安全な移動を仕組みからつくる――モビリティと共存する未来へ
Sidekick works 代表 牧野 俊介氏
新しいモビリティが普及する一方で、利用者が交通ルールを十分に理解しないまま走行することによる危険や、歩行者・自動車のドライバーとの共存が課題となっています。Sidekick worksでは、インタラクティブ動画を活用し、利用者が交通ルールを学んだうえでモビリティを利用できる仕組みの構築を目指しています。現在はクラウドファンディングの立ち上げに向けた準備を進める段階。本記事では、代表の牧野俊介氏に事業を始めた背景や大切にしている考え、現在の組織づくり、今後描いている展望について伺いました。
安全なモビリティ社会への一歩
――現在取り組んでいる事業について教えてください。
まだ本格的に事業をスタートした段階ではなく、クラウドファンディングを立ち上げて資金を調達し、運営していくための準備を進めています。フェーズで表現すると「0.5くらい」だと思っています。
事業立ち上げのきっかけは、シェアサイクルなどのモビリティを見て、私自身が乗ってみたいと思ったことでした。ただ、自動車のドライバーから煙たがられていたり、歩行者から危ないと思われていたりする状況を見て、自分が利用することにも危険を感じたんです。
交通ルールについて調べても、警察庁や地域の交通安全課のホームページを見るなど、自分から情報を探しにいかなければ分からない部分があります。それでは利用者が安全にモビリティを活用することは難しいのではないかと考えました。
――具体的には、どのような仕組みを考えているのでしょうか。
インタラクティブ動画を使い、実際の走行場面を見ながら交通ルールを学べる仕組みを考えています。
例えば「この場合は速度を落とすのか」「一時停止するのか」といった問題をクイズ形式で進め、最後まで視聴するとスマートモビリティの鍵が開いたり、安全に運転するための学習を終えたことが分かる画面が表示されたりするような形です。
まずは自分が住んでいる江戸川区で実証実験を行いたいと考えています。現在はクラウドファンディングの準備を進めながら、区議会議員の方に相談したり、動画制作会社と内容について話を進めたりしています。
「知らない」ことで生まれる反則を減らしたい
――事業を進めるうえで大切にしている考えを教えてください。
新しいものが社会に出てきたとき、ルールが十分に知られていないことで嫌われてしまうことがあると思っています。
モビリティについても、交通ルールを知らずに乗っている人がまだ多く、危険な走行をしてしまうことで歩行者や自動車のドライバーから悪い印象を持たれてしまっています。ただ、危険な運転をしている人たちも、ルールそのものを知らないケースがあるのではないかと考えています。
そのため、「違反すると反則金があります」と伝えるだけではなく、実際に運転する人へ「この場面ではどう走ればよいのか」を分かりやすく届けることが重要です。みんなが交通ルールを理解し、歩行者や自動車、さまざまなモビリティが共存できる地域社会につながる仕組みをつくりたいと思っています。
――これまでのキャリアは、現在の事業にどのようにつながっていますか。
現在は日中、家電メーカーの商品開発に携わりながら、Sidekick worksの事業を少しずつ育てています。
以前は広告代理店に約20年勤務していました。その経験を生かして、現在は企画や広報などを自分で担当しています。
一方で、一人ですべて行うことはできません。会社運営のバックヤードについては、物流会社の社長を経験した先輩に協力してもらっています。今は2人の経験を組み合わせながら、少しずつ形をつくっているところです。
経験を掛け合わせ、組織を育てる
――現在の組織はどのような体制ですか。
現在は2人で進めています。私は企画や広報を中心に担当し、もう一人には経理や総務など会社運営に関わる部分をお願いしています。
弁理士の方との話やホームページ構築についての相談は相手が進め、UIやUXなど私が関わるべき内容については一緒に話をするという形です。それぞれが持っている経験を混ぜ合わせながら進めています。
――今後、どのような人と一緒に働きたいと考えていますか。
将来的に必要になると感じているのが、デジタルマーケティングに詳しい人です。
私自身も経験してきた分野ですが、今は以前とは内容も大きく変わっています。GoogleやInstagramなども常に変化しているため、新しい情報を把握しながらアップデートできる人がいるといいですね。
また、今後は映像編集まで自分で手が回らなくなると思います。その段階では動画編集を担える人や、デジタルメディアのプランナーなどが加われば、さらに面白い組織になると思っています。
モビリティの先に描く交通の未来
――仕事以外でのリフレッシュ方法を教えてください。
6歳の柴犬を飼っています。息子がサッカー選手をしているのですが、犬と一緒に試合を観に行くことがあります。一方通行ではありますが、試合の感想を犬に聞かせながら散歩するのがリフレッシュになっているかもしれません。
――今後の展望について教えてください。
クラウドファンディングは2回を構想していて、その先で法人化したいと考えています。まずはプロトタイプをつくり、実際に走行しながら「どのような運転が危険なのか」「どこを走ればスムーズに移動できるのか」といった情報を発信できる形にしたいです。
将来的にはモビリティだけではなく、レンタカーやカーシェアにも仕組みを広げたいと思っています。
例えば、カーシェアを利用するときに交通ルールを学べるインタラクティブ動画が流れ、それを最後まで見ることで車の鍵を開けられるような仕組みです。それによって交通ルールを意識するきっかけをつくれるのではないかと思っています。
まだ構想段階ではありますが、この仕組みやコンテンツが広く浸透し、安全な移動につながるものへ育てていきたいと考えています。