果物と“鬼嫁パワー”で地域を笑顔に――北村果樹園が紡ぐ三代続く挑戦

株式会社北村果樹園 代表 北村 陽子氏

株式会社北村果樹園は、戦後の開拓地から始まった三代続く果樹園です。サクランボやリンゴ、ラ・フランスなどの果樹栽培に加え、観光果樹園やジャム・焼肉のタレといった加工品づくりにも取り組み、全国の顧客に直接届けています。自ら販路を切り開き、「おによめ.com」の活動やユニークな商品開発を通して、家族や仲間とともに楽しく働ける場を育ててきました。本記事では、代表の北村陽子氏に、果樹園の歴史や事業の特徴、これからの挑戦などについて伺いました。

戦後開拓地から続く果樹園と“お客様目線”の商品づくり

――果樹園としての歩みや現在の事業について教えてください。

代々の兼業農家で、今の畑がある場所は、もともと赤松林だったところを戦後に開拓した土地だと聞いています。三谷川の扇状地で石が多く、水はけが良すぎてお米が全くできなかったので、いろいろ作物を試した末に果樹に行き着いたそうです。サクランボやリンゴ、ラ・フランスなどを植え始め、今ではサクランボ日本一と言われる東根市の中でも、一大産地の一角になっています。

私は三代目にあたり、夫と私が社員、他はパートさんという小さな果樹園です。サクランボの観光果樹園も開いていて、農協には出さず、全国のお客様と直接やりとりしながら、生果と加工品をお届けしています。

――貴社ならではの強みはどのような点にありますか。

生産者として、自分たちで育てた果物をすぐ加工できるのが一番の強みだと思っています。市場の加工用には青いリンゴやイマイチなものが混ざることも多いのですが、弊社では規格外品でも半熟で味がのったものだけを丁寧に選んでジャムにします。サクランボならナポレオンや紅さやかなど品種ごとにジャムを作るので、味の違いも楽しんでいただけます。

サクランボを昨日収穫して、今日には工場でジャムにする、という動き方もしています。一年分は冷凍しながら、必要に応じて小ロットで追加生産し、賞味期限は「作った日から6カ月」と決めて在庫を持ちすぎないようにしています。大量生産はできませんが、その分、旬の味をそのまま閉じ込めた商品をお届けできていると感じています。

“農家になるつもりはなかった”三代目の転機

――農家を継ぐことになった経緯を教えてください。

もともと実家は農家ではありませんし、農家に嫁ぐつもりも全くありませんでした。山形市から嫁いできて、サラリーマンの妻になるつもりでいたんです。ところが、周り一帯が同じような果樹農家で、「農家の嫁が集まる会」にも半ば強制的に入れられて、気づけばだんだん洗脳されていきました。

昔、広告代理店で営業職をしていたこともあり、人と話すことや営業が好きだったので、ちょうど宅急便が発達し始めた時期に、自分でお客様を開拓し始めました。雨よけハウスができて贈答用サクランボの需要が高まったタイミングとも重なり、ご案内状を出したり、農協に出さずに直接販売したりしているうちに、全国に顧客が広がっていきました。

――仕事や人生のターニングポイントになった出来事はありますか。

一番大きかったのは、子どもたちがなかなか結婚せず、毎日同じような日々が続いていた頃です。祖父母との生活もルーティン化していて、「つまらないな」と感じていました。子どもに結婚を急かしてもケンカになるだけなので、「もう諦めました。私は好きなように生きます」と宣言して、結婚資金として貯めていたお金で加工場を建てました。

ところが、加工場を作った途端にあちこちで「子どもができた」という話が続き、十数年で孫が6人になりました。一歩踏み出すと、家族も暮らしも一気に動き出すのだと実感しました。

温暖化と向き合いながら広げる加工の可能性

――今後の展望や、挑戦していきたいことを教えてください。

今後は、息子の嫁のためにも加工の仕事をもっと増やしていきたいと思っています。お嫁さんは35歳で子どもが3人おり、今は1日5時間ほどの勤務ですが、これからお金もかかりますし、その分の仕事を作っていかなければなりません。

一方で、温暖化の影響でサクランボの生食用の栽培がだんだん難しくなってきており、その分の売上減を、加工で補っていく必要があります。今年は「さくらんぼの里から」というギフトセットを作り、焼肉のタレと3種類のサクランボジャムを詰め合わせました。来年はこれをどう広めていくかがテーマです。

――行政との連携や、新しい商品づくりの取り組みについても教えてください。

県や市からは、6次産業の補助金やプランナーの派遣など、たくさん支援を受けています。ラベルやネーミングのデザイン料もほとんど補助でまかなっていて、私は自宅のパソコンから必要な枚数だけ印刷する形です。

市役所のブランド戦略課とは、サクランボのジャムを使った「タルト・ダ・ドーレ」というお菓子も一緒に作りました。市長たちが東京などへ出張するときには、そのお菓子をお土産として持って行ってくれているそうです。高額な商談会にはあまり出ず、できるだけ無料の場を選びながら、加工品の販路を少しずつ広げているところです。将来的には、設備ごと引き継いでくれる大きな会社や、移住して一緒に学んでくれる若い人が現れたら嬉しいなと考えています。

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