伝統の食品を世界へ。25年のマーケティングとAI・アイディア力で挑む地方創生の新たな形

合同会社名刀政光SPARKLE 代表取締役 緒方隼人氏

補助金を活用した新規事業開発支援から、日本の伝統食品を世界へ届けるグローバル構想まで。2025年10月に設立された合同会社名刀政光SPARKLEは、「アイデア」を起点に人と事業を動かす伴走型のビジネスを展開している。25年以上マーケティングの第一線で経験を積み、統合マーケティング支援ビジネス、飲食、家業、プランニングビジネスまで多彩なフィールドを歩んできた緒方隼人代表に、事業への思いとこれからの挑戦について話を聞いた。

「アイディア」という名の化学反応。既存のものを掛け合わせ、新しい市場を創る

――現在の事業内容や特徴について教えてください。

現在は、大きく分けて2つの軸で動いています。一つは、中小企業の新規事業開発やマーケティングのワンストップ支援です。特に最近は、国もAI人材育成やSNS活用などの研修に対して手厚い補助金を出しています。しかし、多くの中小企業さんはその資金調達のハードルが高かったり、具体的にどう活用すべきか悩んだりしています。

そこで私たちは、パートナーと組んで補助金等の資金調達を支援し、そこに弊社のコアコンピタンスである「アイディア力」を注入します。具体的には、25年のキャリアで培った統合マーケティング戦略を立て、実際のディレクションやPM(プロジェクトマネジメント)は外部のハイスキルな提携先と連携して実行する。結果が出るまで伴走し、最終的にはコンサルティング契約として継続的な成長を支援していくモデルです。

もう一つの軸は、実家のルーツでもある「伝統食品」のグローバル展開です。父の家系は来年創業100年を迎える伝統的な食品会社を経営しており、父はその暖簾分けとして独立しました。その伝統の味に、私の独創的なアイディアを掛け合わせ、海外のプラットフォームを活用して世界へ広めていく。この2つの事業は、実はナレッジの面で強いシナジー効果を結びついているのが現状です。

――業界内での強みはどのような点にありますか。

私の考えるイノベーションとは、ゼロから全く新しいものを研究開発することだけではありません。むしろ「既にあるものをどう組み合わせて、新しい市場を切り拓くか」という掛け算のイノベーションです。

例えば、単に伝統食品を売るのではなく、そこに健康や美容などのオリジナルのエッセンスを加えたり、今のトレンドである日本食の価値をIP(知的財産)やキャラクター文化と結びつけたりする。生成AIを使ってパッケージをデザインし、新たなテクノロジーの時代で活用されるSNSを活用した新しい販路に乗せる。こうした「既存の優れた価値×現代の技術・トレンド」の組み合わせこそが、私たちの得意分野であり、最大の強みです。

――掲げられている「パーパス(存在意義)」についても伺いたいのですが、どのような想いが込められているのでしょうか。

社名にもある「SPARKLE(スパークル)」には、目が輝く、活気があるという意味を込めています。人間って、本当にやりたいことが見つかったり、希望が見えた時、めちゃくちゃ元気が出るんですよね。私のアイディアや計画を通じて、ビジネスが形になり、関わる人たちの目が輝くような瞬間を作りたい。

それがひいては、後継者不足に悩む地方の伝統産業を活性化することに繋がります。地方の食品メーカーさんや伝統産業さんに、私たちのグローバルマーケティングのノウハウを提供し、一緒に成長を分かち合う。大きなことを言うようですが、アイディアによって「より人生が楽しくなる社会」「より希望が持てる社会」を本気で作っていきたいと考えています。

25年のマーケティング人生と、「名刀政光」に込めた亡き父への誓い

――緒方代表が、この道に進もうと思われたきっかけは何だったのでしょうか。18歳の時に経営の勉強を始められた経緯なども教えてください。

実は、最初は個人事業主として活動していました。30歳の時に、祖父が創業した同族会社に入ったのですが、現場の工場で働きながら「いつかもう一度勝負したい」という思いが強くなって。

大学には行っていませんでしたが、大原簿記学校に通って中小企業診断士の勉強を始めました。そこで「企業経営理論」や「マーケティング」を学んだ際、自分でも驚くほどすんなりと理解できたんです。特にマーケティングは非常に楽しく、自分に向いていると感じました。その後はショッププランナーの資格も取り、デザインや販売促進、店舗計画をトータルで学べる環境を作りました。

そこからは実践あるのみだと思い、ベンチャー企業に飛び込みました。そこで名だたるIT企業のイベントやメディアミックスを経験させていただいたことが、大きな転機になりました。当時のカンファレンスで示された「未来のIT社会の姿」を目の当たりにし、「日本も必ずこうなる。これを中小企業に広めたい」と確信して独立したんです。

――独立後は、順風満帆だったのでしょうか。

いえ、当時はまだYouTubeもTwitter(現X)も普及し始めたばかりの頃でした。「これからはSNSで営業をかける時代だ」と中小企業の社長さんに提案しに行っても、「お前は詐欺師か?」なんて言われる始末でした。早すぎたんですね、失敗の連続でした。

