受注生産で「自分だけの可愛い」を届ける、マイパンダのものづくり
株式会社my panda 代表取締役社長 中村 裕子氏
パンダのように2トーンをコンセプトに、アパレル商品を展開するブランド「my panda」。実店舗を持たず、オンライン販売と全国各地での受注会を組み合わせ、在庫や商品ロスを抑えたものづくりを続けています。今回の取材では、my panda代表の中村氏に、ブランド立ち上げから独立までの歩み、経営判断の軸、挑戦したい企業制服の事業について伺いました。
目次
実店舗を持たず、受注生産で商品ロスを抑える
――現在の事業内容について教えてください。
私は「my panda」というブランドで、パンダのように2トーンをコンセプトに、2色で構成した商品を展開しています。中心となるのはレディースとメンズのアパレルです。
実店舗は持たず、オンラインで販売するほか、半年に一度全国各地へ出向いて受注会を開いています。欲しいと思う方に必要な分だけ届けばいいなという思いから、在庫は少なく、商品ロスもできる限り抑えています。セールをする事も基本的にはありません。
――ブランドを立ち上げたときの思いを教えてください。
身につけているものを褒められたり、それをきっかけに会話が生まれるのは、嬉しいことだと思います。ただ洋服を着るだけではなく、着た人が明るく前向きな気持ちになれるもの、その洋服からコミュニケーションがうまれたらと思い、ブランドを始めました。パンダのように人々から愛される存在になりたいです。そんな思いから一度聞いたら忘れないブランド名“マイパンダ”と名付けました。
ブランド立ち上げ当初は2トーンという特徴に絞っていましたが、最近では私が描いたパンダの絵をテキスタイルにして、洋服へ取り入れることも増えています。
店舗経営の失敗を経て、自分の思いに立ち返る
――ブランドを立ち上げたきっかけを教えてください。
私は、社長や経営者になりたいと思ったことは1度もありません。ただ、自分のブランドを持つことは昔からの夢でした。もともとは企業に勤めていた会社員で、担当していたのはネクタイブランドのデザインです。
会社員時代にパルコの企画へ応募し、クラウドファンディングを活用してブランドを立ち上げました。100人から1口3万円、合計300万円を集めることがスタートの条件でした。目標を達成した後、勤務先の事業部としてブランドを始めました。
――ブランドの立ち上げ当初は、どのような状況でしたか。
ブランドを立ち上げと同時に、渋谷パルコと池袋パルコに店舗を出しました。良い場所に出店させていただきましたが、結果としては大失敗でした。サイズ毎に在庫を持ち、毎月新商品を販売し、時期が来ればセールをするというアパレルの流れに、うまく対応できなかったのです。
状況が悪くなるにつれて、チーム内からさまざまな意見が出るようになりました。その結果、最初に思い描いていたブランドの姿が、次第にぼやけていきました。
――経営者になった経緯を教えてください。
店舗を閉め、ブランドを譲渡してもらい、自分で企業を立ち上げました。どうせ駄目になるのであれば、自分が思うように取り組んで終わらせようという覚悟でした。
経営者になることを目指して始めたわけではありません。ブランドを続けるために選択を重ねた結果、自然と経営する立場になりました。
――経営判断では、何を大切にしていますか。
私は、お客様の喜びにつながるかどうかを判断の基準にしています。目先のことに気持ちが揺れる場合もありますが、本当にお客様のためになるのか、喜んでもらえるのかを考えると、答えがはっきりします。
会社を設立してから約5年間は、母と二人三脚で運営していました。母は税理士で、私のことをよく理解し、相談相手になってくれていました。現在、母は他界していますが、何かを判断するときには、母に恥ずかしくない選択をしたいと考えています。
1人で運営するからこそ、異なる強みを持つ人を大切にする
――現在は、どのような体制で事業を運営していますか。
現在は、基本的に私1人で運営しています。販売の時期には、アルバイトの方が5人ほど手伝ってくれていますが、常時社員がいる組織ではありません。
お客様のほとんどは個人の方です。受注会を開くたびに、私が「パンダ会員」と呼んでいるメルマガ会員の方が少しずつ増えています。そのつながりを大切にしながら販売を続けています。
――今後、一緒に働く人には何を求めますか。
不得意な部分を補ってくれるような、私とは正反対の人がよいと思っています。私は絵を描くことやデザインすることを心から楽しめます。一方で、数字やお金の管理は正直得意ではありません。
長く事業を続けてきたため、ブランドに関する数字はある程度わかるようになりましたが、10年以上経営している今でも、負担を感じやすい部分です。そのため、私にできないことができる人には大変魅力を感じます。
ネクタイと洋服の経験を活かし、企業制服へ挑戦する
――今後、挑戦したいことを教えてください。
ネクタイブランドで培った経験と、現在の洋服づくりをかけ合わせ、企業の制服を手がけたいと考えています。ネクタイの仕事では、約20年間で数千単位のデザインを手がけてきました。京都でオリジナルの生地を織り、生地からオリジナルをつくれることも私の強みです。
これまでにも、ミュージアムの制服など、依頼を受けて個別に制作した経験があります。ただ、制服事業として本格的に展開したことはありません。
my pandaの洋服によってお客様の気分が明るくなるように、制服を通じて、その企業で働く人の気持ちも明るく前向きにしたいと思っています。ネクタイと洋服の両方を経験してきた私だからこそできる仕事として、今後は形にしていきたいです。
――現在、課題に感じていることは何ですか。
クリエイティブと経営のバランスです。ワクワクするものや楽しいものをつくる気持ちを大切にしながら、同時に数字も見なければなりません。両方を私1人で担うことに何年やっていても難しさを感じています。
営業についても、私から積極的に連絡するところまでは手が回っていません。現在は、お問い合わせをいただいた方とお話をして、考えが合いそうであれば卸先として取引を始めさせていただいている状況です。
ワクワクする気持ちと人との縁を仕事の軸にする
――仕事をする上で、譲れないことはありますか。
私は、自分がワクワクしていないことはできません。自分が楽しい気持ちでつくったものは、その感覚がお客様にも伝わると思っています。商品をつくるときも、誰かと仕事をするときも、自分がワクワクできる環境を整えるように心がけています。
私は、経営や洋服について専門的に学んだ経験がありません。それでも事業を続けてこられたのは、人とのご縁があったからです。いただいたご縁に1つずつ誠意を持って応えてきました。その積み重ねが、現在の仕事につながっています。
――どのようにリフレッシュしていますか。
私は温泉が好きで、よく出かけます。自然の多い場所へ旅行してリフレッシュをしています。
美術館などは、どうしても仕事の感覚になってしまい、かえって疲れるため、あまり行きません。自然に触れたり温泉に入ったりする時間が、仕事から気持ちを切り替える機会になっています。
これからも、自分がワクワクする気持ちと人とのご縁を大切にしながら、お客様や働く人の気持ちが明るくなるものを形にしていきたいです。