ラベンダーの「灯り」で、人と人が自然に支え合える場所を――農業から広げる居場所づくり

一般社団法人ラベンダーの灯り 代表 川畑 聡子氏

一般社団法人ラベンダーの灯りは、ラベンダーを中心とした芳香植物の生産など農業を入り口に、人と人とのつながりを育む活動に取り組んでいます。農業体験や農福連携、農産物の加工・販売などを通じて目指すのは、年齢や立場、障害の有無にかかわらず、誰もが安心して過ごせる居場所です。長年福祉の仕事に携わってきた代表の川畑聡子氏に、活動を始めた背景やラベンダーに込めた思い、今後実現したいことについて伺いました。

福祉の現場で抱いた思いから、ラベンダー畑という居場所へ

――活動を始めた経緯について教えてください。

以前から長く福祉の仕事に携わり、介護に悩む方や精神科の患者さん、そのご家族など、さまざまな相談を受けてきました。地域を回って自治会長さんとお話ししたり、障害のある方と接したりする機会も多かったんです。

その中で感じていたのが、福祉の現場ではどうしても「支援する側」と「支援される側」に分かれてしまうことでした。組織の中ではできることにも限界があり、「この人には支援できるのに、この人にはできない」という状況もあります。そこにずっとモヤモヤを感じていましたね。

退職後、実家の農業を手伝いながら考えたのが、ラベンダー畑を通じて、障害のある方や高齢の方、悩みを抱えて少し疲れている方が過ごせる居場所をつくれないかということでした。

――なぜラベンダーだったのでしょうか。

大学時代を北海道で過ごし、学生の頃は毎年のように富良野のラベンダー畑を見に行っていました。一面に広がる紫色と香りに、本当に魅了されたんです。

ラベンダーは見た目が美しいだけではなく、作業をしている時間も香りに包まれて気持ちが安らぎます。そうした特徴を生かして、人が集まれる居場所や、障害のある方、高齢の方の就労の機会につなげたいと考えました。

暗闇の中にいる人へ、小さな「灯り」をともしたい

――「ラベンダーの灯り」という名前には、どのような思いが込められていますか。

私は、22年前に仲の良い友人を亡くしました。しばらく会えない時期に、自死というとてもつらく悲しい決断で亡くなってしまい、「あの夜、どんな思いでいたんだろう」ということが、ずっと心に残っていました。

すごく暗い闇の中にいるような気持ちだったのかもしれない。だからこそ、悩んでいる方にとって少しでも光になるような、灯りになるような居場所や活動にしたいと思い、「ラベンダーの灯り」という名前にしたんです。

今年2月には、まだ何も植えられていない冬の畑に紫色のイルミネーションを飾る「冬に咲くラベンダーイルミネーション」も行いました。2月半ばから友人の命日と誕生日までともすことができて、「灯り」は私たちの活動を象徴するものだと改めて感じましたね。

――ご自身で活動を立ち上げるまでには、どのような経緯がありましたか。

実際に踏み出すまで、3年ほど悩んでいました。農業関係者の方に相談しても、「ラベンダーで食べていくのは難しい」と言われることがあり、販売ルートなどにも課題があったんです。

それでも、最初に2株のラベンダーを購入し、そこから160本まで増やしながら、一人で畑づくりを続けました。その後、那須塩原で道の駅の社長さんに活動を応援していただき、約50アールの農地を貸していただけることになったんです。これまで相談していた方々も役員として一緒に取り組んでくれることになり、「思い切って踏み出してみよう」と活動が始まりました。

農業を入り口に、「支える・支えられる」を越えていく

――現在の事業内容と、活動の特徴を教えてください。

ラベンダーを中心とした芳香植物の生産、農業を入り口に、人と人をつなぐことが活動の軸です。農業体験を通して交流を生み、障害の有無や年齢、立場にかかわらず、安心して過ごせる居場所を広げていきたいと思っています。

農園で一緒に作業していると、自然にそれぞれの役割が生まれるんですよ。知らない人同士でも会話が始まりますし、足が不自由な方がいれば「ここに座んな」と声をかけるような関係も生まれる。福祉現場にある「支援する人・される人」という関係ではなく、自然に支え合える場所にしたいですね。

事業としては、農産物の生産や加工・販売、農福連携などに取り組んでいます。現在は就労支援事業所の方々にも施設外就労という形で来ていただき、土を運んだり、農園の整備をしたりと、一緒に農園をつくっています。

――農園では、地域の方が参加できる機会も設けているのでしょうか。

苗植えやラベンダーの摘み取りなど、農業体験ができる農園を目指しています。宇都宮農園「灯りのはじまり」で行った摘み取り体験には30人ほどの方が来てくださいました。那須塩原の農園でも、秋には苗植え体験イベントを行いたいと考えています。

SNSだけでなくチラシなどでも情報を発信し、いろいろな世代の方に知っていただきたいですね。実際、農園で作業していると声をかけてくださる方も多く、「また来たい」と言っていただけることが励みになっています。

「そのままでいい」と伝える、新たなプロジェクト

――現在、特に力を入れているプロジェクトはありますか。

「のれいちプロジェクト」という、「僕たちはケーキにのれなかったいちごプロジェクト」を進めています。実家がいちご農園なので、以前から形が個性的な規格外いちごの写真を撮りためていました。

きれいな形ではなく、商品にはならないいちごですが、それぞれに個性があってかわいいんです。そのいちごたちを題材に物語をつくり、思い悩んでいる方に「そのままでいいんだよ」というメッセージを届けたいと思っています。

写真を募集して絵本に登場するキャラクターを決め、12月頃には紙芝居のような形式で発表することも考えています。子どもから大人まで世代を問わず、私たちが大切にしている思いを届けられるプロジェクトにしていきたいですね。

地域にラベンダー畑を増やし、人が集まる場所を育てる

――これから実現していきたいことを教えてください。

まずは那須塩原の農園を、ラベンダーとハーブでいっぱいにすることです。現在は360本ほど植えていますが、自分たちで苗をつくり、年2回植えながら少しずつ増やしていきます。

将来的には、自分たちで育てたラベンダーを使ってアロマオイルなどの商品もつくりたいですね。また、耕作放棄地をラベンダー畑に変えていくことにも取り組みたいと思っています。そのためにも会員さんや一緒に活動してくださる方を増やしながら、地域とのつながりを広げていきたいです。

ラベンダー畑をきっかけに人が集まり、誰かが誰かを一方的に支えるのではなく、それぞれが自然に支え合える。そんな場所を少しずつ増やしながら、暗闇の中にいる方に小さな「灯り」をともし続けていきたいと思っています。

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