銀座のバーから全国へ、店と外部活動を両立しながら描くバーテンダーの新しいあり方
株式会社ゴヤ 代表取締役 山崎 剛氏
株式会社ゴヤは、東京・銀座でバーを営んでいます。2018年の開業から8年、店舗でカクテルを提供するだけでなく、講演やコーチング、国内外でのゲストバーテンダー、チャリティーイベントへの参加など、活動の幅を広げてきました。一方、出張の増加によって店舗の営業日数が減るなど、新たな課題にも向き合っています。10年目を見据え、店と外部活動のバランスやチームづくりをどのように考えているのか、山崎氏に伺いました。
目次
お客様が素の自分でいられる「サードプレイス」をつくる
――現在の事業内容について教えてください。
東京・銀座でバーを経営しています。2018年にオープンし、現在8年目です。もともとはシンプルにバーを営んでいましたが、現在は講演やコーチング、出張でカクテルをつくる仕事など、活動の幅が広がっています。
昨年は中国でゲストバーテンダーとしてカクテルをつくりました。国内のさまざまな地域にも足を運んでいます。今年からは、石川県・能登のチャリティイベントでカクテルをつくる活動にも参加するようになりました。
――バーを運営する上で大切にしていることは何ですか。
私は、バーはお客様が心を休めに来る場所だと考えています。家庭でも職場でもない、素の自分でいられる「サードプレイス」としての役割がある場所です。
もちろん、おいしいカクテルをつくることは大切だと思います。ただ、それだけではありません。目の前のお客様ときちんと向き合い、人と人との関係のなかで生まれるホスピタリティを大事にしています。
12年半の銀座修業を経て独立、経営して初めて見えたもの
――独立して経営の道に進まれたきっかけを教えてください。
私は銀座のバーで12年半修業しました。バーテンダーは、修業をした後に「一国一城の主になる」ことを目指す人が多く、私も当然のように自分の店を持つつもりで働いていたのです。
東京に出て修業を始めた当初は、地元の高知に戻って店を出したいと考えていました。しかし、修業を続けるなかで、銀座で店をやると決めました。
当時の私はかなり猪突猛進で、「自分は銀座でやるんだ」という思いが強かったですね。勢いで店を出した部分もあったと思います。
――実際に経営者になって、どのような変化がありましたか。
私はバーテンダーとして修業し、技術を身に付ける事を中心に過ごしてきました。そのため、独立して初めて経営の難しさや大変さに直面したのです。
以前は、自分が積み重ねてきたことへのプライドやポリシーで突き進むところが強かったと思います。ただ、今は「あまりこだわらない」ことも大切だと考えるようになりました。
おいしいカクテルをつくることや、目の前のお客様に喜んで帰っていただくこと、バーテンダーらしい振る舞いは、すでに自分のなかに身についています。それ以外の部分については、もっと柔軟でありたいですね。
能力だけでなく人間性を重視し、それぞれの得意を活かす
――現在はどのような体制で店舗を運営していますか。
現在、基本的に社員はおらず、アルバイトのスタッフが5、6人います。店舗営業を手伝ってもらうだけでなく、それぞれが得意そうなことについて相談し、少しずつ仕事をお願いしているところです。
これからは仕事を固定化しすぎず、得意な分野があれば、その人に挑戦してもらいたいと考えています。
以前の私は、自分の判断基準に合っているかどうかで人を見るところがありました。今は相手の良い部分に目を向け、その持ち味をどう活かしてもらえるかを大切にしたいですね。
――今後、特に人に任せていきたい業務はありますか。
出張や外部での活動が増えると、経理や領収書の処理、スケジュール管理など、管理業務も増えていきます。すべてを私一人で抱えるのは難しくなっている状況です。
そのため、管理の部分はサポートしてもらいたいと考えています。自分でなくてもできる仕事については、きちんと受け渡していく必要があります。
信頼できる人から紹介してもらったり、今いるスタッフのなかで得意そうな人に相談したりしながら、少しずつ進めてきました。
店で待つだけではなく、自ら外へ出て仕事をつくる
――店舗の外で活動を広げている理由を教えてください。
当店は、「私のカクテルを飲みたい」と来てくださるお客様に支えられている部分が大きいです。そのため、私がいないときは店を休んでいます。
一方で、私が風邪をひいたり病気になったりして動けなくなれば、店舗の運営そのものが成り立たなくなります。そこで、店だけにとらわれず、外での活動による収益化も必要だと考えるようになりました。
また、コロナ禍では、飲食店はどれだけ集客に取り組んでも、最終的に来店するかどうかはお客様に委ねられていると実感したんです。私は待つよりも、自分から出張して外に出ていくほうが性に合っているようです。
――その先に描いている構想について教えてください。
私は現在、高知に1、2か月に一度ほど帰っています。現地で教える仕事をしたり、高知大丸の催事でカクテルをつくったりしてきました。地元に関する依頼については、できる範囲で受けるようにしています。
以前から、高知にウイスキーの蒸留所をつくりたいという構想があります。それについても、まだ諦めていません。
2年後の10年目に向けて、私一人ではやり切れないことを人に頼り、それぞれの得意分野を活かせるチームをしっかりつくりたいですね。
自然に触れ、体と心を整える時間を大切にする
――リフレッシュするときは、どのように過ごしていますか。
私はもともとカクテル大会に挑戦していて、そのなかで体づくりにも取り組むようになりました。今はジムでトレーニングをしたり、ヨガや坐禅をしたりしています。
最近では、滝行も趣味の1つです。ほかにも山に登るなど、時間があるときは体を動かし、自然に触れることでリフレッシュしています。
こうした過ごし方をするようになったのは、カクテル大会を卒業してからです。現在まで5年ほど続けています。
――特に好きなお酒はありますか。
私はスペインのシェリーが好きです。シェリーに関するライセンスも持っています。
初めての海外旅行も、スペインでのシェリーの研修でした。シェリーはワインの仲間にあたるお酒で、当店でも珍しい樽出しシェリーなど、さまざまな種類を置いているのです。
店舗でお客様と向き合う時間を大切にしながら、外での活動にも取り組み、自分一人で抱え込まない体制をつくっていきたいと考えています。10年目に向けて、自分自身の枠を決めすぎず、新しい依頼や縁にも柔軟に向き合っていきたいですね。