「関わるすべての人の幸せ」を軸に――理念経営で介護業界に希望を届けるHTC株式会社
HTC株式会社 代表取締役 臼井 宏太郎氏
介護業界を取り巻く環境が大きく変化するなか、HTC株式会社は「我が家に関わる全ての人の幸せ」という理念を軸に、利用者満足と従業員満足の両立を目指した組織づくりを続けています。理念を経営の中心に据え、全員参画型の組織づくりを実践する同社。本記事では、代表の臼井宏太郎氏に、創業の背景や理念経営への想い、今後の展望について伺いました。
「第二の我が家」が生まれる理由
――現在の事業内容と特徴について教えてください。
当社は札幌市を中心に、デイサービス9店舗をはじめ、看護小規模多機能、訪問看護ステーション、ケアプランセンター「我が家」など、計12拠点で介護事業を展開しています。
すべての事業所に「我が家」という名前を付けているのは、高齢の利用者様はもちろん、働くスタッフにとっても「第二の我が家」と感じてもらえるような、家庭的で温かい雰囲気を大切にしたいという想いがあるからです。利用者様とスタッフが家族のように過ごせる環境を目指し、一人ひとりに寄り添った介護を心がけています。
創業以来、全店舗黒字を維持しながら事業を拡大してきました。また、利用者様やご家族、ケアマネジャーの皆様を対象に毎年満足度調査を実施しており、全店舗で平均95点以上という高い評価をいただいています。数字だけを追い求めるのではなく、利用者様から選ばれ、スタッフも誇りを持って働ける事業所であり続けることを何より大切にしています。
――経営理念にはどのような想いが込められているのでしょうか。
当社の理念は「我が家に関わる全ての人の幸せ」です。ここでいう「全ての人」とは、利用者様やご家族、スタッフ、その家族、ケアマネジャー、取引業者、地域の皆様など、事業に関わるすべての方々を指しています。
私たちだけが良ければいいという考えではなく、関わるすべての方が幸せになれる事業所を増やすことで、地域や介護業界にも貢献していきたいと思っています。この理念は会社を飾るための言葉ではなく、日々の行動や経営判断に迷ったときの軸として、常に大切にしているものです。
「人の可能性は無限大」──経営の原点となった原体験
――経営者になられたきっかけを教えてください。
私は大分県出身で、20代は外資系ホテルで飲食マネジメントを経験し、その後は上場コンサルティング会社でコンサルタントとして働いていました。独立後、最初に担当したクライアントが北海道の介護会社だったことがきっかけとなり、そのご縁から2009年にHTCを創業しました。
コンサルタント時代には、赤字だった飲食企業の再建支援に携わり、社員の皆さんと一緒にチラシ配りやミーティングを重ねながら改善に取り組みました。全店舗の黒字化を実現した後の成果発表会では、社員が自信に満ちた表情で成長を語り、社長が涙を流して喜ぶ姿を目の当たりにしました。
そうした経験を通じて、「人の可能性は無限大」という考え方が、自分の経営の原点になっています。その後はクライアントのために全力で取り組むことが自身の喜びとなり、年間最優秀で表彰されるトップコンサルタントになるまで成長することができました。
――経営の軸となっている価値観を教えてください。
コンサルタント時代に、人は目的や使命感を持つことで大きく成長できることを実感しました。赤字企業の再建支援で社員の皆さんと一緒に汗を流し、会社が黒字化した後には、多くの方から感謝の言葉をいただきました。その経験を通じて、人のために力を尽くすことが自分自身の喜びにもつながると気付いたんです。
それ以来、「人の可能性は無限大」という考え方が私の価値観の軸になりました。また、稲盛和夫氏の「利他」という考え方にも強く共感しています。自分の利益ではなく、相手の幸せを考えて行動することが、結果として会社や自分自身の成長にもつながる。その想いは、当社が掲げる理念にも通じています。
理念が浸透する「全員参画型経営」
――組織運営で大切にしていることを教えてください。
当社では「全員参画型経営」を実践しています。大切にしているのは、経営者だけが理念を理解するのではなく、社員はもちろんパートスタッフも含め、一人ひとりがその考え方を自分の言葉で伝えられる状態をつくることです。
そのため、理念をロジックツリーとして言語化し、毎月の会議ではスタッフ自身が目的や目標についてプレゼンテーションを行っています。単に内容を覚えるのではなく、その意味を理解し、日々の行動に落とし込んでいくことで、組織全体が自然と同じ方向を向けるようになると感じています。
――採用や育成で重視していることは何でしょうか。
採用ではスキル以上にマインドを重視しています。当社の理念や考え方に共感し、協調性を持って行動できる方と一緒に働きたいですね。また、人手不足が課題となる介護業界だからこそ、従業員エンゲージメントを高めることを何より重視しています。
私の根底にあるのは、「幸せな従業員こそがお客様を幸せにする」という考え方です。働きがいを感じ、自分の仕事が誰かの役に立っていると実感できる環境があってこそ、利用者様にもより良いサービスを提供できると思っています。
介護業界に希望を届ける未来への挑戦
――今後の展望について教えてください。
2030年までに事業所を約20店舗へ拡大し、より多くの方々に貢献できる会社を目指しています。店舗数を増やすこと自体が目的ではなく、「関わる全ての人の幸せ」を実現できる場所を増やしていくことが目標です。
また、介護業界には厳しいイメージがありますが、理念経営によって利用者満足と従業員満足、そして健全な経営が両立できることを広く発信し、「介護業界でもここまで実現できる」という1つのモデルを示していきたいですね。そうした取り組みを通じて、この業界全体が希望を持てるようになることにも貢献できればと思っています。
――今後取り組むべき課題についてお聞かせください。
最大の課題は、慢性的な人手不足です。その解決には採用力を高めるだけでなく、「ここで働きたい」と思っていただける職場をつくることが欠かせません。
そのためには、職場の雰囲気や人間関係、働きがいを高め、従業員エンゲージメントをさらに向上させていくことが重要だと思っています。理念を軸とした組織づくりをこれからも進めながら、介護業界における新しい組織の在り方を発信していきたいですね。
心を整え、未来への活力を育む時間
――仕事以外ではどのようにリフレッシュされていますか。
休日は映画鑑賞やパーソナルジムで体を動かすほか、スポーツ観戦を楽しんでいます。格闘技も好きなので、社員と一緒に試合を観戦することもあります。また、美味しいものを食べることも好きで、社員と食事に行く時間も、大切なリフレッシュの1つです。
こうした時間で心身をリフレッシュしながら、一人でも多くの方が幸せを実感できる場所を増やせるよう、これからも歩み続けていきたいですね。