地域のデジタル格差を解消し、企業自らがDXを進める組織へ――リージョナルブランドマネジメントが目指す伴走型支援
リージョナルブランドマネジメント合同会社 代表 永長 浩樹氏
リージョナルブランドマネジメント合同会社は、東京都多摩地域(青梅市・立川市など)の中小企業を中心に、デジタル化やDX(業務の変革)の支援を行っています。特徴的なのは、単にITツールを導入するだけでなく、社内でデジタルを使いこなせる人材を育て、最終的には自社だけで業務改善を回せる状態を目指す点です。現在は「DX学校 立川校」の運営にも注力し、経営者や現場の推進者に向けた講座を開講しています。今回は代表の永長浩樹氏に、事業立ち上げの背景や支援への想い、今後の展望について伺いました。
地域のデジタル格差を解消するために
――現在の事業内容と、事業を始めた背景について教えてください。
法人としてのリージョナルブランドマネジメント合同会社は2026年1月に設立しましたが、事業自体は2021年6月に個人事業主としてスタートしました。
以前は新聞社に約27年間勤務し、IT部門に8年、制作部門に19年携わり、そのうち約10年間は部長職を務めていました。2017年に退職した後は、「培ってきた技術や経験が社外でも通用するのか」を試すため、地域の中小企業でITサポートやWebマーケティングの実践を約4年間積み重ねてきました。
また、父親が商売をしていた影響もあり、もともと地域ビジネスへの関心が強かったのです。その中で特に実感したのが、都心部と多摩地域の間にあるデジタル格差でした。地域の中小企業はどうしてもITの活用で後れを取りがちです。その格差を埋め、地域に魅力的な産業や仕事を生み出したい。少しでも地域の力になりたいという思いが、この事業の出発点になっています。
――単なるITツールの導入ではなく、人材育成にこだわる理由は何でしょうか。
以前は、外部の社内システム責任者のような立場で企業に関わることが多くありました。しかし、特定の人だけが社内ITを一手に担ってしまうと、「その人がいなければ業務が回らない」という属人化が起きてしまいます。担当者ひとりの知識やスキルの限界が、そのまま会社の成長の上限になってしまうのです。これでは本末転倒です。
会社が持続的に伸びていくためには、社内全体のITへの理解度を高めなければなりません。だからこそ、ツールの導入や保守といった作業の請負から、組織全体が育つための「自走支援」へと舵を切りました。最終的には、自社でDXを成功させた企業が、そのノウハウを地域の仲間へ広げていけるような好循環を作りたいと考えています。
「導入して終わり」にしない伴走支援
――DXを進める上で、特に大切なことは何ですか。
まずは、「自社でもデジタルを活用できる」と自信を持つこと。そして、業務が便利になっていく面白さを実感することです。
ITツールは最初の相性がすべてと言っても過言ではありません。例えば、本来はその会社に「Google Workspace」が合っているのに、営業に勧められるがまま「Microsoft 365」を選んでしまえば、それだけで失敗の原因になります。さらに、導入した機能を半分も使いこなせていない会社がほとんどです。だからこそ私の役割は、会社に最適なツールを見極めて提案し、導入したものを最大限に活かせるよう隣で支える「伴走」だと考えています。
現在は、IT支援に加えて「DX学校 立川校」も運営しています。経営者が基礎を学ぶ講座や、社内のリーダーを育てる講座を用意しており、動画教材での自習に加えて、私が直接オンラインや対面で各社に合わせた個別指導を行っています。
目指すのは、専門家に頼り切らない「自走できる組織」
――DX学校を通じて、受講企業にどのような状態になってほしいですか。
一番大切にしているのは「自走」です。私たちの支援期間が終わった後も、自社でデジタル化の課題を見つけ、少しずつ前へ進められる状態になってほしいと考えています。
外部のIT業者にすべてを丸投げするのではなく、「何のためにデジタルを使うのか」という目的を自社でしっかり判断し、その上で専門家と対等に協力しながら進める体制を作ることがゴールです。
そのためには、ツールの操作ができるだけでなく、自社の業務の流れをよく理解し、現場の改善を考え続けられる社内人材が欠かせません。講座ではそうした中心人物の育成に力を入れています。
また、最近はAIの活用も欠かせない視点です。AIはただ触ってみる段階を過ぎ、導入したコストに見合う成果(売上向上や業務効率化)をどう出すかが問われています。DXとAIを車の両輪として捉え、実際のビジネス成果に直結する活用法を伝えています。
急がず、地域企業のカルチャーに合わせて進める
――企業の古いやり方や文化を変えることには、どう向き合っていますか。
無理に変える必要はまったくないと考えています。
例えば、紙やハンコ、対面でのやり取りなど、長年続いてきたやり方にはそれぞれの温かみや安心感があります。給与を手渡しすることで「社員との絆が深まる」「モチベーションにつながる」と感じる経営者の方もいらっしゃいます。そうした大切な社風を、外部の人間が頭ごなしに否定して壊す必要はありません。
ただ、これから若い世代を採用していく際には、昔ながらのやり方のままでは定着しにくくなるリスクもあります。だからこそ、「何が正しくて何が悪い」と決めつけるのではなく、「その会社にとって今本当に必要な変化は何か」を一緒に考えていきます。
FAXにしても、建設や製造、介護などの現場では今でも欠かせない便利な道具です。周囲との連携を大切にする地域企業だからこそ、一気にすべてを変えるのではなく、現場のペースに合わせて少しずつ移行していく。この丁寧な歩み寄りにこそ、伴走支援の本当の価値があると考えています。
大手のコンサルティングのように短期間で劇的に変えるのではなく、現場の納得感を待ちながらじっくり進め、要所ではプロとして的確に助言する。それが私のスタンスです。
DXとAIを、地域全体の活力へ
――今後の展望について教えてください。
一番の目標は、多摩地域のデジタル格差をなくしていくことです。「ITは苦手だけれど、これからは必要だ」と感じている企業にまずは興味を持ってもらい、業務改善やコスト削減、人材の定着といった目に見える成果を実感していただく。その積み重ねが、地域の活性化につながると信じています。
また、「DX・AIの伴走支援パック」という第2の相談窓口(セカンドオピニオン)サービスも始めました。すでに別のIT業者と契約している企業でも、疑問や不安があれば気軽に相談できる環境を整えています。
DXの本当のゴールは、外部の専門家に頼り続けることではありません。自社の業務を誰よりも理解し、デジタルを使って自分たちで少しずつ改善を進められる人材を社内に育てること。そして、その成功体験を地域の企業同士で分かち合っていくこと。そうやって地域全体に変化の輪が広がっていけば、この事業を立ち上げた大きな意義があると考えています。