北海道農業を支え続けるビニールハウスのパイオニア――100年企業を目指す旭川ビニールの挑戦
株式会社旭川ビニール 代表取締役 大谷 泰一氏
株式会社旭川ビニールは、農業用ビニールハウスの施工を中心に、農業資材の販売や農薬の提供などを通じて北海道の農業を支えてきた企業です。初代社長故大谷二朗が建てた大きな倉庫にある豊富な在庫と迅速な対応力を強みに、多くの農家から厚い信頼を獲得しています。今回は代表取締役の大谷泰一氏に、事業の特徴や経営への想い、今後の展望について伺いました。
目次
北海道の農業を支えるビニールハウス事業
――現在の事業内容について教えてください。
当社は農業資材の卸売を行っていますが、主力事業は農業用ビニールハウスの施工です。農家様から依頼を受け、ビニールハウスの骨組みや被覆資材を調達し、施工まで一貫して対応しています。
当社の原点は、北海道にビニールハウスを導入した創業者の挑戦にあります。昭和30年頃、北海道の厳しい寒さでは一般的なビニールが割れてしまうという課題がありましたが、メーカーと共同で改良を重ね、寒冷地でも使用できるビニールハウスの普及に取り組んできました。現在はビニールハウス事業を中心に、その中で使用する内張り、灌水、暖房機、肥料、農薬等も扱う施設資材屋として北海道の農業を支え続けています。
――現在の事業状況について教えてください。
現在は順調に推移しており、半期時点で前年同期比約125%の売上となっています。
その理由の一つが豊富な在庫です。北海道では雪の影響でビニールハウスが倒壊することもあり、農家は早急な復旧を必要とします。当社では大規模な倉庫に資材を常時確保しているため、迅速な対応が可能です。ビニールハウスだけでなく、農業資材についても十分な在庫を持っていることが、お客様から選ばれる理由の一つになっています。
情報発信を強みに、新たな顧客との出会いを生み出す
――御社ならではの強みは何でしょうか。
大きな強みの一つは情報発信です。ホームページには多くの情報を掲載しており、それを見てお問い合わせいただくケースが増えています。農薬に関する問い合わせなどもホームページ経由で多く寄せられています。
また、Instagramによる発信も成果につながっています。実際にInstagramを見た農家からビニールハウス2棟分のご依頼をいただき、約500万円規模の受注につながりました。現在ではホームページやSNSを活用した情報発信も重要な営業活動の一つとなっています。
――企業理念について教えてください。
企業理念は、「農業の領域における付加価値の提供と質の高いサービスを通じ、日本の農業に貢献すること」です。
日本の食料自給率向上に少しでも貢献したいという想いがあります。その一助として地球温暖化抑制のための啓蒙もしております。冷蔵庫の野焼きをしている農家様に「代替フロンの地球温暖化係数は、二酸化炭素の11,700倍なの知ってますか?」と教えてあげたり、地球温暖化係数が二酸化炭素の28倍のメタンに関しては、現在は牛・羊のゲップに含まれるメタンより、水の中にある刈り残しの稲から排出されるメタンの方が多くなっているデータを紹介したりして、農業と地球環境の両立を目指しています。
異色の経歴が育んだ経営者としての価値観
――経営者になられた経緯を教えてください。
高校時代は陸上競技に打ち込み、全国大会を目指していましたが、高校3年生の時に交通事故に遭ったことで進路が大きく変わりました。それをきっかけに勉強へ打ち込み、医学の道へ進みました。
医師として約30年間勤務した後、家業へ戻り、現在は代表就任から14年になります。医師を辞めたわけではなく、現在も産業医として活動していますが、現在は会社経営が中心です。
――経営で大切にしている考え方を教えてください。
何よりも「人」です。
社長就任当初は経営経験がなく、多くの方々から助言をいただきました。「最初の3年間は大きく変えようとせず、会社をよく見なさい」という言葉は今でも強く印象に残っています。
会社は一人では成り立ちません。多くの人に支えられてここまで来ることができました。だからこそ、経営において最も大切なのは人とのつながりだと考えています。
また、AIについても学びの道具として積極的に活用しています。一方で、お客様との関係は人と人との信頼によって成り立つものであり、その部分はこれからも変わらないと考えています。
組織づくりは「システム・エラーを炙り出すこと」と「コミュニケーション」から
――組織運営で大切にしていることは何でしょうか。
社長就任当初は組織として十分に機能している状態ではありませんでした。そこで医療現場で学んだ「インシデント・レポート」を取り入れシステム・エラーを炙り出し、組織を改善する取り組みを進めました。
システム・エラーは個人の責任ではなく、システムを改善することで、働きやすい組織づくりを目指しています。
また、社員同士のコミュニケーションも大切にしています。年に2回の懇親会では必ずカラオケへ行き、部署を越えた交流を深めています。社長は17時30分に退勤するよう心掛けています。普段から現場へ足を運び、情報共有を行うことも欠かしません。
100年企業を目指し、日本の農業に貢献し続ける
――今後の目標や挑戦について教えてください。
目標は会社を100年続けることです。来年で創業70年ですので、あと30年で100年になります。
両親が築き上げた会社を次の世代へつなぎ、その名前を100年残したいと思っています。後継者が家族であるかどうかにはこだわらず、会社の理念を受け継ぐ人へバトンを渡せればよいと考えています。
また、日本の食料自給率向上という目標に向けて、地球温暖化抑制のための啓蒙もしながら農業を支えていきたいと思っています。そのためにもホームページやFacebook、Instagram、Threadsなどを活用した情報発信を続け、新たな商品や農薬事業にも力を入れていきます。
これからも北海道の農業に寄り添いながら、地域とともに歩み続ける企業でありたいと考えています。