プロダクトから空間まで一貫して手がける&A、商品を「売る」ためのデザインを追求
株式会社&A 代表取締役 井谷 育宏氏
&Aは、プロダクトデザインを軸に、パッケージ、Web、動画、展示会ブース、店舗内装まで幅広く手がけています。商品を起点に一貫したクリエイティブを提供できることを強みに、顧客のものづくりに伴走してきました。18期を終え、19期目を迎える井谷氏に、事業の特徴や経営の軸、組織づくり、今後の展望について伺いました。
目次
商品を軸に、プロダクトから空間まで一貫してデザインする
――現在の事業内容について教えてください。
当社は、プロダクトデザインを軸にしたデザイン事務所です。もともとはプロダクトデザインから始まりましたが、お客様からパッケージやWeb、展示会ブースなどの相談をいただき、少しずつ対応領域を広げてきました。
現在は、商品の企画からプロダクト、パッケージ、Web、動画、展示会ブースまで、1社でトータルにデザインできる体制があります。
――&Aならではの強みはどこにありますか。
立体物のデザインに加え、空間まで一貫して対応できることです。メーカーのお客様であれば、商品そのものをデザインした後、その商品を見せる展示会ブースまで一貫して伴走しています。
依頼先が分かれると、その都度説明が必要になり、クリエイティブの軸もずれやすくなるものです。当社が一貫して担うことで、ぶれのないアウトプットを提供できる点が強みだと考えています。
――経営理念には、どのような思いを込めていますか。
「創造力で人々の夢と幸せをカタチに」という考えを大切にしています。私は、デザインは人があってこそのものだという考えです。
お客様だけではなく、一緒に働くスタッフや協力企業など、関わる人たちを当社の創造力で幸せにし、社会に貢献していきたいという思いがあります。社名の「&A」のAは「Answer」のAで、答えとともに存在し、夢に応えるという意味を込めました。
上海での経験から学んだ、デザインだけでは事業は成り立たないということ
――経営者になるまでのキャリアを教えてください。
大阪芸術大学で工業デザインを学び、卒業後はアシックス商事に入社しました。最初の仕事は、スポーツシューズのデザインです。当時から「30歳までに独立すること」が目標でした。
ただ、靴のデザインだけでは独立に向けた経験が足りないと感じ、さまざまな分野で経験を積む道を選んだんです。
その後は化粧品のディスプレイ業界へ移り、大阪や東京で経験を積みながら3Dの技術も身につけ、さらに上海で同じ業界の事業立ち上げに関わることになりました。
――上海での経験は、その後の経営にどのような影響を与えましたか。
上海では仕事の進め方も異なり、人脈がなければ仕事につながりにくいなど、かなり苦労しました。途中で上司が帰国し、私1人が現地に残された時期もあります。
そのときに「デザインだけでは難しい。ビジネスを理解しなければ独立も難しい」と気づきました。マーケティングを学び、広告の出し方などを試したところ、徐々に反応が変わり、事業を軌道に乗せることができたのです。
その経験が自信になり、29歳の頃に日本へ戻って、地元の和歌山で独立しました。上海で精神的に苦しかった時期に、地元の家族や友人に支えられたことも、和歌山を選んだ理由の1つです。
――経営する上で、大切にしている判断軸は何ですか。
「作品ではなく、商品をデザインする」ということです。お客様にはメーカーが多いため、重要なのはデザインそのものだけでなく、商品をどう売るかだと考えています。実際、ユーザビリティや価格帯、販売場所まで含めた総合的な判断が必要です。
場合によっては、価格を抑えるために素材を見直します。条件のなかでベストな提案を行い、商品がいかに世のなかへ広がるかを考えることが、当社がぶらさず大切にしている姿勢です。
上下関係よりも対話を重視し、成長のために仕事を任せる
――社内のコミュニケーションで大切にしていることは何ですか。
当社は4人の少人数のチームなので、チームワークを大切にしています。上下関係はあまりなく、友達に近い感覚で自由に発言できる雰囲気です。
私は社長ですが、スタッフから突っ込まれたり、いじられたりすることもあります。堅苦しい雰囲気ではなく、一緒に楽しく進んでいける関係性です。
――育成で意識していることを教えてください。
思い切って仕事を任せることです。新しく入ったスタッフにとって難しい業務でも、あえて重要な仕事を任せることがあります。
任されることで自分なりに考え、一生懸命取り組む経験が成長につながると考えているからです。できることだけをお願いしていると、単なる作業になってしまいます。私としては、自分でアイデアを出し、考え、生み出す力を身につけてもらいたいです。
デザイン事業の経験を活かし、自ら商品を届ける事業へ
――今後、挑戦していきたいことを教えてください。
これまで商品に関わるデザインを幅広く手がけ、企画からプロダクト、パッケージ、Web、動画まで、自分たちで一通り対応できる力を身につけてきました。
現在は、その経験を活かし、自分たちで考えた商品をBtoCで直接お客様に届ける事業を始めています。手始めに立ち上げたのがアートパネルの事業です。
当社は店舗デザインも手がけているため親和性があり、高すぎず買いやすい価格帯で、インテリアに合わせやすいアートを届けたいと考えました。
――新しい事業に取り組む上で、課題に感じていることは何ですか。
課題はリソース不足です。現在のデザイン事業を大きく拡大するのではなく、質を保ちながら、お客様のニーズに的確に答えていきたいと考えています。
一方で、自社商品の開発は伸ばしていきたいです。自分たちで商品を売ることで得られる感覚は、デザイン業務にも還元できると思っています。
体を動かして切り替え、まず1歩を行動に移す
――仕事以外では、どのようにリフレッシュしていますか。
趣味は多いほうです。サッカーとフットサルは今も続けていて、最近はダーツにもはまっています。釣りも好きで、基本的にはアクティブなことやアウトドアが好きです。
仕事ではパソコンに向かう時間が多いため、オフは体を動かしたり、出かけたりして過ごしています。そうしてリフレッシュし、気持ちを切り替えて仕事に向かうという形です。
――これから経営を始めたい人や、挑戦を考えている人へメッセージをお願いします。
考え込んでしまうと、行動が止まってしまいがちです。しかし、考えること以上に、1つの行動が何かのきっかけになると思っています。
私の周りを見ても、成功している人は常に行動していますし、1歩踏み出すのが早いです。もちろん失敗もありますが、そこから得られることもあります。
いきなり大きなことをする必要はありません。ステップをつくり、まずは進みやすいステップ1をさっと行動に移すことが大切だと思います。
私たちも、まだまだ課題はありますが、前に進みながら、企業として総合的に強くなっていくことを目指していきたいです。