株式会社ビゼック 代表取締役 中原 大介 氏
大手企業での成功を捨て、自らの理想とする人材紹介の形を追い求めている中原氏。「努力が報われる社会を作る」とミッションを掲げ、「両手で繋ぐ」人材紹介を追求し続ける中原氏に、その経営哲学と今後の展望を伺いました。
企業と人を自分の両手で繋げる
――御社の事業内容を教えてください。
人材紹介事業を行っています。特徴は、求職者の方に多くの時間使って徹底的に向き合っていることです。私たちが対峙する求職者の方の多くが20代から30代前半の「チャレンジをしたい」「自分のキャリアを前向きに進めていきたい」と思っている方です。私たちが支援させていただく時点で特に高いスキルレベルは求めることなく、ビゼックのモデルを使えば能力が引き上がると思ってますので、必要なのは「頑張りたいという想い」だけです。
――創業の経緯を教えてください。
以前リクルートで法人営業として企業の採用コンサルティングをしており、圧倒的データベースによる支援は改めてとてもすごいなと思っています。ただ、一方で、どうしてもキャリアアドバイザーとの分業モデルでは、各社と求職者の方の想いが本当に擦り合うことはなく、ビジネスとしての優位性は感じつつも、私がやりたいのはそれではないと感じておりました。そこで、決して大きなスケールにはならなくても地道に、「企業と求職者を自分の両手で繋げる」人材紹介をやりたいと思い、ビゼックを立ち上げました。
人生を通じて「努力は報われる」と学んだ
――ご自身の人生に影響を与えた人物や出来事はありますか。
最も価値観を変えられたのは、中学時代の野球クラブの監督です。その監督は「地元で有名な選手で終わるな」と、仮に能力が足りていなくても、「日本一を目指す意識と行動はできる」と説き続けていて、監督自身も誰よりも朝早くからグランウンド整備を自ら行う「背中で見せる」姿はとても格好良かった。この監督から、高い視座を持ち、挑戦し続けることを学びました。
――仕事をする上で大切にしている価値観を教えてください。
私は、勉強、野球、仕事と、一生懸命取り組んだどの分野でも、各ステージの最初は「ビリ」から始まる、いわゆるセンスのない人間でした。しかし幸いにも、心が折れる前にもがきながらもコツを掴み、野球では日本一を経験し、仕事でも特定の領域で日本一やトップ層を走れるようになりました。これらの経験から、「努力は報われる」と強く思うようになり、同時に「社会の頑張っている人を報いたい」という仕事上のミッションも生まれました。
一人ひとりの個性と思いを尊重する
――組織運営で意識されていることは何でしょうか。
「一人ひとりの個性を見極める」ことです。私自身がトッププレイヤーとして成功したメソッドを模倣することが正解だと思っていた時期もありました。しかし、よく言われる話ではありますが、個性によって動き方や得意・不得意が異なることが分かり、現在では社員の個性を見極め、それを最大化するプロデュースが私の仕事だと考えています。
――コミュニケーションで特に大事にされていることはありますか。
「相手とこちらの主張の論点を整理する」ことです。ありがたいことにビゼックのメンバーは本当に一生懸命頑張ってくれていると思っています。そのメンバーが私と異なる意見を発したとしても、それは「間違っている」ではなく、「なにかすれ違っている」か「異なる視点を持っている」なのだと思います。だからこそ、なぜそう思うのかをきちんと確認して、相手の考え自体を否定することはなく、擦り合わせるように意識しています。
オペレーショナル・エクセレンスを磨くために
――今後の展望についてお聞かせください。
当社の戦略はオペレーショナル・エクセレンスにあります。人材紹介という事業では、たとえAI時代になっても合理的で正しい情報だけでは説明できない「信頼できる人間から発される言葉」に価値が存在し続けると考えています。合理性と人間味のコラボレーションに今後の人材紹介の未来があると信じ、これを追求するためにも、非効率を極限まで減らし、コア業務(人にしかできない価値)に集中できる時間を最大化させたいと考えています。
――具体的にどのような施策を考えていますか。
まずはシステム化の推進です。セールスフォースなどのCRMを活用し、「データが溜まりにくい」「データを溜めるために発生する煩雑な業務」という小規模人材紹介会社の課題を解消してデータを蓄積することで、データドリブンな意思決定を可能にしていくこと。またAI活用によってノンコア業務を徹底的に潰し、コア業務に集中できる時間を増やしていくこと。加えて支援の質の観点では、週に1度は全社員で商談を入れることを禁止とする勉強会デーを設け、知識だけでなく中長期的に育つスキル部分にもフォーカスした社員のレベルアップを継続的に行っています。

