日本の文化を100年、1,000年先へ――伝統を経済活動につなぐ粋響株式会社の挑戦

粋響株式会社 代表 佐野 翔平氏

日本刀の販売・リースをはじめ、伝統技術を活用したアクセサリーや日用品の企画・販売、ブランディング・マーケティング支援、クラウドファンディングの伴走支援、動画制作など、多岐にわたる事業を展開する粋響株式会社。その根底にあるのは、日本の歴史や伝統文化を次世代へ残したいという思いです。伝統を守るだけでなく、経済活動として持続できる仕組みをつくる。その原点と現在の取り組み、そして将来の構想について伺いました。

伝統文化を「続けられる仕組み」に変える多角的な事業展開

――現在の事業内容について教えてください。

当社では、日本刀の販売やリースのほか、伝統技術を活用したアクセサリーや日用品の企画・販売を行っています。加えて、ブランディングやマーケティングのコンサルティング、クラウドファンディングの伴走支援も手掛けているところです。

最近では、YouTubeやTikTok、Instagramなどで使用する動画の制作にも取り組み始めました。集客や求人、クラウドファンディングなど、それぞれの目的にあわせて企画、撮影、編集まで対応しています。

――経営において大切にしている考え方はありますか。

私は、判断するときに「三方よしになっているか」をよく考えます。自分だけが犠牲になっていないか、相手だけが犠牲になっていないかという視点です。

誰か一方だけが負担を抱えるのではなく、関わる人がきちんと利益を得られる状態を大切にしています。伝統文化も、好きな人の持ち出しだけで支え続けるのは難しいと感じるからです。

目的がお金を稼ぐことでも構わないと思っています。文化に関わることで経済が回り、活動を継続できる仕組みをつくることが重要だと考えています。

火縄銃との出会いから始まった、伝統文化を仕事にする道

――伝統文化に関わるようになったきっかけを教えてください。

中学生のころ、地元・静岡のお祭りで火縄銃のパフォーマンスを見たことがきっかけです。それ以来、日本の歴史や伝統、文化の世界観が好きになり、お祭りにも毎年足を運んでいました。

高校卒業後は地元の企業に就職しましたが、21、22歳くらいのころ、ただ見ているだけではいられなくなったのです。パフォーマンスが終わった後に演者の方々へ「火縄銃はどこで習えるのですか」と尋ね、仲間に入れていただきました。

――そこから起業を意識するようになったのはなぜですか。

活動を続けるなかで、伝統産業や伝統工芸、伝統芸能の世界に、高齢化や後継者不足、経済活動の縮小といった課題があると感じました。

文化を絶やさないためには、技術を持つ人たちにお金が還元される仕組みが必要だと考えるようになったのです。最初に始めたのがアクセサリーの販売です。刀鍛冶や和紙職人などに制作をお願いし、完成したものを当社ですべて買い取り、自社ブランドとして販売しました。

そこから、認知やマネタイズを支援するため、ブランディングやマーケティング、クラウドファンディング支援へと事業が広がっていきました。

――コンサルティングでは、どのような経験を活かしていますか。

私は、自らブランドをゼロから立ち上げ、全国の美術館や博物館のミュージアムショップで取り扱っていただけるまで、信用や信頼を積み上げてきました。海外ではミラノコレクションに出展したほか、カンヌ国際映画祭の期間中には、Forbes Franceの社長が主催するファッションショーにも出展しています。

大阪万博の際には、ファッションショーのアクセサリー・ジュエリー部門に出展し、ダイヤモンドユカイさんにブレスレットを着用していただきました。また、名古屋のセントレアでは、コシノジュンコさんがプロデュースするインバウンド向けの取り組みでご一緒した経験もあります。

一人で事業を動かし、同じ夢を追う仲間を思い描く

――現在の組織体制について教えてください。

現在は社員を雇っておらず、私一人で事業を運営しています。すべてを他社に任せているわけではなく、当社で管理しながら、必要に応じて部分的に他社へ依頼する形です。

アクセサリー販売はECサイトが中心で、美術館や博物館で委託販売していただくこともあります。それぞれの事業で稼働の仕方が異なりますが、特に私自身の時間を使うのはコンサルティング系の仕事です。

――将来、採用するとしたらどのような人と働きたいですか。

私の夢を、自分の夢のように思って一緒に取り組んでくれる人です。

私の人生最大の目標は、1000年以上続いてきた日本の文化や歴史が、これから先も100年、1000年と続いていける仕組みをつくることにあります。

これからも「あれをやりたい」「これをやりたい」と、さまざまなアイデアが出てくると思います。それをどう実現するのかという部分に、フルコミットできる人と一緒に働きたいですね。

富士山のふもとにお城と城下町をつくり、日本文化を未来へつなぐ

――今後、実現したいことを教えてください。

お城と城下町をつくる構想があります。理想としては、富士山のふもとにつくりたいと考えています。現在取り組んでいるさまざまな事業も、すべてそこにつながっていると思っています。

目の前の取り組みでは、日本刀を購入していただいたり、リースで飾っていただいたりすることも大切です。人の目に触れる機会が増えれば、今もそうした文化や、それをつくる職人さんが存在していることを知ってもらうきっかけになります。

知られていないということは、存在していないのと同じになってしまいます。だからこそ、販売やリース、サービスの利用、コラボやタイアップなど、形にこだわらず露出を増やし、職人さんへ還元していきたいです。

――文化に触れてもらうためのイベントにも取り組んでいるそうですね。

「伝統万博」という、伝統文化版のキッザニアのようなイベントを主催しています。職人さんにブースを出していただき、手仕事などを体験してもらう企画です。

第1回は、名古屋市のレゴランドの目の前にある「メイカーズ・ピア」の芝生広場で開催しました。今後も毎年続けていきたいと考えています。

サービスを受けながら考える「顧客体験」がリフレッシュになる

――リフレッシュになる時間はありますか。

休みらしい休みはあまりありません。私にとってリフレッシュになるのは、顧客体験をしているときです。

イベントにゲストとして招かれたり、宿泊施設や飲食店を利用したりするときに、サービスを受けながらさまざまなことを観察しています。

ホテルであれば、どれくらいの売り上げ規模なのか、この広さや人数、単価ならどれくらい回転しているのかと考えます。なぜリピートしたくなるのか、なぜお客様が集まるのかという点も気になるところです。接客の仕方や受付の動線まで見ています。

そのなかで「これはすごい」「今まで受けたことがないサービスだ」と感じる体験に出会うと、とてもワクワクします。

「自社のマーケティングやブランディングに活用できそうだ」「ほかの方のビジネスにも使えるかもしれない」と新しい発見を重ねながら、事業にも活かしていきたいと思っています。

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