社会と企業をつなぐ広報を実践する──EAT UNIQUE・小野茜が考えるPRの役割
株式会社EAT UNIQUE 代表取締役 小野 茜氏
企業や自治体、団体などの広報支援を、組織の外側から担う株式会社EAT UNIQUE。広報活動を単なる情報発信ではなく、社会と組織をつなぐ「パブリックリレーションズ」として捉え、広報の本質と向き合い続けてきました。また、オンラインスクール「ひとり広報アカデミー」を通じて、広報人材の育成にも注力し、働き方や人材育成に向き合う取り組みを進めています。本記事では、代表の小野茜氏に、事業の考え方やこれまでの歩み、組織づくりで大切にしていること、そしてこれから目指す未来について伺いました。
目次
企業や地域に寄り添う、外部広報という立ち位置
━━ まずは、御社の事業内容について教えてください。
私は現在、いわゆるPR会社として事業活動をしています。企業さんや自治体さん、団体さんなどを対象に、広報支援を「企業の外側」から行うことを事業の中心に据えています。
単に情報を発信するだけではなく、本質的なPRとして、組織が社会とどう関係を築いていくのかを一緒に考え、設計し、実行していく役を担っています。そのため、単発的な支援というよりも、中長期的な視点で関わらせていただくケースが比較的多いです。
━━ 事業を進める中での強みや特徴は、どのような点にあると感じていますか。
特定の業種業態に絞っているわけではありませんが、これまでのキャリアの中で、「食」領域やサービス業に近い業界に身を置いてきた背景があります。そのため、そうした分野は得意領域の一つです。。
また、2018年から2020年までの約3年間は、東京と宮崎の二拠点で生活と仕事をするスタイルを経験しました。地方の現場で感じた課題と、首都圏で戦略的に広報を行う現場の両方を見てきた経験は、今の仕事にも活きていると感じています。
地方に根ざした広報のあり方と、東京を中心とした情報発信、その両面を理解した上で支援できる点は、私自身の一つの強みだと思っています。
━━ 教育事業にも力を入れていると伺いました。
はい。現在は、キャリアや働き方という観点から教育分野にも力を入れています。2023年の春に開校した「ひとり広報アカデミー」というオンラインスクールでは、これまでに累計で320名以上の生徒が入学しています。
このアカデミーでは、講師は私一人しかおりませんが、基本となるカリキュラムの作成はもちろん、毎月行うオンラインセミナーの企画実施、課題の添削やフィードバックを含め、スキルアップや広報キャリアの開拓を見据え、卒業までのサポートとその後のOJT教育にいたるまで、すべて責任を持って行っています。
広報の仕事は、企業規模や事業内容、BtoBかBtoCかといった条件によって、求められる役割が大きく異なります。同じ「広報」という肩書きでも、見えている世界はまったく違う。だからこそ、広報の基礎を体系的に学べる場が日本にはまだ少ないと感じ、このアカデミーをパートナー事業者とともに立ち上げました。
単なるノウハウではなく、広報としての考え方や姿勢を含めて伝えることが、EAT UNIQUEならではの特徴だと思っています。
流れの中で選び取ってきた、私自身のキャリア
━━ 株式会社EAT UNIQUEを立ち上げようと思ったきっかけを教えてください。
正直に言うと、会社を作ろうと思ったのは、ほぼ「なりゆき」に近かったです。前職を退職する際、私はアライアンスの仕事にも関わっていたので、社内外のさまざまな企業さんにご挨拶に伺いました。そのときに「次はどこに転職するの?」と聞かれることが多かったのですが、私は転職先を決めずに辞めようと思っていたので、「辞めてから考えます」と答えていました。
そうしたらありがたいことに、「次が決まるまで、ちょっと手伝ってほしい」と声をかけていただいて、結果的に退職のタイミングで3社ほどのお手伝いをすることになりました。その結果、転職活動をすることなく、その延長線上で仕事を続けてきた先に、今のスタイルがあります。退職して半年ほど経った頃に、「この形で仕事を続けていくのもいいのかな」と思い、法人化しました。
━━ これまでプレイヤーとして活動されてきた中で、今後の目標や変化はありますか。
これまでは、私自身が一社一社に向き合ってきました。ただ、アカデミーの生徒さんが増えてきたことで、少しずつ考え方が変わってきています。
今後は、私自身が最前線で広報を担うこともありますが、私以外の広報パーソンたちに任せることも必要だと感じています。彼女たちが現場で力を発揮できるよう、後ろ盾として関わる。その先に、本当の意味での「経営者」としての役割があるのではないかと、ここ数ヶ月で強く思うようになりました。
━━ アカデミーを通じて、どのような広報人材を育てていきたいと考えていますか。
今までは、個人事業主の延長線上でやってきた感覚が正直ありました。でもこれからは、次の時代で活躍できる広報パーソンを生み出すことで、日本の企業をもっと力強く支えたいと考えています。
アカデミーでは、先に卒業したメンバーが実務経験を積み、次は後輩を教える立場になる、そんな循環も生まれ始めています。全国、そして一部海外から参加してくださる生徒さんの多くは、「自分の地元や故郷を盛り上げたい」という強い思いを持っています。
