個室空間だからこそ、広告は深く届く――デジレップがつくる「効果の見える」オフライン広告
デジレップ株式会社 代表取締役社長 湯本 達也氏
デジレップ株式会社は、飲食店のトイレ個室に設置したモニターを活用するサイネージ広告事業を展開しています。周囲の視線を気にせず広告を見られる環境と、赤外線センサーやQRコードを用いて広告効果を測定できる仕組みが特徴です。
飲食店に新たな収益源を提供しながら、広告主には費用対効果の見える広告媒体を届ける同社。代表取締役社長の湯本達也氏に、事業を立ち上げた背景や経営で大切にしている考え方、今後の展望について伺いました。
目次
1対1で情報を届けられる、トイレ個室のサイネージ広告
――現在の事業内容と、サービスの強みを教えてください。
当社では、主に飲食店のトイレ個室にモニターを設置し、動画広告を配信しています。
最大の特徴は、広告と利用者が1対1になる環境をつくれることです。駅や街中の広告とは異なり、周囲に人がいない個室空間で情報を届けられるため、広告の内容を落ち着いて見てもらえます。
飲食店には繰り返し来店するお客様も多いため、同じターゲットに何度も接触できる点も評価されています。店舗のエリアや客層を分析し、広告主が届けたい相手に合わせて配信先を選定することも可能です。
――オフライン広告でありながら、効果測定もできるそうですね。
モニターには赤外線センサーが付いており、個室に人が入ると広告が再生されます。その再生回数を視聴数として記録しています。
さらに、当社が発行する追跡可能なQRコードを広告内に表示することで、QRコードが読み取られた割合や、その後の申し込み・購入につながった割合も確認できます。
オフライン広告は、広告を見た人数や成果が分かりにくいといわれます。当社のサービスでは、視聴数とQRコードの読み取り結果をレポートとして提出できるため、広告主に費用対効果を示せることが強みです。
飲食店と広告主、双方の課題を解決する事業へ
――この事業を始めた背景には、どのような思いがあったのでしょうか。
もともとは、飲食店に本業以外の収益源を提供できないかと考えたことが始まりです。
飲食店は、新型コロナウイルスの影響だけでなく、仕入れ価格や人件費の上昇など、厳しい経営環境に置かれています。飲食による売上だけに頼るのではなく、店舗にある空間を活用して副収入を得られる仕組みをつくれないかと考えました。
一方で、広告主側にも課題があります。特にオフライン広告では、毎年予算を確保しているという理由だけで出稿を続け、実際の成果を十分に確認できていないケースがあります。
経営者にとって、費用を投じることは投資です。投資である以上、何らかの成果やリターンが必要だと考えています。飲食店には新しい収益源を、広告主には効果を確認できる広告媒体を提供する。この二つを結び付けたのが現在の事業です。
20店舗以上で検証し、見つけた「個室」という答え
――トイレ個室に着目したのは、なぜですか。
最初からトイレに絞っていたわけではありません。知り合いの飲食店など20~30店舗ほどに協力していただき、モニターをレジ付近、テーブル、喫煙所、トイレ個室に設置して、約2カ月間の検証を行いました。
それぞれの画面にQRコードを表示して反応を調べたところ、最も読み取られる割合が高かったのがトイレ個室でした。
アンケートでは、周囲に人がいる場所でQRコードを読み取ることに抵抗を感じるという回答も多く寄せられました。興味のある広告であっても、他人の視線があると行動に移しにくい人がいることが分かったのです。
トイレ個室であれば、周囲を気にせず自分の興味に従って行動できます。特に、身体や生活上の悩みを解決する商品・サービスの広告とは相性が良く、実際のデータからも広告媒体としての価値を確認できました。
広告への関心と経営者の声から生まれた起業
――起業する以前は、どのような仕事をされていたのでしょうか。
以前は採用コンサルティングの仕事をしていました。ただ、広告やマーケティングには大学生の頃から関心があり、大学3年生のときにはサイバーエージェントでインターンを経験しています。
広告には、オンライン広告や屋外広告、イベントへの出展など、さまざまな形があります。それぞれ目的が異なる一方で、表示回数や閲覧数だけが成果として報告され、商品購入やサービス利用に結び付いていないこともあります。
経営者の知人から話を聞く中でも、「広告を出しているが、経営上の成果につながっているのか分からない」という声がありました。
そこで、オフライン広告でありながら効果を測定でき、経営者が投資先として判断しやすい媒体をつくれば、新しい市場を開拓できると考えました。
方向性は自分で決め、必要な力は周囲から借りる
――経営判断をするうえで、大切にしている考え方を教えてください。
判断に迷ったときは、面白そうか、心が動くかを考えます。そのうえで、必要な投資はできるだけ惜しまないようにしています。
もう一つ大切にしているのが、周囲の力を積極的に借りることです。会社の進む方向は自分で決めますが、そこに必要な知識や技術を自分一人ですべて持つ必要はないと思っています。
得意な仕事を任せ、互いに無理のない関係をつくる
――組織づくりでは、どのようなことを意識していますか。
現在は、10人ほどの業務委託メンバーと事業を運営しています。営業、事務、制作、管理など、それぞれが得意とする分野を担当しています。
働く時間を細かく指定するのではなく、「何を、いつまでに完成させてほしいか」を伝える形が基本です。期限と品質を守ってもらえれば、仕事を進める時間や方法は各自に任せています。
二つの広告媒体を、新たな成長の柱へ
――今後、力を入れていきたい取り組みを教えてください。
これまでは飲食店のトイレ個室を中心に展開してきましたが、新たにコインランドリーのモニターを活用した広告媒体の準備も進めています。
トイレ個室の広告は、1対1の環境で特定のターゲットに深く情報を届ける「量より質」の媒体です。一方、コインランドリーは利用者の滞在時間が長く、同じ方が継続的に訪れるため、より多くの接触機会を生み出せます。
広告の目的によって、この二つの媒体を使い分けられることが、今後の当社の強みになると考えています。まずはそれぞれの特徴を生かし、広告主と設置店舗の双方に価値を提供できる仕組みとして軌道に乗せていきたいです。
将来振り返ったときに、後悔しない選択を
――経営を続けるうえで、これだけは譲れないという思いはありますか。
一番大切にしているのは、後悔しないことです。
5年後や10年後に振り返ったとき、「あのとき挑戦しておけばよかった」「もう少し頑張ればよかった」と思いたくありません。
できることを先送りせず、今の自分が納得できるところまで取り組む。投資や新しい挑戦についても、将来後悔しないかという視点で判断しています。
周囲の力を借りながら、新しい機会には積極的に挑戦する。その積み重ねによって、広告主と店舗の双方に新たな価値を届けられる会社にしていきたいと考えています。