「知っている」を「できる」に変える――社員教育研究所が貫く令和版「汗と涙と一生懸命」
株式会社社員教育研究所 代表取締役 元橋 一朗氏
株式会社社員教育研究所は、長年にわたり人材育成に取り組んできた教育会社です。テープ教材による教育から始まり、現在は「管理者養成基礎コース」をはじめとした研修・訓練、セミナーなどを展開しています。大切にしているのは、知識を得るだけで終わらせず、実際の行動につなげること。代表取締役の元橋一朗氏に、同社が培ってきた人材教育の考え方や代表就任の背景、組織づくり、今後の挑戦について伺いました。
「知っている」を「できる」に変える人材教育
――現在の事業の特徴や、他社にはない強みについて教えてください。
当社は昭和42年から続く会社で、人材育成のパイオニアともいえる存在だと考えています。当初はテープ教材を発売し、営業やセールスのノウハウを伝えていました。ただ、知識として理解しても、実際の行動に移せないという課題があったんです。そこで、その課題を解決するために管理者養成学校を設立しました。
現在のメインプログラムの一つが、13日間の合宿訓練「管理者養成基礎コース」です。40kmの夜間行進やスピーチ訓練などを通じ、自分で考え、判断し、決断して行動する力を身につけていきます。いわゆるその昔、「地獄の訓練」と言われた名物コースです。
厳しいから「地獄」と呼ばれてきたというより、自分自身と向き合うことが厳しいんです。これまで管理者として部下にどのような指導をしてきたのか、自分は本当にできていたのか。そうしたことを振り返り、自分をさらけ出す時間でもあります。
――教育で大切にしている考え方を教えてください。
「知行合一」という言葉を大切にしています。「知っている」ことと「できる」ことは同じではありません。挨拶や名刺交換でも、知識としてはわかっていても、実際にやってみるとできていないことがあります。
だからこそ、当社では知っていることを「できる」ようになるまで繰り返しトレーニングします。基本的な動作からプレゼンテーションまで、体に覚え込ませる。それが当社の教育の大きな特徴ですね。
出版業界から経営へ――舞台を変えて挑戦する
――代表に就任された経緯をお聞かせください。
私は代表になってまだ1年ほどです。それまでは出版社に36年間勤め、広告業務などに携わっていました。社員教育研究所は創業者の一人であった父が代表を務めており、昨年9月に父が亡くなったことが、会社を継承する直接のきっかけです。
長く出版の仕事をしてきたので、本や雑誌への思いは今でもあります。一方で、教育ビジネスにも挑戦してみたいという気持ちがありました。出版と教育はまったく違うように見えて、私のなかでは同じ方向を向いていたんです。
経営はもちろん大変です。それでも、舞台を変えて新しいことに挑戦してみようという気持ちが勝ちました。父の死がきっかけではありましたが、新しい教育ビジネスに経営者として携わることと、自分がやりたいことが一致したという感覚ですね。
――経営者になり、仕事に対する意識は変わりましたか。
出版社では本という在庫を抱え、それを販売していくことが1つの大きなリスクでした。一方、人材教育では、講師という「人」がサービスの中心になります。
だからこそ、人を育てる責任の大きさをこの数か月で強く感じています。お客様企業の経営者や管理者の思いを預かり、直接伝えにくいことも含めて、教育を通して社員の方々に伝えていく。それも私たちの役割だと考えています。
一人ひとりと向き合い、同じ夢を描ける組織へ
――社内のコミュニケーションで大切にしていることは何でしょうか。
当社には講師をはじめ、さまざまな役割を担う従業員がいます。そのなかで私が大事にしているのは、一人ひとりと向き合うことです。できれば一人ずつ話をして、その人が何を考えているのかを聞きたいと思っています。
なかなか全員とじっくり話すのは難しいですが、廊下ですれ違ったときにも声を掛け合う。そうやって、わざわざでもお互いに声を掛けながら仕事をしていくスタイルが私は好きです。
――採用や組織づくりでは、どのような人と働きたいですか。
同じ方向を向き、同じ夢を描ける人と仕事をしたいですね。私自身、前職では広告関連の仕事をしていたので、マーケティング意識を持った人とも一緒に仕事をしていきたいと思っています。
そして、口先だけではなく行動力のある人。私自身、考えるより先に体が動いてしまうこともあります。もちろん止めてくれる人も大切ですが、できれば一緒に走り、失敗も共有できる仲間がいいですね。
将来的には自分たちの会社だけが良くなればいいとは考えていません。教育を受けてくださる企業と一緒に成長し、お客様が満足のいく成果を上げていく。そのお手伝いをするのが私たちの仕事です。
外国人教育への挑戦と、変わらない「一生懸命」の精神
――今後、特に取り組んでいきたいことを教えてください。
一番取り組みたいのは外国人教育です。今後、外国人労働者が増えていく中で、仕事の技術はそれぞれの会社で教えていただき、私たちは日本で働くうえでの礼節や礼儀、日本人が大切にしてきた精神を伝える役割を担えないかと考えています。
これまでも外国人の訓練生を受け入れてきましたが、今後はより多くの方に対応できる外国人向けプログラムをつくっていきたいですね。すでに走り始めていますが、言葉の壁など、向き合わなければならない課題もあります。
――これからも変えずに大切にしたいことは何でしょうか。
当社が掲げているのが「汗と涙と一生懸命」です。昭和的な言葉だと言われることもありますが、私は令和の今だからこそ重要だと思っています。
タイパやコスパ、AIなど、効率を高めることももちろん大切です。それも行っています。ただ、それだけではなく、一生懸命に取り組むという精神は、仕事をするうえでこれからも必要ではないでしょうか。プログラムや事業は時代に合わせて新しくしていかなければなりませんが、この根底の部分は揺らがせたくありません。
読む、書く、話す、考える、行動する。そうした基本をしっかり身につけ、「知っている」を「できる」に変えていく。そして「汗と涙と一生懸命」という思いを、日本人にも外国人にも伝えていくことが、これからも私たちが担っていきたい役割です。