そのため、メンバー一人ひとりが主体的に広報を推進できる人材になれるよう、全力でバックアップしたいと考えています。とはいえ一人でできることには限りがありますので、自立した広報パーソンがしなやかに繋がり、違いに助け合えるような体制やチーム作りにチャレンジしたいと考えています。工夫次第で、そのネットワークは作れる。その可能性を、今はとても感じています。
無理のない働き方と、成長の余白をつくる組織運営
━━ 現在の組織体制や、関わっているメンバーについて教えてください。
弊社には正社員はいません。業務委託という形で関わってくれているメンバーが中心で、コアメンバーとしては10名前後です。
バックボーンや社会人経験の年数、ライフスタイルは人それぞれですが、各々の強みを活かしながら、チームとして動いています。
━━ メンバーとの関係づくりで大切にしていることは何ですか。
私が最も大事にしているのは、働き方に無理がないことです。メンバーは女性ばかりで、子育て中の人も多いので、仕事と生活が対立するものにならないように意識しています。
「生活があって仕事がある」という前提で、どちらもバランスよく成り立つ状態をつくること。そのために、まずは無理なく続けられる働き方を優先するという考え方を大切にしています。
━━ 成長やモチベーションにつながる工夫はされていますか。
メンバー一人ひとりの今のスキルや経験を見ながら、「得意なことを活かす」と同時に、「少し背伸びをするチャレンジ」も意識的に任せるようにしています。できることだけをやっていると、どうしても成長に歯止めがかかりやすい。だからこそ、まだ経験がない領域でも、きっとできると感じたことは挑戦してもらうようにしています。
私は、人生の中で一番大切な資源は「時間」だと思っています。できるだけ早く成長して、できることを増やして、楽しくたくさん効率良く働ける状態になってほしい。そのために、挑戦の機会を意識的につくることを心がけています。
ローカルと人材に向き合い、PRの力を活かした支援を考える
━━ 今後、特に力を入れて取り組んでいきたい挑戦はありますか。
アカデミーを通じて仲間が増えてきた今、私はもう少しローカル=地域にフォーカスして、広報・PRの力でできることがないかと強く思っています。地方創生という言葉でまとめてしまうとありきたりに聞こえるかもしれませんが、日本の各地域には、まだ顕在化されていない魅力や力強さが本当にたくさんあると感じています。
情報発信や広報PR活動を通じて、地域の産業やビジネスが持続的に発展していく。そのお手伝いを、メンバーと一緒にできたらいいなと思っています。
━━ 人材という視点では、どのような社会課題に向き合っていますか。
日本は労働人口が減っていると言われていますが、実際には「働きたいのに働けていない人」や、「スキルをうまく仕事につなげられていない人」がまだまだたくさんいると思っています。特に女性の潜在的な労働力は、きちんと磨き、顕在化できれば大きな力になるはずです。
子育てを通じて培われた力は、ビジネスに活かせるものばかりなのに、それを仕事に変換する場やチャンスが、まだ十分に用意されていないと感じています。
━━ 現在感じている課題と、その解決に向けた取り組みについて教えてください。
一人ひとりに丁寧に向き合うことはとても大切ですが、それだけでは私が支援できる人数に限界があります。だからこそ、仕組み化や効率化が必要だと感じていて、今まさにその部分に向き合っているところです。
子どもが家にいるからミーティングに参加できないと、必要以上に申し訳なく感じてしまう人もいますが、本来は何も悪いことではありません。そうした無意識の制限を取り払い、子どもがいても自由に働いていいというマインドやルールを整えていくことに、これからしっかり向き合っていきたいと考えています。
自分を整える時間が、仕事の質をつくっていく
━━ お忙しい日々だと思いますが、リフレッシュ方法や趣味はありますか。
趣味らしい趣味と言われると、正直そこまで多くはないのですが、食べることとゴルフは好きですね。ゴルフは、忙しい時期だと月に1回行けるかどうかという感じですが、本当はもう少し、月に2〜3回くらいは行けたらいいなと思っています。
仕事のことを考えずに体を動かす時間は、やっぱり良いリフレッシュになります。
━━ 食べることがお好きとのことですが、特に好きなものはありますか。
一番好きなのはお鮨ですね。パートナーはいますが子どもはいないので、二人の時間は基本的に外食にしています。おいしいものを、気兼ねなく好きなだけ食べる。その時間自体が、私にとっては大切なリセットの時間になっています。
━━ 最後に、メディアを通じて伝えておきたいことがあれば教えてください。
広報の重要性や必要性は、年々確実に高まっていると感じています。一方で、「何から始めればいいかわからない」「本当に意味があるのかわからない」と感じている企業や担当者の方も、まだ多いのではないでしょうか。
私たちは、広報を単なる情報発信ではなく、社会と企業をつなぐ重要な役割として捉えています。その広報を、きちんと支援できる体制が整っているということは、ぜひ知っていただきたいですね。
これからも、広報の力で人や企業、地域が前に進んでいくための支援を続けていきたいと思っています。