「やりたいことをやる」を貫いて30年以上!人を生かす経営と、その先に描く第2の人生
株式会社 D.C.T 代表取締役CEO 猪飼 泰邦氏
28歳で独立し、美容業界に特化した広告代理店を皮切りに、美容、金融など幅広い分野で事業を展開してきた猪飼氏。30年以上にわたる経営を経て、現在は事業の多くを元社員へ譲り、自身は次の人生を見据えています。本記事では、起業の原点や組織づくり、人への投資、これから大切にしたいことについて伺いました。
目次
好奇心から広がった30年以上の事業づくり
――28歳で起業された経緯を教えてください。
大学生の頃から、雇われて給料をもらう働き方が自分にはあまり合わないと感じていました。父は製造業を営んでいて、会社を継ぐ道もあったのですが、大学時代に現場を経験して「自分には無理だ」と思ったんです。
起業したい気持ちはありましたが、学生のままでは実績もありません。そこで、独立する人が多い大手出版社を知り、「ここで勉強しよう」と入社しました。5年間働き、「今ならいける」と感じたタイミングで独立しました。
――これまで、どのように事業を広げてこられたのでしょうか?
最初に立ち上げたのは、美容室に特化した広告代理店です。当時は美容室だけを対象にした広告会社が珍しく、多くの依頼をいただきました。
そこから美容系のサロンやイベントにも広げ、その後は保険代理店や資産運用、FP、マネーセミナーなど金融分野にも携わりました。興味を持った分野に挑戦してきた形です。
――挑戦するか迷ったとき、何を基準に判断していますか?
私は「やらないで後悔するくらいなら、まずやってみよう」と考えます。やってみて失敗したら、またやり直せばいいんです。
自営業は、自分で判断して方向を変えられます。だからこそ、面白そうだと思ったことにはまず挑戦する。その積み重ねで、いろいろな事業に関わってきました。
「会社はチーム」――人の力を引き出す組織づくり
――組織づくりで大切にしてきたことは何ですか?
私は、会社も1つのチームだと思っています。そのため、社内では役職で呼ばず、トップから新卒まで全員「さん」付けです。私自身も「社長」と呼ばれるような関係ではありませんでした。
風通しが良く、立場に関係なく話せる環境の方が、一人ひとりの力を出しやすいと思っています。何でも言い合える、居心地のいい職場づくりを大切にしてきました。
――社員とのコミュニケーションで意識していることを教えてください。
社員が抱えている悩みや不満を、個別に聞くことを大切にしてきました。特に営業は数字で結果が見える仕事なので、成果が出ないと本人も落ち込みます。
そこで上から怒るのではなく、「この人の強みは何だろう」と考えます。本人が気づいていない良さを見つけ、そこを伸ばす。結果が変われば自信やモチベーションも変わるので、良いところを引き出すことを意識してきました。
――一緒に働きたい人は、どのように見極めてきましたか?
私は求人広告をあまり使わず、スカウトすることが多かったですね。以前、求人の仕事をしていた経験から、1〜2時間の面接だけでは、お互いのことは分からないと感じていたからです。
交流会などで気になる人がいれば、お茶をしながら仕事や雑談をします。そのなかで「この人とは合いそうだ」と感じたら声をかける。能力だけではなく、相性や、その人が力を発揮できる環境をつくれるかを大切にしてきました。
物よりも人へ――経営を支えてきた「人への投資」
――これまでの経営で、投資して良かったと感じるものは何ですか?
一番は、人への投資です。社員を採用することもそうですし、外部のビジネスパートナーと一緒に仕事をすることも含まれます。
「この人と一緒にやって良かった」と思える出会いは、大きな支えになります。物よりも、人に投資することの方が強いと感じています。
――人やパートナーとの関係を重視する理由を教えてください。
結局、仕事を動かしているのは人だと思うからです。今はAIなど便利なツールもありますが、人にしかできないことはたくさんあります。
社員も外部パートナーも、私にとっては同じチームの仲間です。お互いの強みを活かせれば相乗効果が生まれますし、それが事業を支える力にもなります。
「やりたいことをやる」――変化してきた経営の価値観
――経営を続けるなかで、考え方はどのように変わりましたか?
若い頃は、とにかく利益を出したい、会社を伸ばしたい、社員にたくさん給料を出せる会社にしたいという気持ちが強かったです。
今は事業の多くを元社員に譲り、自分が現場に関わる機会も減りました。年齢を重ねたこともあり、これからは自分の利益より、人のためになることや社会に役立つことを大切にしたいと考えています。
――経営において「これだけは譲れない」というものはありますか?
自分が好きだと思えること、やっていて楽しいと思えることを選ぶことです。向いていないことや、楽しくないことは無理にやりません。
理想を言えば、仕事がお金を稼ぐためだけの手段ではなく、趣味や遊びのように楽しめる状態が一番です。「やりたいことをやる」という姿勢は、ずっと大切にしてきました。
――現在、特に大切にしていることを教えてください。
今は何より健康です。過去には心臓の大きなトラブルや、事故による脳内出血を経験しました。若い頃は仕事中心で、体のことをあまり考えずに生活していたんです。
その経験もあり、今は食べるものにも気を配っています。元気に過ごせなければ、仕事も人生も楽しめません。これからの時間をどう生きるかを考えるうえでも、健康を一番大切にしています。
次の世代に託し、自分らしい第2の人生へ
――今後の展望について教えてください。
これまで立ち上げてきた事業は、元社員やリーダーにほぼ譲渡しました。これからは若い人たちがやっていけばいいと思っています。
私はあと数年でセミリタイアするつもりです。今も一部の仕事には関わっていますが、少しずつ第2の人生へ気持ちを移しています。
――これからの人生で挑戦したいことはありますか?
自宅の小さな庭で野菜を育ててみたいですね。義理の兄が育てた四季折々の野菜を食べて、そのおいしさに感動したことがきっかけです。仕事ではなく、ライフワークとして楽しみたいと思っています。
これまで仕事ばかりだったので、これからは妻との時間も大切にしたいですね。一緒に旅行へ行くなど、今までとは違う時間の使い方をしていきたいです。
――仕事を離れた時間から、経営に生かされていることはありますか?
スポーツ観戦が好きで、特にサッカー、野球、バスケット、バレーなどのチーム競技をよく見ます。
会社も同じで、全員で一つのチームだと思っています。監督が選手一人ひとりの強みを活かすように、経営者も人をどう活かすかが大切です。スポーツを見ていると、チームづくりや人との関わり方について学ぶことが多いですね。
これからも、人それぞれの強みを活かしながら、次の世代がのびのびと力を発揮できるチームであってほしいと思っています。