株式会社ジーンクエスト 代表取締役 岩田 修氏
個人向け遺伝子解析サービスを日本で先駆けて展開してきた株式会社ジーンクエスト。最新の研究成果をスピーディにユーザーへ還元する独自の仕組みを武器に、「遺伝子研究と生活の距離を縮める」ことを目指す。研究者から経営者へと歩みを進めた岩田修氏は、事業の進化と組織づくりにどのように向き合っているのか。今の現状から今後の展望までを伺った。
目次
日本初の個人向け遺伝子解析から広がる可能性
――現在の事業内容や特徴について教えてください。
当社は、個人向けの遺伝子解析サービスと、解析から得られる遺伝情報を活用した研究・データ提供の2軸で事業を展開しています。ユーザーのご自宅に検査キットを送り、唾液を返送いただくと、約360項目の体質・疾患リスク・祖先情報などを解析してお届けするサービスが中心です。
大きな特徴は、解析結果を受けた後も継続的にアップデートを行っている点です。遺伝子の全領域を網羅的に読んでいるため、新しい研究成果が発表されるたびに新項目を無料で追加できます。結果を見るたびに新しい発見がある、息の長いサービスになっています。
また、ユーザーの遺伝的特徴を店舗や企業側と連携できる仕組みもつくり、食生活や運動の提案など、体質にあわせたアドバイスが受けられる環境を整えています。遺伝子研究は難しい印象を持たれがちですが、見た目年齢や味の好みなどの“親しみやすい切り口”も積極的に取り入れ、より生活に近い形で提供しています。
研究者から経営者へ──「成果を素早く届けたい」
――経営者になられた経緯を教えてください。
もともとは研究者としてキャリアをスタートしました。長い期間をかけて研究しても、成果が社会に出るまでに数年〜10数年かかることが多く、そのスピード感に課題を感じていました。そんな時、ジーンクエストがグループに加わり、個人向け遺伝子解析という新しい領域に挑戦できる機会をいただいたことが転機になりました。
このサービスは、研究成果を最短1~2ヶ月でユーザーに返せる仕組みがあります。研究が生活に直結する感覚に魅力を感じ、経営にも強い関心を持つようになりました。仮説を立て、検証を繰り返すプロセスは、研究者時代と共通点が多く、自然と経営にのめり込んでいきました。
――仕事をする上で大切にしている価値観は何でしょうか。
「最新の研究成果を、よりわかりやすく、より早く届ける」ことです。遺伝子検査そのものよりも、研究を生活に落とし込む体験価値をどう生み出せるかをいつも意識しています。
もう一つは、エビデンスを大切にする姿勢です。「この体質だから、この運動が良い」といった具体的な推奨ができるよう、データを蓄積し、しっかり裏付けを取って提供できるようにしたいと考えています。
個人の意思とデータを尊重する「自律型チーム」づくり
――社員の方々との関わりで意識していることはありますか。
現在は正社員約10名、関連スタッフを含めると20名ほどの組織です。小規模だからこそ、個々の意思を尊重することを大事にしています。「やりたい」という思いがあるほど、推進力が生まれると考えているため、個人目標と組織目標がそろうように対話の機会を多く持つようにしています。
また、コミュニケーションの際には、感覚ではなくデータを基準に議論することも重視しています。上の指示だから、ではなく、数字や根拠をもとに納得して進める文化をつくることが、メンバーの主体性に繋がると感じています。
――採用や育成で大切にしているポイントはありますか。
自分の実現したいことを持っている人、そしてデータを基に考えられる人です。遺伝子解析という専門性の高い領域だからこそ、根拠を大切にしながらも、主体的に動ける方と一緒に働きたいと思っています。
遺伝子情報を“本当に役立つ形”に──生活に届くサービスへ
――今後の展望や挑戦したいことを教えてください。
現在の遺伝子検査は、結果を返すところまでで止まってしまいがちです。今後は、その先の「生活をどう変えられるか」まで踏み込みたいと考えています。体質や疾患リスクに合わせた食事・運動・習慣づくりを提案できるよう、エビデンスの収集とデータの拡充を進めていきます。
また、遺伝子への抵抗感を減らすため、祖先解析やタイプ分析などの“入り口となるコンテンツ”も強化したいです。興味を持つきっかけを増やし、最終的には「自分の遺伝子を知ることが生活の当たり前になる未来」を目指しています。
リフレッシュは“世界を見ること”
――仕事以外でのリフレッシュ方法を教えてください。
旅行が好きで、国内外問わずさまざまな場所に足を運ぶのがリフレッシュになっています。直近では万博にも行っていました。

