野菜の価値を高めて地域農業を支える、高見氏が築くサラダ事業とこれから

casualdining.ta 高見氏

神戸・西宮エリアを拠点に、レストラン事業や農業、惣菜・商品開発、レストランのプロデュースやアドバイザー業務などを手がける高見氏。事業の根底にあるのは、地域の農業を支え、本来のおいしい野菜をより多くの人に届けたいという思いです。コロナ禍や物価上昇、人手不足、農家の高齢化など、事業環境が大きく変化するなかでも、その軸を変えずに取り組みを続けている高見氏に、大切にしていることやこれまでのキャリア、転機などについて伺いました。

野菜に付加価値を生み、地域農業を支える

――現在の事業内容について教えてください。

主にはレストランを中心とした飲食事業を行っています。神戸の西エリアでは、自家農園で農薬や化学肥料を使わずに野菜を育てている点が特徴です。その野菜を中心に、レストランで料理を提供してきました。

特に力を入れてきたのがサラダです。10年以上前から「サラダボックス」という商品をつくっており、リーフ系のレタスミックスの上に、旬の焼き野菜や蒸し野菜をのせています。そのほか、お弁当やオードブル、スムージー、ドレッシング、ジャムなども手がけてきました。

――事業を通じて大切にしていることは何ですか。

一番の軸にあるのは、地域の農業を支えることです。農家さんがつくった野菜を安く売るのではなく、サラダや加工品にして、より価値のあるものに変えていきたいと考えています。

もちろん、レストランでお客様においしいものを食べてもらうことは大切です。ただ、その先で農家さんの活性化につながることも目指しています。農家さんも、お客様も、商品を手に取ってくださる方も喜んでいただける形をつくる。これが、地域の農業を支えることにつながると思っています。

パイロット志望から始まった、サラダとの出会い

――現在の仕事に至ったきっかけを教えてください。

もともと目指していた職業はパイロットです。試験の最終段階近くまで進んだものの、そこで落ちてしまい、その後オーストラリアへ行きました。

オーストラリアでの生活では、ホームステイ先で肉料理が続いたことをきっかけに、自分でサラダをつくるように。父が営農指導員として農家さんに野菜のつくり方を教える仕事をしていたため、昔から農薬や化学肥料を使わない野菜が身近にある環境でした。

現地のレストランで働いていたとき、自分なりにつくったサラダをまかないで出したことがあります。同僚にとても喜ばれ、現在のサラダにつながるつくり方を考えるようになりました。

――仕事をする上で大切にしている考えを教えてください。

私にとっては、やはり農業が基本です。自分自身が農家になることが目的ではなく、地域を支えるために事業をしています。本来のおいしい野菜を知ってもらい、農業を支えるために何ができるのかを考えてきました。

私の場合は、レストランや商品開発が自分の得意な分野です。料理人になろうと思ってこの道に入ったわけではないので、料理人とは少し違う発想やアイデアを持てる部分もあると思っています。これまで、そのときの勘やセンス、出会いや縁を大切にしながら仕事を続けてきました。

事業拡大を経て、守るべきものを見つめ直す

――事業にとって大きな転機となった出来事はありますか。

大きな転機はコロナ禍です。新しい店舗を出した直後に緊急事態宣言が出て、両店舗の売り上げがゼロになりました。当時はスタッフも70人ほどいたため、何とか雇用を維持しなければいけない状況だったのです。

そこで、お客様にレストランに来てもらえないのであれば、こちらから届けられる商品をつくろうと考えました。サラダボックスやお弁当、オードブルなどのテイクアウトに注力。私はその1年間、ほぼ毎日店でお弁当やサラダをつくっていました。

その後は百貨店系列から問い合わせをいただいたり、惣菜製造販売の許可を取得した店舗も立ち上げたりしています。一方で、物価上昇や人手不足、農家さんの高齢化なども重なり、事業のあり方を見直すことになりました。

――現在はどのような体制で事業を運営していますか。

現在は私一人で運営しています。以前は複数店舗を展開していましたが、農家さんの高齢化などによって、こだわった野菜を安定して確保することが難しくなりました。

どこの野菜でもよければ事業は続けられます。しかし、それでは私がやりたいこととは違います。そのため、一度体制を見直し、15年続けてきた西宮・夙川のレストランを拠点に戻しました。

今は昼も夜も完全予約制で営業しています。空いている時間には、ホテルやレストランのプロデュース、アドバイス、商品開発などにも取り組んでいます。

営業ではなく、料理と技術を通じて広がった仕事

――仕事の依頼はどのように広がってきたのでしょうか。

私から営業をしたことは一度もありません。レストランでサラダを食べてくださった方から紹介していただき、そこから別の方につながる形で仕事が広がってきました。

サラダのつくり方そのものに関心を持っていただき、国内外のレストランやホテルに技術を提供したこともあります。メニュー開発やレストランのプロデュースを依頼していただく機会も増えてきました。

私のサラダは、素材を大切にすることが基本です。レタスは手でちぎり、旬の焼き野菜や蒸し野菜を組み合わせます。サラダボックスには、10種類から多いときで30種類ほどの野菜を使っています。

農家の担い手不足と向き合い、自分にできる形で農業を支える

――現在、もっとも大きな課題は何ですか。

一番の課題は人手不足です。特に、農家さんの担い手が不足しています。私自身、レストラン事業やサラダ事業を広げるために取り組んできましたが、つくり手である農家さんがいなければ続けられません。

若い方が農業に入ってくることはありますが、続けていくことが難しい現状もあります。地域の農業を守っていくためには、つくったものがきちんと価値につながり、農家さんが続けられる環境をつくる必要があると考えています。

――これから取り組んでいきたいことを教えてください。

自分が得意としているレストランや商品開発、プロデュースといった分野から、農家さんを支える仕組みをつくっていきたいです。野菜そのものの価値を高め、お客様に喜んでもらい、その結果が農家さんに返っていく形が理想です。

今は忙しく、休みもほとんどありません。ただ、将来的には時間にも余裕を持ちながら、もっと社会貢献につながる仕事ができる形にしていきたいと考えています。

自然のなかで過ごす時間が、次の仕事への力になる

――リフレッシュできる時間について教えてください。

一番心が休まるのは、農園にいる時間です。週に一度ほど農園へ行き、朝から作業をしています。何もない空間で、音もほとんどありません。自然のなかに立ち、その場の空気や音を感じているだけで癒やされます。忙しい時期が続いていますが、私にとって農園で過ごす時間が一番のリフレッシュです。

これからは、今まで以上に社会貢献につながる仕事ができる形を目指しています。農家さんと野菜、お客様をつなぐために、自分が得意としてきたレストランや商品開発の力を活かしていきたいです。

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