AI時代の情報資産に新たな価値を――若き経営者が挑むAI検索と情報流通の未来
株式会社トリリオンバンク 代表取締役社長 井上 幹太氏
株式会社トリリオンバンクは、AI検索における企業情報の見え方を可視化・分析する「HackⅡ」を実用プロダクトとして展開しながら、AIによるコンテンツ利用の管理やアクセス制御を行う「Adctor」の研究開発・PoCに取り組む企業です。HackⅡではAI検索における言及・引用・推薦状況を把握し、AdctorではAIクローラーによる情報利用を適切に管理する仕組みの構築を目指しています。本記事では、代表取締役社長の井上幹太氏に、事業に込めた思いや経営者になった背景、組織づくり、今後の展望について伺いました。
AI時代の情報に、適切な価値をつける
――現在の事業内容について教えてください。
当社は、AI検索の最適化と、AIによるコンテンツ利用の管理・アクセス制御に関する領域を中心に事業を展開しています。
現在、実用プロダクトとして展開しているのが「HackⅡ」です。AI検索において自社がどのように言及・引用・推薦されているのかを可視化し、その結果をもとに改善につなげるための仕組みを提供しています。
一方、「Adctor」は研究開発・PoCの段階にあります。AIクローラーによるWebサイトへのアクセスやコンテンツ利用を適切に管理し、価値のある情報が利用された際に、その提供者へ適切な対価が還元される仕組みの実現を目指しています。
AIが情報を取得するとき、インターネット上にあるすべての情報を同じように扱えばよいわけではありません。AIによる利用を認めるべきではない情報、有益ではない情報、広く公開してよい情報、そして公開してよいものの中でも高い価値を持つ情報があります。
AIによる利用を認めるべきではない情報は、アクセス制御によって守る。一方で、広く公開してよい情報はマーケティングによって届ける。その中間にある「公開はできるが、高い価値を持つ情報」に対して、正当な対価を受け取れる仕組みが必要だと考えています。
――企業理念には、どのような思いが込められていますか。
根本にあるのは、大きな数字を追いたいという思いです。道路を通る車や街を歩く人の数も大きな数字ですが、現在、AIのクローラーが流通する量は、それをはるかに上回る規模になっています。
その膨大な情報通信の中には、経済的な価値や社会への大きな影響が生まれる可能性があります。だからこそ、情報を整理し、人にとって分かりやすく、質の高い形で届けるためのインフラをつくりたいと考えました。
AIを排除するのではなく、AIから質の高い情報を届けるために、必要なフィルターを設ける。その上で、価値のある情報には適切な対価が支払われるネットワークを構築していくことが、当社の目指す方向です。
14歳で経営の道へ――自立への決意
――経営者になられた経緯を教えてください。
現在の会社は、私にとって4社目です。最初の会社では、Google検索で上位表示を目指すSEO事業を手掛けていました。
起業のきっかけは、不登校を経験し、自分の力で稼いで自立したいと考えたことです。当時は14歳で雇用されることが難しかったため、事業を設立し、15歳以降に本格的な収益を獲得するようになった。現在も学生として、自立への思いを持ちながら事業に取り組んでいます。
――前に進み続けられる原動力は何でしょうか。
負けず嫌いな性格が大きいと思います。私は基本的に上を見るタイプなので、上を見れば見るほど、自分が負けているように感じます。
ただ、ネガティブになるというよりは、負けているなら追いつきたい、後手に回るより攻めに回りたいと考えます。業界には上限がなく、上を見れば際限がありません。それでも挑戦を続けることが、自分の性格に合っているのだと思います。
関わる全員が利益を得られる仕組みを
――経営判断で大切にしている軸を教えてください。
一言で表すなら、お金です。ただし、自社だけが利益を得ればよいという意味ではありません。買い手、売り手、仲介する会社、そこで働く従業員など、関わる人全員が利益を得られる仕組みをつくることを大切にしています。
複数の会社で連携する場合も、自社はもちろん、他社にもきちんと売上が立つ仕組みでなければ、長く続く事業にはならないと思っています。そのため、新しい事業を考える際は、最初に収益化の仕組みを考えます。
関係者全員に利益が生まれる構造をつくれないのであれば、基本的には取り組まないという判断になります。
――社内のコミュニケーションで意識していることはありますか。
「無礼であれ」という考え方を大切にしています。もちろん、相手へのリスペクトや礼儀は必要です。ただ、年齢や立場を気にし過ぎて、言うべきことを言えなくなる組織にはしたくありません。
当社のメンバーは私より年上の方が多いため、年齢だけを見れば、私から意見を伝えること自体が無礼に見えるかもしれません。一方で、メンバーが社長である私に対して率直に意見を伝える場面もあります。
だからこそ、お互いに無礼を承知で、必要なことは伝える。ただし、筋を通し、礼儀を理解した上で発言することが重要です。
前例のない技術を、自らの手でつくる
――今後、挑戦していきたいことを教えてください。
現在は、実用プロダクトであるHackⅡをさらに発展させながら、Adctorの研究開発・PoCにも取り組んでいます。Adctorでは、AIによるWebサイトへのアクセスやコンテンツ利用を管理し、価値ある情報の利用に対して適切な対価が還元される仕組みの実現を目指しています。
「Pay Per Crawl(ペイ・パー・クロール)」のように、AIが情報を取得する際、その価値に応じた対価が支払われる仕組みもその一つです。国内では先行事例が少ないため、自分たちで試行錯誤しながら研究開発を進めています。AI技術の変化に対応し、スピード感を持って仕組みを進化させていきたいと考えています。
――現在、向き合っている課題は何でしょうか。
大きな課題は、エンジニア不足です。世界にない技術をつくろうとしているため、その挑戦に関心を持ち、ともに開発を進めてくれるエンジニアと出会いたいと考えています。
「最年少」にこだわり、挑戦を続ける
――経営において、譲れない思いはありますか。
私は「最年少」という肩書が好きです。若いうちから急いで動いていると、「生き急いでも仕方がない」と言われることもあります。
ただ、私にとっては急ぐこと自体が好きなことです。好きなことに対して口を出さないでほしい、という感覚に近いかもしれません。できる限り、「最年少」という肩書は誰にも譲りたくないと思っています。
――休日や空いた時間は、どのように過ごしていますか。
昼間は働き、夜は大学で学んでいます。大学には2つ通っており、夜や土日を使って学業に取り組んでいます。
深夜などの空いた時間には、大相撲を見ています。現在は本場所のアーカイブを見ながら、どの力士が勝ったのか、横綱がどうだったのかを楽しむことが、息抜きになっています。
――これから挑戦する若い方へ、メッセージをお願いします。
私は不登校を経験し、将来をネガティブに見られることもありました。不登校だから将来に期待できないと思われることもあるかもしれません。
それでも、諦めずに挑戦してほしいと思います。できるかどうか分からないことでも、まず「やる」と決めて、できるところまで努力すれば、意外と実現できることがあります。
学生だからできないと決めつける必要はありません。できないことにも挑戦し、できるところまで進んでみてください。若い人たちの未来は、きっと明るいと思います。