株式会社First Street 代表取締役 田口 哲也 氏
20年にわたり柔道整復師として活動してきた田口氏。自身の病気の経験を通じて従来の保険医療だけでは解決できない「慢性的な不調」の問題に直面した同氏は、生活習慣や食習慣の改善をベースとした自然療法へと活動の軸をシフト。そして今、新たなヘルスケア事業を本格始動しようとしています。そんな同氏に、キャリアの転機とビジョンを伺いました。
トップを目指すことの重要性
――御社の事業内容を教えてください。
20年ほど前に整骨院をスタートし、途中で法人化して事業を続けてきました。しかし整骨院や病院に行っても「根本的に良くならない人」が多いという現状と、保険適用業務だけでは対応できない患者さんがいることから、新たにヘルスケアサロンを立ち上げ動き始めています。そこでは薬や手術に頼らず生活習慣や食習慣の指導を行い、それに加えて整体的な施術もプラスしながら、健康を取り戻していくことを目指しています。
――ヘルスケア領域へ至ったのはどのような経緯があったからですか。
元々は高校卒業後、サッカー留学をしてプロサッカー選手として活動していました。帰国後はサッカーを教える仕事に就きたいと考え、スポーツトレーナーや医療関係者を考えて柔道整復師の免許を取得したのがこの分野に入ったきっかけです。サッカーの経験で「トップを目指すこと」の重要性を実感していたので、整骨院を開業した際も「業界のトップを目指そう」とやってきました。しかし、勉強を深めれば深めるほど従来の施術や治療だけでは限界があると感じ、「もっとできること」を追求し続けた結果、自然療法という分野にたどり着いたのです。
病気の経験から根本改善の重要性を知る
――これまでのキャリアで最も印象的だった出来事は何でしょうか。
整骨院の仕事で患者さんをたくさん診ることに邁進するあまり、自分の体へのケアを怠り、自分が病気の予備軍になってしまったことです。健康診断で要精密検査となり、肝機能障害や高血糖、脂肪肝を指摘されました。
――そのことがキャリアの転換点につながったのでしょうか。
はい。その時に「ちゃんと一から勉強し直さなきゃ」と、学生時代の教科書を引っ張り出してきて体の組成から勉強し直しました。ここで出会ったのが自然療法の分野です。学んだ知識を元に自分の体で試してみたところ、食事や生活習慣を変えるだけでわずか3ヶ月で12kg減量し、指摘された数値はほぼ全て改善しました。半年間では20kg減量し、翌年には長年のアレルギーや肌荒れ、踵のひび割れといった不調も全て解消しました。この「自分の変化」こそが最大の転換点でした。治療だけでは限界がある慢性的な痛みや不調は、根本的に体内の炎症を取り除かねば治らないと確信したんですね。こうした経験から、「根本改善を伝えなければ」という思いが強くなり、今の事業にシフトしました。
医療者に向くのはベースが優しい人
――仕事をする上で大切にしている価値観は何ですか。
「ただ稼げればいいというスタンスで仕事をしない」ということです。医療やヘルスケアの分野にいるからこそ、根本的なベースとして優しい人でないとこの仕事は向かないと思っています。受付時間ギリギリに来た患者さんに対し、時間へのストレスを感じながら治療して良くしてあげられるのか、ということです。金儲けの感覚を強く持っている人は、本当の意味での医療には向かないと考えています。
――プライベートでの趣味やリフレッシュ方法について教えてください。
自分自身がサッカーをすることはほとんどなくなりましたが、地域スポーツへの貢献をリフレッシュとしています。8年ほど前から地域のサッカー少年団の指導を頼まれ、2年前に一般社団法人を設立しました。ここでは総合型地域スポーツクラブとして、サッカーに限らずバスケットや野球、卓球など、子供から高齢者までスポーツを通じて健康維持とリフレッシュができる場を提供しています。
自然療法の認知を広げるために
――今後の展望について教えてください。
ヘルスケアサロンの施術は、今のところは自分一人でやっていこうと思っています。一方、整骨院をやっていた頃の経験も手伝って、「開業したい」という柔道整復師たちからのコンサルティング依頼が来るようになりました。実は「こんな簡単なことをするだけでいいのに」ということをほとんどの整骨院ができていない現状があるのですが、こうした整骨院のコンサルや人材の育成に関しては、今後一つの事業として確立していく可能性を感じています。
――経営において感じている課題はありますか。
最も大きな課題は認知活動です。自然療法は「病院に行っても良くならない」というニッチな層に対して、その存在を知ってもらう必要があります。今までは知り合いからの紹介や整骨院の患者さんへのアナウンスで対応してきましたが、今後はYouTubeなども活用して情報を発信し、認知度を上げていきたいと考えています。

