通信・スポーツ留学・事業支援でアメリカに挑戦する日本人を増やす
JPEX America, Inc. CEO 新崎 千裕氏
米国カリフォルニア州で法人を設立し、日本人留学生や駐在員、その家族に向けた携帯電話サービス「アメスマ」を軸に事業を展開している新崎氏。現在は法人向け通信支援に加え、米国進出支援やスポーツ留学、マーケティング、ヘルスケア領域にも活動を広げています。事業の根底にあるのは、アメリカに挑戦できる日本人や日本企業を増やしたいという思いです。事業の現在地から経営者になったきっかけ、組織づくり、今後の挑戦について伺いました。
目次
渡米前から生活を支える通信サービスを事業の軸に
――現在の事業内容について教えてください。
当社は2015年に設立し、2026年で12年目になります。主軸は、日本人の留学生や駐在員のご家族向けに、アメリカで使える携帯電話サービス「アメスマ」を提供する事業です。2018年から日本人のお客様向けに展開しています。
特徴は、日本にいながらアメリカの携帯電話番号を取得できることです。到着直後の配車サービス利用だけでなく、学校や寮などの手続きでも電話番号を求められることは珍しくありません。
そういったシーンに備え、渡米前に番号を持てる状態をつくり、現地での生活を立ち上げやすくしたいと考えています。
――通信以外には、どのような事業を行っていますか。
日系企業のアメリカでの事業展開を、IT・通信、マーケティング、事業開発など幅広い分野で支援しています。また、私自身のアメリカでの起業や事業立ち上げ、企業買収・売却の経験を活かし、現在は複数の日系企業にアドバイザーとして関わっています。
そのほか、スポーツを通じて日本の若者の海外挑戦を支援する「Up Next」を運営し、アメリカの大学へのスポーツ留学をサポートしています。
さらに、日米のヘルスケア・イノベーションをつなぐ「J-THINK(Japan-Texas Healthcare Innovation Network)」を立ち上げ、テキサスと日本の大学、医療機関、企業、スタートアップ、投資家などをつなぐ取り組みも進めています。
――事業を通じて実現したいことは何ですか。
私が一貫して考えているのは、アメリカでチャレンジできる日本人を増やしたいということです。私自身、学生時代の留学をきっかけにアメリカが好きになり、こちらでビジネスをする機会にもつながりました。
ただ、現在は円安やビザの厳格化などにより、日本人がアメリカへ来るハードルは高くなっています。私が考えているのは、日本経済が縮小していくなかでは、海外に出る人材を増やす必要があるということです。
当社でも過去に10人以上にビザを出し、アメリカで働ける機会をつくってきました。社内外を問わず、日本人や日本企業がアメリカで挑戦できる土台をつくることが、私がこちらで事業を営む意義だと思っています。
社内起業をきっかけに踏み出した経営者への道
――経営者になったきっかけを教えてください。
父が中小企業の経営に携わっていたため、その姿を見ながら、私もいつか機会があれば挑戦してもいいのかなと漠然と思っていたのです。ただ、いつまでに起業したいという明確な計画はありませんでした。
転機は、日本で中小企業を経営していた知人から、海外事業の立ち上げを一緒にやらないかと声をかけてもらったことです。既存事業を持つ企業のなかで、社内起業のような形で挑戦できました。裸一貫で始めるよりもリスクを抑えながら事業を立ち上げられたため、私にとっては挑戦しやすい環境だったと思います。
――経営判断で大切にしていることは何ですか。
まず、自分自身が熱中できるものかどうかを大切にしています。10年ほど経験を積むなかで、選択肢ごとの先の展開が以前より見えるようになってきました。
現在は、蓄積してきた経験をもとに、自分のなかにある基準や価値観に照らして判断しています。直感に従う部分もありますが、それも経験のなかで形づくられてきたものだと感じています。
全員リモートでも長く働ける関係をつくる
――現在の組織体制について教えてください。
社員は7人で、業務委託の方を含めると15人ほどに関わっていただいています。従業員は全員リモートワークで、対面する機会はそれほど多くありません。
2021年にビザの関係で退職した方がいましたが、それ以降は離職者がいない状態です。長く安心して働いてもらえる組織を目指して運営しています。
――社員とのコミュニケーションで意識していることはありますか。
業績が良いときには、社員旅行のような形で全員が集まる場をつくっています。社員の家族も参加できるような形式です。
また、私自身が出張する際には、リモートで働くメンバーのところへ行き、直接会って話すようにしています。毎日同じ場所に集まる組織ではない分、組織のしがらみが少なく、気楽に働ける部分もあるのではないかと思っています。
スポーツ留学からヘルスケアまで新たな挑戦を広げる
――今後、力を入れていきたい事業について教えてください。
1つはスポーツ留学です。日本の高校生アスリートのなかには、競技力によってアメリカの大学から奨学金を受けて進学できる人がいます。授業料の免除に加え、生活費や食事の支援が付く場合もあります。
支援の価値が年間1,000万〜1,500万円ほどになるケースもあります。毎年それだけの費用を負担して留学できる人は多くありませんが、奨学金を活用すれば挑戦できる人を増やすことは可能です。
現在はサッカーやゴルフの選手などを支援しています。今は数人ですが、将来的には毎年何十人、何百人と送り出せる事業にしていきたいです。
――ヘルスケア領域では、どのような取り組みを進めていますか。
私はアメリカのベンチャー企業への投資も行っています。現在住んでいるテキサス州では、ヘルスケアの新しいエコシステムができつつある状況です。現地の起業家や大学、政府・自治体の方々と話す機会もあり、テキサスには新しい挑戦を受け入れる土壌があります。
そこで、日本企業や日本の研究者、起業家の方々にテキサスで挑戦してもらうため、「J-THINK(ジャパンテキサスヘルスイノベーションネットワーク)」というコミュニティをつくっています。将来的には企業にスポンサーになってもらったり、イベントの参加料をいただいたりしながら、事業としても展開していきたいです。
家族やスポーツ、異なる仕事との出会いが気分転換に
――普段はどのようにリフレッシュしていますか。
今は家族と過ごす時間が一番のリフレッシュです。また、私はスポーツが好きなので、サッカーやテニスをしたり、体を動かしたりすることも気分転換になります。
仕事では、さまざまな業種の方や、自分とは異なることに取り組む方と会って話す機会が多くあります。異なる刺激が入ることで気分が変わり、「またがんばろう」と思えます。
――今後の展開についてはどのように考えていますか。
米国向けに、マーケティングの支援をさらに形にしていきたいです。事業立ち上げの段階では、展示会への出展や、レストランのオープニングレセプションなどに対するニーズがあります。
当社にもイベントやマーケティングを担う企業に近い機能が少しずつ生まれてきました。今後はブランディングを整え、継続的に仕事を受けられる状態をつくっていきたいです。