犬ではなく飼い主が変わる――信頼を軸に、人と犬の穏やかな暮らしを支える

株式会社犬はともだち 代表 川添 千絵氏

オーストラリア発の犬のしつけ機関「バークバスターズ」の日本総代理店として、飼い主と犬の関係改善を支援しています。犬そのものを訓練するのではなく、飼い主が犬から信頼されるリーダーになるための方法を伝えることが特徴です。体罰やご褒美のおやつに頼らない方法で、これまで4,000頭以上の犬をサポートしてきた川添氏に、一般的な犬のしつけとの違いや、レッスンへのこだわり経営者になったきっかけなどについて伺いました。

飼い主が信頼されるリーダーになることで、犬の行動は変わる

――現在の事業内容について教えてください。

当社は、犬ではなく飼い主さんをトレーニングしている企業です。犬は群れで生活する動物であり、飼い主さんとの家庭が群れに当たります。

犬が自分を群れのなかで一番強い存在だと認識すると、群れを守ろうとして吠えたり、噛んだりすることがあります。問題行動を解消するには、飼い主さんが犬から見て信頼できるリーダーになることが必要です。そのために、飼い主さんをトレーニングしています。

――一般的な犬のしつけとは、どのような点が異なりますか。

当社では、体罰を加えたり、犬を押さえつけたりすることはありません。ご褒美としておやつを使うこともありません。犬同士は、体の動きや声、態度によって意思を伝えます。

当社では、犬同士のコミュニケーションを取り入れ、ボディランゲージ、声の使い方、行動するタイミングを飼い主さんに実践していただきます。

それらが正しくできるようになると、犬は飼い主さんの変化をすぐに感じ取ります。そのうえ、1回のレッスンで変化を見せる犬の割合は、実に9割以上です。

――自宅でレッスンを行う理由を教えてください。

犬にとって家は、外敵が入ってこない安全な場所です。外では緊張して問題行動を見せない犬でも、自宅では普段の姿が表れます。また、飼い主さんと犬が一緒に過ごす時間の多くも家のなかです。犬が自分の縄張りだと思っている場所で、飼い主さんが「私が対処するから大丈夫」と示すことが大切になります。

家のなかで飼い主さんの行動が変わり、犬から信頼できる存在に見えるようになれば、外でも落ち着いてコミュニケーションを取れるようになるものです。そのため、ご自宅でレッスンを行っています。

好きなことを仕事にするため、オーストラリアから日本へ事業を持ち込む

――経営者になったきっかけを教えてください。

私は以前、オーストラリアに住んでおり、日本へ帰国する際、自分が好きなことを仕事にしたいと考えていました。大好きな犬に関わる仕事を検討するなかで、オーストラリアで広く展開していたバークバスターズに注目しました。

現地でトレーニングを受け、その仕組みを日本へ持ってきたことが事業の始まりです。社員として働く場合、自分の考えを組織の中で貫き通すことは難しい場面もあります。自分が大切にしたい方法を貫き、自分の責任で広げていくために、経営する道を選びました。

――経営判断において、大切にしていることは何ですか。

事業を続ける上では、収入と経費を考える必要があります。一方で、数字だけではなく、飼い主さんと犬にとって何が良いのかを常に考えています。双方が幸せになるにはどうすればよいかという視点が、当社の経営の軸です。

問題行動が続くと、近所から苦情を受けたり、家に帰るたびに犬に噛まれたりすることがあります。犬との生活を楽しむどころか、自宅に帰ることさえ苦痛になってしまう飼い主さんも珍しくありません。

飼い主さんがリーダーシップを取れるようになると、犬は吠えたり噛んだりして群れを守る必要がなくなります。犬の表情が穏やかになれば、飼い主さんの生活も変わるものです。人と犬が安心して暮らせる状態をつくることが、当社の目的です。

経験と判断基準を共有し、同じ姿勢で飼い主に向き合う

――現在の組織体制について教えてください。

当社はフランチャイズ形式で事業を運営しています。本部には2人が在籍しており、フランチャイジーは現在3人です。

私はこれまでに得た経験をメンバーへ伝え、全員が同じ知識と判断基準を持った状態で、飼い主さんに向き合えるようにしています。方法だけではなく、飼い主さんにとって何が一番良いかを考えながら仕事をしてもらいたいと伝えています。

――メンバーとのコミュニケーションで意識していることは何ですか。

私が持っている経験を、できる限り共有することを大切にしています。現場では、犬や飼い主さんによって状況が異なるため、方法だけではなく、どのように考えて判断するかも伝える必要があります。

飼い主さんから信頼されることは重要です。同時に、犬からも信頼される存在でなければなりません。人と犬の双方から信頼されることが仕事の基本であり、事業を成長させる土台になると考えています。

年齢や犬種で諦めている飼い主に、別の選択肢を届ける

――現在、事業の課題として感じていることは何ですか。

もっとも大きな課題は、当社の露出が少なく、必要としている飼い主さんに見つけてもらいにくいことです。

一般的な犬のトレーニングでは、犬を褒めたり、ご褒美を与えたりする方法が多く見られます。当社のように、犬の群れの考え方を踏まえ、飼い主さんがリーダーシップを取る方法は、まだ少数です。

現在は忙しさからお問い合わせに十分対応できないこともあります。フランチャイジーを増やし、より多くの地域で、困っている飼い主さんを支援できる体制をつくりたいと考えています。

――今後、挑戦していきたいことを教えてください。

メディアへの露出を増やし、年齢や犬種を理由に諦める必要はないと伝えていきたいです。犬は1歳を過ぎるとトレーニングが難しいと言われることもあります。しかし、当社では高齢の犬や噛む犬にも対応しています。これまでに担当した最高齢の犬は、17歳のトイプードルでした。

犬種や体の大きさだけで、対応できるかどうかが決まるわけではありません。大切なのは、飼い主さんが犬とどのように接するかです。Instagramを含めた情報発信を増やし、方法がわからず、諦めている飼い主さんの目に届く状態をつくっていきたいです。

麹料理とスポーツ観戦で心身を整える

――仕事を離れた時間は、どのようにリフレッシュしていますか。

私は料理が好きで、休みが取れたときにはよく料理をします。犬の健康だけではなく、人間の健康も大切にしたいと考えているため、麹を使った料理を楽しんでいます。

塩麹、しょうゆ麹、しょうが麹、小豆麹などをつくり、肉料理や照り焼きチキン、飲み物に使っています。小麦粉をあまり使わず、米粉でバナナケーキやピザをつくることもあります。

――料理以外に好きなことはありますか。

スポーツ観戦が好きで、特に球技をよく見ます。野球やサッカー、バレーボールなど、幅広く楽しんでいます。料理をしながら、ゆっくりお酒を飲み、試合を見る時間も好きです。

飼い主さんに伝えたいのは、「諦めないでください」ということです。飼い主さんが変われば、犬も必ず変わります。年齢や犬種、これまでの経緯だけで決めつけず、穏やかに暮らすための方法があることを、これからも多くの方へ伝えていきたいです。

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