創業100年、その先の未来へ――社会貢献を軸に挑み続ける三香堂の経営哲学
株式会社三香堂 代表取締役社長 佐々木 基之氏
創業100周年を迎えた株式会社三香堂は、化粧品の製造販売を通じて、創業以来受け継がれる「社会貢献」の理念を大切に歩み続けてきました。時代の変化に合わせて組織改革や働き方の見直しを進めるとともに、新たな事業にも挑戦し、次の100年を見据えた企業づくりに取り組んでいます。本記事では、代表の佐々木基之氏に、創業理念への想い、組織づくりや今後の展望について伺いました。
社会貢献の理念を礎に、変革を続ける100年企業
――現在の事業の特徴や会社の強みについて教えてください。
株式会社三香堂は今年で創業100周年を迎えました。創業家として歩みを重ね、私で三代目となります。本業は化粧品の製造販売ですが、私たちの強みは、100年受け継いできた理念を大切にしながら、時代に合わせて会社そのものを変え続けてきたことだと思っています。
以前は、いわゆる昭和型のトップダウンによる組織運営を行っていました。しかし時代の変化とともに、そのやり方だけでは社員が十分に力を発揮できず、人材育成や組織運営にも課題が見え始めました。さらに、幹部社員が相次いで退職するなど、大きな転換が必要だと感じる出来事もありました。
そこで、一人ひとりが主体的に考え、支え合いながら成長できる組織へと舵を切りました。現在は女性管理職の登用も進め、社員一人ひとりが高いモチベーションで活躍できる会社を目指しています。
――会社の理念やビジョンにはどのような想いが込められていますか。
創業以来、一貫して大切にしてきたのは「社会貢献」です。創業者は「世のため、人のために役立つ」という考えを企業理念に掲げ、その精神は現在まで受け継がれています。
もちろん、お客様のお役に立つことは大切です。しかし、それ以前に社内で互いに支え合い、貢献し合う姿勢を何より重視しています。社員一人ひとりが「自分は誰に、どのように貢献できるか」を物事の判断基準とし、その積み重ねが会社の成長につながると信じています。
人の役に立つことが結果として自己実現にもつながり、多くの方から応援される企業であり続けたいですね。
受け継ぐ宿命と、自分らしい経営のかたち
――経営者になられたきっかけについて教えてください。
幼い頃から会社を継ぐものだと言われ続けて育ったため、「経営者になろう」と決意した明確なタイミングはありませんでした。私にとっては、それがごく自然な進路だったのです。
一方で、その重圧から子どもの頃には強いストレスを感じた時期もありました。大学卒業後は父の勧めもあり、一度アパレル企業へ入社しています。学生時代はアルバイト経験もなかったため、社会人として多くを学べた一年でした。
今、後継者を育てる立場になって思うのは、自分と同じような形ではなく、それぞれが自分の意思で進路を選べる環境をつくっていきたいということです。
――経営判断をする上で大切にしている価値観を教えてください。
経営の軸にあるのは、創業者から受け継いだ「社会貢献」の精神です。創業者は、家族の皮膚疾患に悩む人を助けたいという想いから化粧品の研究を始め、その商品が地域の方々にも喜ばれたことをきっかけに会社を創業しました。
また、「声なくして人を呼ぶ」という創業者の言葉も今なお大切にしています。広告宣伝に頼るのではなく、商品を使って喜んでくださった方が口コミで広げてくださる。その積み重ねこそが企業への信頼につながるという考え方です。
創業者には、京都の和菓子職人のように、目の前のお客様に誠実に向き合い、一人ひとりに喜んでいただける仕事をコツコツ積み重ねるという信念がありました。その精神を受け継ぎながら、急激な成長を追い求めるのではなく、ご縁をいただいたお客様との信頼関係を一つひとつ築いていきたいと思っています。
一人ひとりが輝ける組織を目指して
――社内のコミュニケーションで大切にしていることを教えてください。
組織運営が大きく変わるきっかけとなったのは、2020年のコロナ禍でした。営業所を廃止し、営業職は在宅勤務やオンライン商談へと移行しました。当初は感染対策として始めた取り組みでしたが、結果として働き方そのものを見直す大きな転機になりました。
オンライン化によって、子育てや介護などと両立する社員も働き続けやすくなり、多様な人材が活躍できるようになりました。実際に在宅勤務や時短勤務を取り入れたことで採用にも大きな変化があり、これまで苦戦していた営業職には約300名の応募が集まりました。こうした取り組みが、多様な人材との出会いにもつながっています。
これからも、一人ひとりの事情に寄り添いながら、誰もが安心して働き続けられる会社を目指していきたいですね。
――組織づくりで今後さらに大切にしたいことは何でしょうか。
これから求められるのは、権威型ではなく支援型のリーダーシップだと思っています。リーダーが先頭に立って引っ張っていくのではなく、組織全体を後ろから支え、一人ひとりが力を発揮できる環境を整えることが大切です。
社員が安心して挑戦できる風土を育み、それぞれが自分らしく成長できる組織であり続けたいですね。
次の100年を見据え、新たな価値を創造する
――今後取り組みたい挑戦について教えてください。
創業100周年を迎えた今、本業である化粧品の製造販売を大切にしながら、新事業の開発にも挑戦していきたいと思っています。
将来的には、会社のなかから複数の経営者が育ち、新しい会社や事業を生み出せるグループへ発展していくことが目標です。社長が一人だけではなく、多くのリーダーが誕生することで、次の100年、その先の200年へと企業をつないでいける組織にしていきたいですね。
さらに、勤務時間を短縮し、生まれた時間を自己啓発や自己投資に充てられる働き方も目指しています。社員一人ひとりが仕事だけでなく、自ら成長し続けられる環境を整えることも、これから大切にしていきたいことの1つです。
――今後特に強化したい分野はありますか。
製品開発はもちろんですが、デジタル化やAIの活用にも力を入れていきたいと思っています。
これまでアナログ中心だった業務も、近年はオンライン化やデジタル化が進みました。今後はAIを業務へ積極的に取り入れ、生産性を高めながら、より働きやすい環境を整えていきたいですね。
その結果、勤務時間の短縮や自己成長のための時間を生み出し、人だからこそ発揮できる創造性や改善力をさらに磨いていける組織を目指しています。
日常の気づきが、新たな挑戦を生み出す
――仕事以外でのリフレッシュ方法を教えてください。
私自身は、仕事とプライベートを明確に切り分ける生活ではありません。街を歩いていても、新しいサービスや商品に触れるたびに、「これを新しい事業につなげられないだろうか」と自然に考えています。
ときにはおいしい料理を味わうこともありますが、それも新しい価値や体験に触れる機会だと思っています。日常の出来事が次の事業へのヒントとなり、誰かの役に立てば大きなやりがいを感じます。
これからも新しい発想を大切にしながら挑戦を続け、より多くの方に喜んでいただける事業を生み出していきたいですね。