中堅・中小企業の人材育成を成長力へ――SAIKISSが目指す、自由に働ける組織づくり
株式会社SAIKISS 代表取締役CEO/デジタルハリウッド大学名誉教授 渡辺 パコ氏
株式会社SAIKISSは、中堅企業を中心に、人材育成と組織開発を支援している企業です。若手社員からリーダー、課長クラスまでを対象に、一人から参加できる学びの機会を提供しています。本記事では、代表の渡辺パコ氏に、事業の特徴や経営観、今後の展望などについて伺いました。
中堅・中小企業に人材育成の仕組みを
――現在の事業内容や特徴について教えてください。
当社では、人材育成と組織開発を中心に、若手社員から課長クラスまでの成長を支援しています。特に重視しているのは、中堅・中小企業が自社で人を育てる力を高めることです。
従来の企業研修は、10名~30名ほどを集め、1日から2日かけて実施する形式が中心でした。この形式は、大手企業では成立しても、中堅・中小企業では人数を集めにくく、1名当たりの費用も高くなってしまいます。さらに、社員を終日研修に出せば、現場が回らなくなる場合もあるでしょう。
その結果、育成をOJTに頼る中堅・中小企業が多く、大手企業とのあいだに差が生まれていました。そこで当社では、1社で大人数をそろえなくても、1名から参加できる学校形式の学びを提供しています。
――この事業で、どのようなことを目指していますか。
私たちが目指しているのは、中堅・中小企業でも人材が育ち続ける仕組みをつくることです。
会社が人材を育て、社員は成長を実感しながら働く――本来はこの循環があるべきですが、中小企業では、人材育成に十分な時間や環境を確保できないケースが少なくありません。
だからこそ、私たちは人が育つ仕組みを提供し、社員の成長が企業の成長につながる状態を実現したいと考えています。それが、日本の雇用を支える中小企業を元気にすることにもつながると信じています。
個人の仕事から、組織として育てる事業へ
――経営の道に進まれた経緯を教えてください。
もともとは広告業界で、人材採用に関する広告制作に携わっていました。そして独立後は、自分で会社を立ち上げ、事業の軸を採用支援から研修や人材育成へと広げていきました。
長年、フリーランスに近いスタイルで活動してきましたが、約10年前、「個人で仕事をするだけではなく、組織として事業を育てたい」と考えるようになったんです。
そこで、考え方に共感してくれるメンバーを募り、約1年かけて議論を重ねました。目指す方向性を共有できた仲間とともに現在の株式会社SAIKISSを設立し、組織として人材育成に取り組んでいます。
――経営判断で大切にしていることは何でしょうか。
最初に考えるのは、「何のためにこの事業をしているのか」という点です。人材育成は、単に多く売って利益を上げればよい仕事ではありません。教育に関わる、公益性の高い事業だと捉えています。
企業の成長に役立つのか、そこで働く人の幸せにつながるのか――その両方を実現できるかが判断基準です。
一方で、経営を暗く苦しいものにしないことも意識しています。大変な状況でも面白さや楽しさを失わず、仲間との会話に笑いや新しい話題が生まれる状態を大切にしています。
知恵と提案が生まれる組織をつくる
――組織運営で意識していることを教えてください。
現在は、私を含めた取締役4名と、マーケティングを担当する業務委託1名を中心に事業を進めています。
組織運営で最も大切にしているのは、メンバー全員が同じ方向を向いて仕事ができることです。そのため、何を目指しているのか、どんな課題があるのかを日頃から共有しています。
また、一人ひとりの知識や経験を生かしながら、立場に関係なく意見やアイデアを出せる環境をつくることを大切にしており、仕事の話だけでなく、業界の動きや気になった話題についても意見を交わし、互いの考えを理解する機会をつくるようにしています。
業務委託の方にも、単に作業だけをお願いすることはありません。集客やマーケティングという目的を共有したうえで、「どのようにすればもっとよくなるか」を一緒に考えてもらっています。
――一緒に働きたいのはどのような人ですか。
専門性を持ちながら、自分の領域を広い視点で捉えられる人です。専門知識だけでなく、テーマを自分なりに解釈し、周辺分野まで広げて考えられるかを大切にしています。
広告の担当であっても、広告だけに閉じず、事業全体に関心を持っていただけるのが理想です。自分の役割を起点に、新しい提案へつなげられる人と働きたいですね。
事業を軌道に乗せ、その先へ
――現在の課題と今後の展望を教えてください。
現在の課題は、リカレント教育サービスの集客です。SNS広告やMeta広告を活用し、対象となる方に価値が伝わる表現を検証していますが、正解がすぐに見つかるものではないため、内容や伝え方を変えながら改善を続けています。
そして今後は、現在の事業を軌道に乗せることに加え、コミュニティづくりにも取り組みたいです。
私は20年以上前、インターネットの初期にネットコミュニティを運営していました。当時の経験から、人が安心して参加し、対話できる良質な場の可能性を知っています。
現在は、SNS上の対立や炎上が目立つ時代になりました。だからこそ、人と人とが健全につながれるコミュニティを、もう一度形にしたいと思っています。
自由に働き、人が変化できる社会へ
――経営において譲れない想いは何ですか。
私が最も大切にしているのは、「誰もが自由に働き、自分らしく成長できる社会をつくること」です。
仕事は、誰かに強制されて続けるものではなく、自分の意思で選び、やりがいや成長を感じられるものであるべきだと考えています。「自分でこの仕事を選んでいる」と実感できてこそ、困難を乗り越える力や自己実現につながると思うんです。
もともと哲学を学んできたこともあり、「自由」や「幸福」という考え方を大切にしてきました。その価値観を理念だけで終わらせるのではなく、人材育成という事業を通じて社会の中で実現していきたいというのが、私の経営における譲れない想いです。
――最後に、読者へのメッセージをお願いします。
中堅・中小企業では、人材育成が経営課題として十分に位置づけられていないケースが少なくありません。しかし、企業の成長を支えているのは、売上や利益ではなく、それを生み出す「人」です。
社員には、環境や機会によって大きく成長する可能性があります。これまで十分に力を発揮できていなかった人材が、組織を支える中核へと変わることも決して珍しくありません。
人材への投資を経営戦略の一つとして捉え、一人ひとりが成長できる環境を整えることが、企業の持続的な成長につながると考えています。これからも人材育成を通じて企業の成長を支え、働く人が能力を発揮できる組織づくりに貢献していきたいです。