はハウスメーカー様や地域のビルダー様、設計事務所様、工務店様などです。住宅を建てる際に必要となる構造図の作成や構造計算を行う、いわゆるBtoBの事業になります。

また、構造設計業務だけではなく、建築士や設計事務所などプロ向けに構造の勉強会を開催したり、構造計算の知識を伝える活動も行ったりしています。構造設計事務所として、自分たちだけが仕事をするのではなく、同じような知識を持つ人を増やしていくことも大切にしています。

――他社にはない強みはどういった点にありますか。

2×4工法に特化した構造設計を提供している点です。木造住宅市場において2×4工法は限定的な領域であり、専門的な知識や実務経験を持つ技術者も多くありません。そのなかで当事務所は、2×4工法の構造設計に特化し、専門性の高い領域で価値を提供しています。

また、構造設計に関する知識や技術を業界へ広げる取り組みにも注力しています。一般的には、技術を共有することで競争環境が生まれると考えられがちですが、私は業界全体の構造に対する理解度が高まることが、結果として住宅品質の向上につながると考えています。自社だけで技術を抱えるのではなく、知識を共有しながら業界全体の発展に貢献していくことも、当事務所の大きな特徴です。

地震で倒壊する住宅をゼロにする

――理念には、どのような想いが込められていますか。

当事務所は、「地震で倒壊する住宅をゼロにする」という考えを持って活動しています。

住宅は、多くの方にとって人生で大きな買い物ですが、その家が本当に安全なのかを判断することは難しいことでしょう。車であれば性能や安全装備を比較できますが、住宅の場合は見た目だけでは安全性を判断できません。

日本の建築基準法では、大きな地震が発生した際に建物が倒壊しないことを基準としています。ただ、それは建物がその後も住み続けられることまで保証するものではありません。だからこそ、より安全な住宅をつくるためには、構造について正しく理解する人を増やす必要があると考えています。

――そういった考えに至った背景を教えてください。

背景には、私自身の過去の経験があります。以前は大きな建設会社に勤めていましたが、その会社を離れて外から業界を見ることで、構造に対する知識や取り組みに差があることに気づきました。

また、私の実家は阪神・淡路大震災の影響で傾き、その状態のまま現在も残っています。こうした経験から、住宅は建てることだけが目的ではなく、地震後も安心して住み続けられる性能を備えることが重要だと強く感じています。

独立を機に、業界全体へ知識を届ける

――経営の道に進まれたきっかけを教えてください。

構造の重要性をより多くの人に伝え、住宅業界全体の知識や技術の向上に貢献したいという想いから、独立を決意しました。

大学卒業後はアパートメーカーに勤め、その後、構造設計事務所で経験を積みました。前職では組織の一員として多くの住宅に携わり、チームでよりよい住宅づくりに取り組んでいました。

一方で、外から業界を見ることで、構造に対する知識や取り組みに差があることを実感し、より広く構造の大切さを伝えていきたいという想いが強くなったんです。そこで2024年10月にヒロモクを設立し、2025年から本格的に活動しています。

現在は、構造設計業務に加えて、SNSや勉強会を通じた情報発信にも取り組み、構造への理解を広げる活動も行っています。

――経営判断の軸になっている価値観を教えてください。

住宅の安全性に対して高い意識を持ち、責任を持って取り組む方と仕事をすることです。

構造の重要性に対する考え方は、人によって大きく異なります。だからこそ、単に依頼された業務をこなすのではなく、自分の名前と責任を背負って仕事をする立場として、本当に住宅の品質向上を目指している方と向き合うことを大切にしています。

また、SNSなどを通じて情報発信は行っていますが、こちらから無理に営業活動を行うことはありません。構造の重要性を理解し、必要性を感じた方から自然と相談いただける環境をつくり、その一つひとつに誠実に対応していくことを経営の軸としています。

個人の力を活かし、横のつながりを広げる

――組織運営で意識していることは何ですか。

現在は一人で運営していますが、今後も大規模な組織化を目指すのではなく、それぞれが専門性を持つ人材と連携しながら価値を提供する体制を重視しています。

一定のスキルや強みを持つ人であれば、必ずしも一つの会社に所属する必要はなく、各分野の専門家が協力することで、より柔軟かつ質の高い仕事が実現できると考えています。そのため、採用によって規模を拡大することよりも、建築業界内で信頼できる仲間とのネットワークを広げ、互いの強みを生かせる関係づくりに注力しています。

――今後取り組みたい挑戦について教えてください。

建築業界における横のつながりを広げ、実務者同士が知識や技術を共有できる環境づくりに取り組んでいきたいです。

以前は、他社の取り組みや施工方法を知る機会は限られていました。しかし現在は、現場の情報や技術をオープンに共有できる環境が整いつつあります。よい事例や知識を共有することで、個々の技術力向上だけではなく、業界全体の品質向上にもつながると考えています。

また、仕事以外ではテニスにも力を入れていきたいと思っています。事業の成長だけを追求するのではなく、自分自身の時間も大切にしながら、長く挑戦を続けられる環境をつくっていきたいです。

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