「心の距離が近づくコミュニケーション」をデザインする――株式会社clearlyの挑戦
株式会社clearly 代表取締役 霧生 紫氏
株式会社clearlyでは「分かりにくい」「伝わらない」を解消し、人と人との心の距離が近づくコミュニケーションを生み出すことを目指しています。資料デザイン の制作を主軸に、資料デザインを学ぶオンラインコミュニティやスキルアッププログラムも展開しています。客室乗務員からデザインの世界へ転身した霧生氏に、事業を始めた背景や経営への思い、今後の展望について伺いました。
目次
資料デザインを通じて「伝える」を支える
――現在の事業内容について教えてください。
弊社では、クライアント様の資料クリエイティブの制作を主軸に、資料デザインのスキルを高めたい方が集まるオンラインコミュニティや、伴走型スキルアッププログラムなどを展開しています。
オンラインコミュニティには現在30名ほどが参加しており、デザイナーだけでなく、ライターや広報など「伝えること」を大切にする方が集まっています。
資料デザインに注力するようになったのは、SNSクリエイティブ やWebサイトなどさまざまな制作を経験する中で、資料には独自の価値があると感じたからです。すでに使われている資料の「ビフォー」を見た上で、より伝わる「アフター」をつくれることに面白さを感じています。
客室乗務員の経験が、現在の仕事につながっている
――デザインの仕事を始めたきっかけを教えてください。
客室乗務員としての仕事が大幅に減り、これまで当たり前だった働き方が大きく変わりました。それをきっかけに今後のキャリアや副業について考えるようになり、その中でデザインに出会いました。昔から何かを作ったりデザインしたりすることが好きだったので、そのスキルを生かせたらと思い始めたのがきっかけです。
客室乗務員時代は、相手が何を求めているのか、その背景まで想像しながら先回りして動くことが求められていました。伝え方やコミュニケーションの違いによって、ミスが生まれることもあれば、感動につながることもあります。その経験が、現在の「伝え方を大切にする」という価値観につながっています。
――創業当初はどのような苦労がありましたか。
異業種からのスタートだったため、業界のことが分からなかったことです。知り合いから仕事を紹介してもらえる環境でもなかったため、募集されている仕事を一つずつ探し、自分から応募するところから始めました。デザインも最初は独学でしたが、限界を感じてオンラインスクールで学び、少しずつ実績を積み上げてきました。
「心の距離が近づくコミュニケーション」を理念に
――経営理念について教えてください。
「心のキョリが近づくコミュニケーションをデザインする」という言葉を大切にしています。
会社には素敵なビジョンや大切にしたい思いがあっても、資料が整っていないことで見てもらえないことがあります。せっかく良いものなのに、見にくさによってマイナスの感情が生まれるのはもったいない。そうした「伝わり方のズレ」をデザインで整え、心の距離が近づくコミュニケーションにつなげたいと考えています。
――経営判断で大切にしていることは何でしょうか。
「意図を持つこと」「意味を持つこと」、そして自分の意思で決めることです。経営をしていると正解がない中で判断しなければならない場面がたくさんあります。だからこそ、周囲の正解に合わせるのではなく、「なぜ自分はこの選択をするのか」を考えることを大切にしています。
相手を想像し、リスペクトを持って向き合う
――メンバーとのコミュニケーションで大切にしていることは何ですか。
相手に対してリスペクトを持ち、その背景までできるだけ想像することです。現在は、クリエイティブ制作やコミュニティ運営など、さまざまな形で10名前後のメンバーに関わってもらっています。
相手のことをすべて理解することは難しいからこそ、自分の価値観だけで決めつけず、必要なことはきちんとコミュニケーションを取りながら、お互いに気持ちよく仕事ができる関係をつくることを大切にしています。
――今後、一緒に働きたい方はどのような方でしょうか。
コミュニケーションを大切にできる方です。相手の立場を想像し、お互いにリスペクトを持ちながら、それぞれが自分の役割をきちんと果たす。そんな関係で仕事ができる方とご一緒したいと思っています。
クリエイティブから、行動やコミュニケーションのデザインへ
――今後の展望を教えてください。
資料だけをデザインするのではなく、最終的にはその人の行動やコミュニケーションまでデザインしていきたいです。
資料作りでは、情報をすべて出して整理し、優先順位をつけ、形にしていきます。私は、このプロセス自体に大きな価値があると感じています。
今後は資料というアウトプットだけに限らず、感情や思考を整理し、自分の意思で次の一歩を踏み出せるようなコミュニケーションまでデザインしていきたいです。
一方で、デザイン業界ではAIの進化も大きな変化です。AIによって、誰でも一定水準のクリエイティブを作れるようになっていくからこそ、「なぜこのデザインにするのか」という意図や意味、意思の価値は、より高まっていくと感じています。AIもうまく活用しながら、見た目を整えるだけではなく、意図や意味を持ったデザインをつくっていきたいです。
意図を明確にして、挑戦を続ける
――休日はどのようにリフレッシュされていますか。
旅行です。日々たくさんの情報が入ってくるので、意識的に緑が多い場所や海のある場所へ行き、情報をシャットダウンする時間を取っています。最近ではゴールデンウィークに友人とハワイへ行きました。
普段とは 違う場所に行くと、自分の日常を少し俯瞰して見られます。情報を遮断しながらクールダウンして、自分自身を見つめ直す機会にもなっています。
――これから経営を始める方へメッセージをお願いします。
経営は、すべてを自分で決めなければならない分、大変さもあります。正解がない中で判断することも多く、規模が広がれば、その分責任も大きくなっていきます。
でも私は、自分で考えて、自分で決めて、行動できることに経営の面白さを感じています。私自身、最初から明確な目標や正解があってここまで来たわけではありません。まずやってみて、そこから見えたことをもとに、また考えて、変えていく。その繰り返しで今があります。
行動するからこそ変化が生まれて、その変化がまた次の選択肢につながっていく。私自身もまだまだ試行錯誤の途中ですが、これからもその時々で自分なりの意思を持って選びながら、変化していきたいと思っています。これから経営を始める方にも、そんな面白さがあることをお伝えできたら嬉しいです。