医薬品向け乾燥剤の技術を暮らしへ――社員一人ひとりの「好き」を事業に変える山仁薬品の挑戦

山仁薬品株式会社 代表 関谷 康子氏

海外から原料を輸入し、加工・成形した乾燥剤を製薬会社向けに販売している山仁薬品株式会社。医薬品分野に特化してきた同社は、これまで培ってきた技術を生かしながら、近年は一般消費者向けの商品開発にも挑戦しています。その背景にあるのは、社員一人ひとりのアイデアや個性を生かし、新たな可能性につなげていきたいという考えです。今回は代表の関谷康子氏に、事業の特徴や新商品開発への思い、組織づくり、今後の展望について伺いました。

製薬会社に特化して培ってきた乾燥剤の技術

――現在の事業内容について教えてください。

海外から乾燥剤の原料を輸入し、それを加工・成形して販売しています。当社のお客様はほぼ100%が製薬会社で、医薬品専用の乾燥剤を扱っていることが特徴です。

グループでは、山仁産業株式会社が製造を担い、山仁薬品株式会社が販売を担当しています。製薬会社に特化して事業を続けてきたことが、当社ならではの立ち位置だと考えています。

――経営の道に進まれたきっかけを教えてください。

もともとは祖父が創業した会社で、親から「継いでほしい」と言われたことがきっかけです。現在は72期を迎えています。

私自身、最初から経営者になることを目指していたというより、家業を引き継ぐ形で経営に携わるようになりました。

医薬品向けから一般消費者向けへ、技術の可能性を広げる

――今後、新たに取り組んでいきたいことはありますか。

これまでのBtoB事業は今後も続けていきます。そのうえで、BtoC向けの商品を新たに加え、事業の幅を広げていきたいと考えています。

一般向け商品のきっかけの一つになったのが、私が2009年に入社し、現場研修をしていたときの経験です。当時、廃棄される乾燥剤を持ち帰り、湿気で固まりやすかった調味料の瓶に入れてみたところ、最後まで使い切ることができました。「同じように困っている人がいるのではないか」と感じたことが、一般向けの商品を考える原点になっています。

その後、調味料専用乾燥剤の開発に取り組みました。商品名やデザイン、販売方法、PRなども自分たちで考えながら、手探りで進めてきました。

――ほかには、どのような商品を開発されているのでしょうか。

社員のアイデアから生まれたのが、靴用乾燥剤です。社員の知り合いだったボルダリングジムのオーナーから「靴用の乾燥剤は作れないか」という相談がありました。ボルダリングシューズは先が細く、一般的な靴用乾燥剤では奥まで入りにくいという悩みがあったそうです。

最初は「競技人口を考えると、それほど売れないのではないか」と思っていました。ただ、社員が何度も提案してくれたことで試作品を作り、クラウドファンディングサイトの「Makuake」で販売しました。最初に500足分を出したところ3日で完売し、追加した2000足分、その後の1000足分もほぼ完売しました。

自分が考えていた以上に、世の中のニーズは違うところにあるのだと実感した出来事でした。現在は、手汗に悩む人に向けた「にぎりざんまい」といった商品の開発にも取り組んでいます。

消費者との接点を増やし、新たな市場を学ぶ

――BtoC事業を広げるうえで、現在の課題はどのようなところにありますか。

BtoBをやめてBtoCへ移行するのではなく、これまでの事業にBtoCをプラスしていく考えです。そのため、新たに消費者との接点をつくり、市場を知っていく必要があります。

現在はECでの販売に加え、店舗でも商品を扱っていただいています。知見のある方にも協力していただきながら、店舗展開やEC販売について社内でも学びながら進めている段階です。まだ自分たちだけで完結できていない部分もあり、今後3年ほどで力をつけていきたいと考えています。

――今後の目標を教えてください。

私が会社を通じて実現したいのは、数字だけではありません。

最終的には、それぞれの従業員が自分の能力を生かして、さまざまな事業部を立ち上げ、自分の好きなことに挑戦できる会社にしたいと思っています。

「人材育成と人材開発」が経営の中心

――会社を通して実現したいことは何でしょうか。

私自身は、従業員一人ひとりの能力開発をしたいと思っています。人にはそれぞれ得意なことも、好きなことも、趣味もあります。それぞれが持っているものを伸ばしていければいいですね。

当社はたまたま製造業をやっていますが、私はどんな仕事をしていたとしても、経営で大切なのは人材育成と人材開発だと思っています。社員の身近な気づきやアイデアを会社で共有し、それを商品や新しい事業につなげていく。自分の意見が形になるときのワクワク感を、社員にも味わってほしいと思っています。

――経営するうえで、譲れないことを教えてください。

従業員満足を大切にすることです。みんなが働きやすく、「この会社で働き続けたい」と思える組織にしたいと考えています。

何か特別な出来事があってそう考えるようになったわけではなく、もともとの自分の性格だと思います。私自身、前職でも辞めたいとは思わず、続けたいと感じていました。だからこそ、社員にも同じように思ってもらえる会社をつくりたいんです。

社員のエンゲージメント調査も毎年実施しています。これからも、一人ひとりが働きやすく、それぞれの能力や感性を生かして挑戦できる組織をつくっていきたいと思っています。

日常の中に新しいアイデアの種を見つける

――休日はどのようにリフレッシュされていますか。

休みの日でも、街を歩きながら新商品のヒントを探すことがあります。新しい商品を考えるようになると、仕事と趣味の境目がなくなってくる感覚がありますね。

また、これまでやったことのないことに挑戦し、感性を磨くことも意識しています。身近な暮らしの中には、まだ解決されていない小さな困りごとがたくさんあると思います。そうしたヒントに気づき、社員一人ひとりのアイデアや実行力を生かしながら、新しい商品や事業につなげていきたいです。

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