本物のチャペルで「幸せな空気」をつくる、鎌倉cuisineのウェディングとレストラン経営

株式会社鎌倉cuisine 代表取締役 藤井 智器氏

株式会社鎌倉cuisineは、かつて本物のチャペルとして使われていた建物を活かし、レストランとウェディング事業を展開しています。同社が目指すのは、単に料理を提供することではありません。食事や結婚式を通して、人が幸せになれる「空気」をつくることを大切にしています。歴史ある建物で事業を展開する藤井氏に、その理念の原点と、ウェディングを軸にした今後の展望について伺いました。

料理の先にある「幸せな空気」をつくる

――現在の事業内容について教えてください。

当社はレストランを中心に事業を行っていますが、一般的なレストランとは少し違います。もともと本物のチャペルとして使われていた建物を、そのままレストランとして活用しているのが大きな特徴です。

30年ほど前にここで結婚式を挙げたご夫婦が、成人した娘さんと一緒に来店されることもあります。私がこの建物を知る前から、ここに思い出を持つ方がいること自体、この店ならではの価値の1つです。

また、チャペルという空間を活かしたレストランウェディングにも力を入れています。この場所で人前式を行うことも可能です。神父様を手配することもできますし、鶴岡八幡宮や教会、お寺で式を挙げた後、当店で会食する形にも対応しています。

――経営理念として大切にしていることは何ですか。

私は、清らかな心が優しい心を生み、その優しさが幸せな空気をつくる、という考えを大切にしています。ここに来た方が穏やかな気持ちで過ごし、最後に「ありがとう、幸せな時間だった」と帰っていただける場所にしたいという思いです。

当社は、料理を提供するだけのレストランではありません。私が本当にやりたいのは、「幸せな空気をつくること」だと考えています。料理は、そのための1つの手段です。

経営上の判断でも、「これは幸せな空気をつくることにつながるのか」を基準にしています。何でも利益につながればよい、という考えではありません。その先に自分たちが目指す空気が生まれるかどうかを重視しています。

原点は、ディズニーランドで感じた「空気」の力

――経営の道に進んだきっかけを教えてください。

私が中学生の頃、初めてディズニーランドへ行った経験が大きな原点になっています。それまでは、ミッキーマウスがいる遊園地くらいに思っていました。ところが実際に足を運ぶと、そこに流れる空気そのものが違ったのです。

当時は今ほど街がきれいではなく、電車やバスでも喫煙する人がいて、吸い殻を地面に捨てる光景もありました。一方で、ディズニーランドはとてもきれいな場所でした。長い行列に並んでいる人たちも、文句を言うのではなく笑顔で過ごしていたのを覚えています。

その光景を見て、「こんな世界があるんだ」と驚きました。みんなが気持ちよく過ごせる空間が、そこにはあったのです。そのときに、将来はこういう「空気をつくる仕事」がしたいと思いました。

――これまでの料理人としての経験は、現在の事業にどのように活かしていますか。

私は星付きのレストランで修業し、前職では規模の大きい飲食企業で統括料理長を務めていました。さまざまなジャンルの料理に携わってきた経験を、現在のウェディングにも活かしています。

当社では、決められたコースをそのまま提供するのではなく、お2人の思い出にあわせて料理を組み立てることが可能です。例えば、「思い出の料理が焼き鳥です」と聞けば、コースの1品として焼き鳥を入れることもあります。

以前は、おばあさまが九州の「がめ煮」をよくつくってくれたという話を聞き、イタリアンのコースのなかにがめ煮を入れました。一般的な結婚式場では、価格帯ごとに料理が決まっているケースも多いと思います。当社では、その方にあわせて内容を変えられることが強みです。

料金プランは設けておらず、装飾を含めて1組ごとに考えています。必要であればウェディングプランナーをつけることも可能です。費用を抑えたい場合には、私ができる範囲で担当しています。

1人体制から見据える、事業拡大に向けた採用

――現在はどのような体制で運営していますか。

現在は、多くの業務を私1人で担っています。日々の営業だけでなく、打ち合わせなども含め、1日に1人と話せるくらいの状況です。

今後は2人体制にできる時期を見据えています。事業がさらに広がった段階では、人材の採用も必要だと思っています。

――ウェディング事業を伸ばす上で、どのような体制を目指していますか。

現在、ウェディングは年間でおよそ6件あります。春と秋に動きやすく、真夏や真冬は件数が少なくなる傾向なため、まずは、これを倍ほどに増やしたいと考えています。

理想は、毎週末にウェディングが入る状態です。そこまでいけば、1人で仕込みや営業を回すのは難しくなります。その段階では人材を採用し、複数人で運営できる体制にしていきたいです。

ウェディングを軸に、「鎌倉ミートソース」を次の入口へ

――今後、もっとも伸ばしていきたい事業は何ですか。

一番の軸にしたいのはウェディングです。結婚式は、半年から1年先の予定を立てていくものだと考えています。そのため、まずウェディングの予約を先に入れ、空いている日程でレストランやパーティーを行う形が理想です。

この場所はもともとチャペルで、最大40人ほどの規模となっています。大人数向けの式場とは違い、レストランの延長として料理の質を保ちつつ、柔軟に対応できるところが特徴です。

建物というハード面だけが強みではありません。1組ごとに料理や内容を組み立てられるソフト面も、当社ならではの価値だと考えています。その両方を活かしながら、ウェディング事業を伸ばしていきたいです。

――ランチで始めた「鎌倉ミートソース」について教えてください。

8月から、ランチを「鎌倉ミートソース」という業態に変えました。もともとコース料理のなかで出していたミートソーススパゲッティが、お客様の間で名物のようになっていたことがきっかけです。

一般的なものより玉ねぎを多く使い、じっくり炒めてジャムのような状態にします。そこから約8時間煮込み、肉を柔らかくしながら、甘みとうま味を引き出す料理です。現在は、ランチを、そのミートソースのセット1本に絞った専門店のような業態で運営しています。

――「鎌倉ミートソース」を、今後どのように育てていきたいですか。

将来的には、「鎌倉ミートソース」というブランドが独り立ちできるようにしたいという考えです。同時に、このランチ業態には、ウェディング事業へ投資するための資金をつくるという役割もあります。

現在は、これから投資するための資金をつくっている段階です。まずは足元の収益と認知を築き、その先でウェディングをしっかり伸ばしていきたいと考えています。

そして、今の小さな空間から少しずつ範囲を広げていくことが目標です。最終的には、私が昔から思い描いてきた「幸せな空気のある街」へとつなげていきたいと思っています。

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