できたての食事を、子どもから高齢者まで――FooDearが目指すこれからの給食のあり方
株式会社FooDear 代表取締役 小笠原 淳哉氏
株式会社FooDearは、老人施設や病院、保育園などを対象に、給食コンサルティングを中心とした事業を展開する企業です。コストを抑えることだけでなく、施設の厨房で作った食事を、できたての状態で届けることを重視しています。本記事では、代表の小笠原淳哉氏に、事業の特徴や現在の課題、今後の展望などについて伺いました。
コストを抑えながら、食事の質を守る
――現在の事業内容について教えてください。
当社では、老人施設や病院などを対象に、給食のコストを見直しながら食事の質を維持・向上するためのコンサルティングを行っています。
近年は人件費や食材費が高騰し、給食運営の負担が大きくなっています。そのなかでコストを抑えようとすると、食事の品数や質を落とさざるを得ないケースも少なくありません。
私は以前、給食の委託会社で働いていました。その経験から、委託会社に任せるだけではなく、施設自身が適切に給食を提供できる体制を構築することも一つの選択肢だと考えるようになりました。そこで当社では、施設ごとの運営方法やコストを見直し、食事の質を守りながら継続的に給食を提供できる仕組みづくりを支援しています。
――今後、特に力を入れていきたい事業はありますか。
コンサルティングと並行して、厨房運営受託事業にも力を入れていきたいと考えています。
施設が給食部門を自前で運営する場合、特に課題となるのが人材の採用や管理です。そうした業務を当社が担うことで、施設側の負担を軽減しながら、安定して給食を提供できる体制をつくっていきます。
その際に大切にしたいのは、当社の利益だけを追求しないことです。施設と当社の双方が無理なく継続できる契約を通じて、コストを抑えながら食事の質も守れる運営を目指しています。
――他社との違いや強みはどういった点ありますか。
当社の強みは、コストだけを優先せず、施設の厨房で調理したできたての食事を提供することに重きを置いている点です。
給食業界では、人手不足を背景に、あらかじめ調理された完全調理品を活用するケースが増えています。一方、当社では食事の質を大切にするため、できる限り施設内で調理することを重視しています。
コストと食事の質、その両方を見ながら給食運営を改善していくことが、当社ならではの役割だと考えています。
給食業界への違和感が、起業のきっかけに
――経営の道に進まれた経緯を教えてください。
もともと子どものころから、「会社員だから安定している」といった考えは持っていませんでした。父が勤めていた銀行が破綻し、それをきっかけに本州から札幌へ引っ越した経験があったからです。
その後、結婚を機に給食の委託会社へ入社し、約12年間勤務しました。スーパーバイザーとして施設との交渉などを担当するなかで、給食業界が抱える課題を実感するようになりました。
――そこから起業を決めたきっかけは何だったのでしょうか。
大きなきっかけは、利益が出ているにもかかわらず、食事の質を下げなければならない状況に疑問を感じたことです。
施設との値上げ交渉の際、「これ以上の値上げは厳しいので、品数を減らしてでも現在の契約金額を維持してほしい」と相談されたことがありました。しかし、その施設との契約では十分な利益が出ていたんです。
利益を追求することは企業として必要ですが、そのために食事の質が下がっていくことには違和感がありました。そんなとき、家族から「それなら自分でやってみてもいいのではないか」と背中を押してもらい、自分が納得できる給食のあり方を実現するために起業しました。
経営層と現場、双方の納得を得る難しさ
――現在、コンサルティングを進めるうえでの課題は何ですか。
一番の課題は、経営層と現場の双方に納得していただきながら改善を進めることです。
コスト削減は経営層の方には理解していただきやすい一方、現場ではこれまでの運営方法を変える必要があるため、負担が増えると受け取られることもあります。そのため、一方的に変更を求めるのではなく、現場の方と一緒に改善していく姿勢を大切にしています。
実際に、改善によって毎月30万〜50万円ほどコストが下がるケースもあります。こうした効果や改善の目的を現場にも共有し、協力して取り組める関係をつくることが重要だと考えています。
――営業面ではどのような課題がありますか。
給食コストの見直しは、理事長など経営に近い方でなければ、なかなか関心を持っていただきにくいテーマです。そのため、経営層と直接話せる機会をどう増やすかが課題になっています。
現在は知人などからの紹介が中心ですが、今後は会社としての実績を増やしながら、新たなお客様との接点も広げていきたいと考えています。
生まれてから最期のときまで、きちんとした食事を届けたい
――休日はどのようにリフレッシュしていますか。
子どもが2人いるので、休日は家族で遠方へ出かけることがあります。また、料理をすること自体が好きなので、仕事がない日は私が家族の食事を作ることも珍しくありません。
特別なことをしているわけではありませんが、家族との時間を大切にすることが、よい息抜きになっています。
――最後に、経営するうえで譲れない考えを教えてください。
食事は、世代を問わず、身体をつくるために欠かせないものです。だからこそ、生まれてから人生の最期まで、おいしく、きちんとした食事を食べていただけるような支援を提供したいと考えています。
保育園では食育という意味でも食事が大切な役割を果たしますし、高齢者施設では、その一食が人生最期の食事になる可能性もあります。そう考えると、できるだけその場所で作ったものを、できたての状態で届けたいんです。
当社だけが利益を得るのではなく、施設側のお客様、その先で食事をされる利用者の方、そして当社も含め、みんながよりよい状態になることが理想です。これからも給食のコストと質の両方に向き合いながら、お子様からご高齢の方まで、安心しておいしい食事を楽しめる環境づくりを広げていきたいです。