「何のために」を問い続ける――プロジェクトマネジメントで人と産業の成長を支える
特定非営利活動法人日本プロジェクトマネジメント協会 理事長 加藤 亨氏
特定非営利活動法人日本プロジェクトマネジメント協会(PMAJ)は、プロジェクトマネジメントの普及促進に取り組むNPOです。ガイドブックの発行や資格試験制度、プロジェクトマネージャーが交流するPMコミュニティなどを通じ、人材育成と新たな価値創出を後押ししています。今回は理事長の加藤亨氏に、協会の活動や自身が歩んできた道、これから力を入れていきたい取り組みについて伺いました。
目次
「ものづくり」から「仕組みづくり」へ――価値を生み出すマネジメント
――現在の事業内容について、分かりやすく教えてください。
プロジェクトマネジメントとは、簡単に言えば、ある目的を達成するために行うマネジメントです。もともとはプラント建設や情報システムの構築など、計画したものを予定通りにつくり上げるための手法として発展してきました。
当協会では、それを特定の業界だけではなく、さまざまな分野で活用していこうとしています。その考え方を体系化したものが「P2M(プログラム&プロジェクトマネジメント)」です。個別のプロジェクトだけを見るのではなく、複数のプロジェクトをまとめた「プログラム」という視点を持ち、さまざまな利害関係者が協力しながら、新しい価値を生み出していくことを重視しています。
現在の主な活動は、PMコミュニティ、資格試験制度、そしてガイドブックの発行という3つです。ガイドブックは2001年に初版を発行し、その後も改定を重ねています。こうした活動に加えて、イベントや地域コミュニティでの取り組みも行っていますね。
――プロジェクトマネジメントは、どのような分野で活用されているのでしょうか。
もともとはプラントエンジニアリングやシステム開発が中心でしたが、現在は製造業をはじめ、組み込み系システム、研究開発、医薬品、自動車など、さまざまな分野に広がっています。
以前は「いかにQCD(品質・コスト・納期)を維持して完了させるか」という考え方が中心でしたが、最近はそれだけではありません。新しいサービスを企画し、テストや検証を重ね、フィードバックを受けながら価値を高めていく。そうした活動にもプロジェクトやプログラムのマネジメントが活用されるようになっています。
私たちとしては、こうした取り組みを広げることで、日本の生産性だけでなく、価値を生み出す力や国際競争力の向上にも貢献していきたいんです。
人や会社の成長に貢献したい――自然につながった経営への道
――経営の道に進まれたきっかけや背景を教えてください。
もともと管理工学を学んでいて、父が自営業をしていたこともあり、簿記など経営学に関わる分野にも触れていました。その後はエンジニアリング企業に入り、企画部門や利益計画の策定などを担当しています。
2000年からはIT子会社のマネジメントに携わり、そこでお客様の価値をどう高めるかという、コンサルティングファーム的な活動も続けていました。その後、グループ企業のコンサルティング企業の社長を務め、任期を終える頃に日本プロジェクトマネジメント協会の理事長を引き受けないかという話をいただいたんです。正式に理事長へ就任したのは2019年7月でした。
振り返ると、流れに沿って歩いてきたように見えるかもしれません。ただ、自分の中には一貫して「人や会社の成長に貢献したい」という思いがあります。情報会社の役員やコンサルティング企業の社長、そして現在の理事長という立場も、その思いの延長線上にあると感じています。
――現在の組織は、どのような体制なのでしょうか。
当協会はNPOですので、基本的には会員組織です。個人会員が約900名いて、理事が約50名。実際の事務を運営する事務局では、社員や業務委託などを含めて10名ほどの方に働いてもらっています。
AI時代だからこそ「何のためにやるのか」を大切に
――今後、特に力を入れていきたいことを教えてください。
PMAJが目指してきたのは、「ものづくり」から「仕組みづくり」への転換を通じて、日本の産業を活性化させることです。ただ、これはまだ十分に実現できていないと感じています。
最近はビジネスのスピードが上がり、「どうやって早くつくるか」というHow toに意識が向きやすくなっています。さらにAIが発展し、つくりたいものを短時間で形にできるようになるほど、「何のためにこれをやるのか」という部分が置き去りになってしまうのではないかという危機感があるんです。
だからこそ、まず目的や使命を設定し、そのうえで実現方法を考えることが重要だと思っています。プロジェクトマネジメントを通じて、単にものを完成させるだけではなく、その先にどのような価値を生み出すのかを考えられる人材を育てていきたいですね。
――人材育成では、どのような取り組みを考えていますか。
企業には、長年の仕事を通じて豊富な実務知を蓄積してきた方がたくさんいます。その実務知を形式知に変え、社会へ還元していく仕組みをつくりたいと考えています。
その一環として、協会内に博士号取得に関する研究グループを設け、実務経験を持つ方々が知識を体系化し、それを次の世代の育成や社会への貢献につなげていく。そんな循環を生み出していきたいんです。
活動をより多くの人へ――会員拡大と情報発信への挑戦
――現在、協会として向き合っている課題は何でしょうか。
大きな課題は、会員を増やして活動をさらに広げていくことですね。現在は個人会員が約900名、法人会員が約100社ですが、プログラム・プロジェクトマネジメントを日本全体へ普及させていくには、さらに多くの方々に参加していただく必要があります。
そのため、SNSやYouTubeなどを活用した情報発信にも力を入れています。AIを使って4コマ漫画をつくるなど、新しい方法も取り入れながら、どうすれば活動を分かりやすく、より多くの方へ届けられるかを考えているところです。
30年近く続ける卓球と、大人数で歌う爽快感
――最後に、休日のリフレッシュ方法や趣味について教えてください。
一つは卓球ですね。息子が小学校5年生の頃、PTAの卓球部に誘われたことをきっかけに始めて、それ以来30年近く、毎週欠かさず続けています。
もう一つは、大人数で歌うイベントへの参加です。毎年参加していて、大阪城ホールまで歌いに行っています。大勢で一緒に歌い終えた後は、本当に爽快なんですよ。
仕事では人をつなぎ、知識や経験を社会へ還元する仕組みをつくる。そして自分自身も楽しみながら活動を続けていく。これからも「何のためにやるのか」を大切にしながら、人と産業の成長に貢献していきたいですね。