でも、運が良かったのは、そこで出会った方とのご縁で「ビルが空いているから飲食店をやってみないか」と誘われたことです。食品業界には興味があったので、思い切って挑戦しました。ターゲットをママ層に絞り、大型の遊具を置いて、当時流行っていたコラーゲンと豆乳を組み合わせた「豆乳コラーゲンしゃぶしゃぶ」という新機軸のメニューを作りました。これが当たって、4年間、共同経営者と繁盛店を運営することができました。この飲食経験が、今の食品開発や海外展開の土台になっています。

――社名の「名刀政光SPARKLE」という、非常にユニークな名称の由来についても伺えますか。

「名刀」という言葉から刀屋さんだと思われることも多いのですが、実は「政光(まさみつ)」というのは、亡くなった私の祖父、父、そしていとこの名前なんです。

日本を代表するマーケティング会社「刀」さんへの尊敬の念もありつつ、何より「政光」という名を残したかった。亡くなった人を忘れないでいるためには、その名を冠して繋いでいくことが一番の供養になるのではないかと思ったんです。

そして「SPARKLE」は、私が一番最初に個人事業主として始めた時の屋号「スパークルプラン」から取っています。「プラン(計画)」だけでは飯は食えない、行動が必要だと思い、プランの文字を外して「SPARKLE」としました。過去の想いと今の決意、そして家族への想いが詰まった名前です。

専門家が横で繋がる「DAO的組織」。AIと信頼を武器に、最小最強のチームを作る

――組織運営で意識していることを教えてください。

現在は、あえて「正社員を大量に抱える」という形は取っていません。信頼できる専門家たちが横の繋がりで結びつく、いわゆる「DAO(自律分散型組織)」に近い形ですね。デザインのプロ、AIのプロ、研究者など、それぞれの分野で突き抜けた才能を持つ方々と、プロジェクトごとにアライアンスを組んでいます。

これは、代表である私自身が人間関係や出会いを何より大切にしてきた結果でもあります。ご縁から始まった飲食店の経営もそうですし、今一緒に動いているフィリピンの日本食関係者や、元大手化粧品会社の主力研究員の方もそうです。信頼で繋がっているからこそ、迅速で柔軟な対応ができる。

フィリピンから世界へ。伝統食品と美容エッセンスが起こす化学反応

――今後の展望や挑戦したいことを教えてください。

まずは「食品のグローバル展開」をフィリピンから本格的に始動させます。TikTokショッピングが活発な東南アジア、特にフィリピンやマレーシアは非常に大きなチャンスがあります。また、日本市場でも昨年の6月から展開が始まっており日本市場の今後の獲得も視野に入れております。

具体的には、静岡の老舗メーカーさんと組んで開発する「だし」の展開です。ただの「だし」ではありません。元大手化粧品会社のトップ研究員の知見を借り、美容エッセンスを配合したり、あるいは予防医療に効く食材を混ぜたりといった、機能性を持たせた新しい食品です。これを、日本のアニメキャラクターIPを活用したコレクター性の高いパッケージで販売します。もちろん根本となるのは味の良さです。

物流コストが低い「だし」という商材を、生成AIによる最新のパッケージと、SNSでのデジタルマーケティングによって、フィリピン、そしてインドネシア、シンガポールへと横展開していきます。

――国内での「地方創生」についても、次なるステップがあるのでしょうか。

海外展開で得た利益とナレッジを、今度は国内の廃業の危機にある伝統食品メーカーさんに還元していきたいと考えています。単なるコンサルティングにとどまらず、将来的にはM&Aや営業承継という形も視野に入れています。

私の実家のルーツである日本の伝統食品のように、本当に良いものはたくさんあります。それを「プロの職人だった父」のように、真心を持って作り続けている人たちが報われる仕組みを作りたい。世界で売れるスキームがあれば、日本の伝統産業は必ず守れます。この挑戦を、クラウドファンディングなどで多くの方の応援をいただきながら加速させていく予定です。

キャンプも工芸も「遊びがナレッジに」。全感覚で楽しむ緒方流リフレッシュ

――仕事以外でのリフレッシュ方法を教えてください。

実は、趣味は一通りやり尽くしてしまった感があって。フットサル、デッサン、キックボクシングなど……。今は「遊びをコンテンツ化する」ことに興味があります。

最近はキャンプに注目していて、YouTubeで面白おかしく配信しながらキャンプをしたり、マルシェに行って食品を売っている方々と直接お話ししたり。そこでバーベキューをしながら生まれる会話の中に、実は地方創生のヒントや新しいマーケティングのアイディアが詰まっているんです。

趣味でやっていることが、いつの間にかSNSの集客ナレッジになったり、人脈作りになったりしている。趣味であって趣味ではないような感じです。

――読者へのメッセージをお願いします。

「人生は一度きり」。使い古された言葉かもしれませんが、私はこの言葉を「今、この瞬間のアイディアと出会いを大切にする」という意味で捉えています。

伝統的なものと新しいテクノロジーを結びつけることで、世界はもっと面白くなるはずです。自分の目の輝きを取り戻したい、あるいは誰かの目を輝かせたい。そんな想いを持つ皆さんと、伝統と革新の掛け算でより良い社会を、希望が持てる未来を作っていければと願っています。

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