制度の狭間にいる人へ、多様な日常を――Hito Rehaが目指す「幸福」を起点とした地域支援
一般社団法人Hito Reha 代表理事 横山 翼氏
一般社団法人Hito Rehaは、障害福祉を軸に、既存の制度だけでは支援が届きにくい人々を支える活動を展開している団体です。「目の前にいる人が幸福になれるか」という考え方のもと、理学療法士や作業療法士などの専門職が、一人ひとりに合わせた個別対応を行っています。本記事では、代表理事の横山翼氏に、事業に込めた想いや組織づくり、今後の展望などについて伺いました。
制度ではなく、一人ひとりの「日常」に向き合う
――現在の事業内容や特徴について教えてください。
障害福祉を中心に、医療保険や介護保険など既存の制度では十分にカバーしにくい、いわば制度と制度の狭間にいる方々を対象とした事業を行っています。できるだけ制度に頼らず、自費サービスを通じて必要な支援を届けている点が特徴です。
支援には、理学療法士や作業療法士といった専門職の経験を持つメンバーが関わっており、集団対応ではなく、基本的には1対1の個別対応で子ども一人ひとりを支えています。また、同時に保護者が抱える困りごとや「働きたい」という想いにも目を向け、子どもと保護者の双方を支えることを大切にしています。
――法人の理念には、どのような想いが込められていますか。
目指しているのは、「誰もが自らの可能性を広げ、多様な日常を愉しめる」状態をつくることです。
法人を立ち上げた頃、街や温泉、カフェなど、普段の生活のなかで障害のある方を見かける機会が少ないと感じていました。一方で、イベントを開けば多くの方が参加してくれます。しかし、イベントが終わったからといって、翌日からその方たちの日常が変わるわけではありません。
だからこそ、一時的な機会を提供するだけでなく、普段の暮らしそのものを変えていくことが大切だと考えました。私たちが向き合っているのは、特別な一日をつくることではなく、障害のある方が多様な日常を当たり前に楽しめる環境をつくることです。
東日本大震災をきっかけに、地域で事業を続ける道へ
――法人を立ち上げた背景をお聞かせください。
東日本大震災をきっかけに、「この地域で自分に何ができるのか」と考えたことが、法人を立ち上げる原点です。
私は兵庫県宝塚市の出身で、震災が発生した当時は大学1年生でした。すぐに震災と向き合えたわけではなく、精神的に苦しい時期もありましたが、それを乗り越えたのち、大変な状況にある地域へ足を運び、自分にできることを模索するようになりました。
その後、さまざまな形で復興に関わるなかで、継続的に地域へ貢献するには、地域で事業を営み、利益を生み、税金を納めていくことが大切だと考えるようになったんです。制度の狭間で苦しんでいる方を支えながら、事業として継続していく。その両立を目指したことが、法人設立につながっています。
――経営判断で軸にしていることは何でしょうか。
まず考えるのは、「目の前にいる人が幸福になれるか」です。私たちと関わることがその方の幸福につながらないのであれば、別のサービスをご紹介することもあります。私たちだけで解決することにこだわるのではなく、サービスを組み合わせたり、必要な支援につないだりすることで、その人が少しでも幸福に近づけるかを判断軸にしています。
「志」を持つ仲間が横につながる組織へ
――組織内のコミュニケーションで意識していることを教えてください。
一番意識しているのは、メンバー同士が横につながれる環境をつくることです。それぞれが独立して動く場面も多いため、個々の事業の中だけで関係が完結しないようにしています。こまめに連絡を取り合うことに加え、社内研修を実施したり、顔を合わせてリフレッシュできる機会を設けたりしています。
一人で業務を抱えるのではなく、メンバー同士がつながりを持ちながら活動できる組織が理想です。
――一緒に働きたいと感じるのは、どのような方でしょうか。
大切なのは「志」です。法人が何を大切にしているかだけではなく、その人自身が「何を大切にしたいのか」「何とかしたいと思っていることは何か」を重視しています。
実際、求人媒体への掲載や紹介を積極的に行っているわけではありません。それでも、既存の医療保険や介護保険、福祉制度だけでは難しいと感じている方が私たちの取り組みを知り、「ここなら何とかできるかもしれない」と応募してくださることがあります。
支援の質と事業性を両立し、共生する日常を広げる
――現在、経営面で向き合っている課題を教えてください。
支援を必要とする方へのアプローチには強みがある一方で、よいサービスを継続しながら、事業として規模を広げていくことが課題です。利用後に継続してくださる方はいらっしゃるため、新規利用を増やしながら、移動を伴うサービスでは地域をある程度集約し、効率性も高めていきたいと考えています。
ただ、予定を埋めることだけが正解ではありません。急に支援が必要になる方を受け入れられるよう、あえて余白を残すことも重要です。スタッフが体調を崩した際などにリカバリーできる体制づくりも含め、採用や資金、事業運営のバランスを整えていく必要があります。
――今後、新たに挑戦したいことはありますか。
これから取り組もうとしているのが、大学生と障害のある方が共に暮らすシェアハウスです。現状では個別支援には強みがある一方、関われる人数には限りがあります。そのなかで、障害のある方が本当に社会と一体となり、日常の中で共存できているのかという問いを持つようになりました。
同じ場所で生活すれば、できることも、苦手なことも、価値観がそれぞれ異なることも明確になります。そこでは、話し合いや助け合い、一緒に出かけるような関係が生まれるはずです。そうした「互いに成長できる場」をつくることで、特別な機会ではなく「多様な日常」そのものを地域に増やしていきたいです。