一人ひとりの可能性に光を当て、思いやりと挑戦する心を育む保育
社会福祉法人覚応会 理事長 古賀 良和氏
社会福祉法人として保育園を運営する覚応会。子ども一人ひとりを大切にすることを根底に置きながら、自由保育にとらわれず、集団での活動や行事にも力を入れています。相撲大会や音楽会など、子どもたちが緊張感や達成感を味わえる機会を積極的につくっていることも特徴です。今回は、2代目として法人を引き継いだ古賀良和さんに、保育への考え方や組織づくり、職員との関わり、これからの課題について伺いました。
目次
一人ひとりを大切にしながら、挑戦する機会をつくる
――現在の事業内容や特徴について教えてください。
基本的には保育園を経営しています。ただ、社会福祉法人ですので、利益を追求するというよりも、働く人たちのため、そして子どもたちの成長のために頑張っている施設だと考えています。
最近は「自由保育」や「子ども真ん中」という考え方がよく言われています。一人ひとりを大切にすることや、一人ひとりの人権を尊重することはもちろん大切です。ただ、「自由だから何をしてもいい」ということとは違うと思っています。学校でも、一人ひとりを大切にしながら、集団の中で活動することがあります。それと同じように、保育園でも集団で活動する時間を大切にしています。
人数が多いので行事は大変ですが、やる以上は中途半端ではなく、きちんとしたものを見せたいと思っています。その分、職員も大変ではありますが、子どもたちと一緒にやり遂げた達成感や充実感を味わえると思います。
特徴的なものでは、園内に土俵をつくって相撲大会を行っています。国技館と同じ大きさの土俵で年長児が競い、選手を選んで福岡地区の保育園相撲大会にも出場しています。勝っても負けても悔し涙を流したり、最後まで必死に粘ったり、声を枯らして応援したりする経験は、なかなかできないものです。そういう経験をすることも大切だと思っています。
――理念やビジョンがあれば教えてください。
「一人ひとりの可能性に光を当てて、思いやりと挑戦する心を育む保育をする」ことですね。
教員としての経験を生かし、2代目として法人を引き継ぐ
――経営者になられた経緯を教えてください。
私はもともとずっと学校の教員をしていて、定年退職まで勤めました。父親も高校の教員をしていたのですが、縁があって保育園を始めたんです。私も父親と同じような感覚を持っていたこともあり、保育園に入ってからも、先代がやってきた保育内容をそのまま引き継ぐ形になりました。
ただ、教員時代の経験から、大きく変えた部分もあります。学校では教職員の立場がある程度強い一方、保育園では経営者の立場が強くなりやすい。良い意味でも悪い意味でも、上の人が言ったことに従うという環境がありました。そこで、職場の風通しはかなり良くしました。
――仕事をする上で大切にしている価値観は何でしょうか。
働きやすい環境をつくることです。保育士不足という現実がありますし、うちは人数も多く、行事も多い。音楽にも力を入れているので、仕事そのものは決して楽ではありません。だからこそ、職員にできるだけ長く働いてもらい、新しく入ってきてもらうためにも、働きやすい環境をつくらなければならないと思っています。
福利厚生にも力を入れていて、例えば野球観戦の年間シートを用意したり、休憩室にお菓子や飲み物、アイスクリームなどを置いたりしています。職員向けのピアノレッスンの補助や、仕事以外でのけがも対象とした保険もあります。
声をかけることから始まる、風通しのよい組織づくり
――組織運営で意識していることを教えてください。
私自身は、できるだけ職員に声をかけるようにしています。面談もできる限り行うようにしています。ただ、職員同士のコミュニケーションも大切です。
職員は若い人から70歳くらいの方までいて、年齢差があります。そこで、各クラスでしっかりコミュニケーションを取ってもらえるように工夫しています。
その一つが、年度の始めにクラスごとで食事会などをしてもらうことです。職員一人につき一定額を補助して、場所や日にちは自由に決めてもらっています。小さい子どもがいる職員は昼間にランチへ行ったり、別のグループはカラオケに行ったりと、それぞれに合った形で交流しています。
また毎年、職員旅行も実施しています。私は職員旅行を単なる旅行だとは考えていません。普段、自分では行かないような場所にみんなで行き、教養や学びを得る機会だと思っています。
――採用する際に、一緒に働きたいと思う人のポイントはありますか。
まずは、正直に「大変ですよ」と伝えています。それでも来たいと思ってもらえるかどうかです。
うちは人数が多く、行事も多いですし、ピアノを弾いたり、運動会の指導をしたりと、大変な部分があります。職員もそれを分かっているので、友人を紹介するリファラル採用でも、「この人はうちの大変さには耐えられないだろう」と考えて、簡単には連れてこないんです。逆に、それでも来てくれた人は、やはり合っているのだと思います。
採用については、ホームページやSNS、求人票など、いろいろな方法を活用しています。SNSなどは若い職員に任せています。LINEやInstagramなど、私よりも若い人のほうが詳しいですから。若い職員が自分たちの感覚で発信してくれることは、とても大きいと思っています。
変えない方針を磨きながら、これからの保育へ
――今後の展望や挑戦したいことを教えてください。
大きな課題は、やはり採用です。保育士不足の中で、毎年一定数の職員を採用していかなければなりません。結婚や転居、妊娠など、それぞれの事情で退職する人もいますから、毎年3~4人程度の採用を目標にしています。
もう一つは、これからの保育をどうしていくかということです。今は自由保育が主流になっていますが、私はこれまでやってきた方針を変えるつもりはありません。一人ひとりを大切にしながら、集団で活動すること、音楽や行事に取り組むことも大切だと考えています。
今の時代からすると、厳しい、時代遅れだと言われることもあります。でも、私は「課題ではあるけれど、問題ではない」と考えています。方針を変えるのではなく、今の保育をより良くしていく。その中で、子どもたちにも職員にも、いろいろなことに打ち込んで、挑戦する経験をしてほしいと思っています。
ドラマや映画を楽しみ、気持ちを切り替える
――仕事以外でのリフレッシュ方法を教えてください。
昔から映画やドラマが好きで、今もドラマを見ることがリフレッシュになっています。以前はいろいろな番組を録画していましたが、最近はプライムビデオなどで見ることが多いですね。
ゴルフもしますが、スコアが悪いと帰ってからストレスになるので。そう考えると、やっぱり映画やドラマを見るのが一番リフレッシュになるのかもしれません。
ストレスがまったくないわけではありませんが、いろいろなことを発散しているので、あまり溜め込むほうではないと思います。
これからも子ども一人ひとりを大切にし、自由保育にとらわれず、集団での活動や行事にも力を入れて取り組んで参ります。