捨てられるはずだったものに、新たな価値を。
リユースと卸販売という2軸の事業で、急成長を遂げる株式会社EREWAJAPAN。
代表の高橋豊友氏は、スポーツや営業、パーソナルトレーナーといった多彩な経験を糧に、わずか1年で組織の土台を築き上げてきました。
今回は、事業の背景や独立のきっかけ、そして未来の展望まで、その熱い想いに迫りました。
目次
隠れた資産に光を当てる、2軸のビジネスモデル
現在の事業内容と、その特徴について教えてください。
当社は、大きく分けて「リユース事業」と「販売代理店(卸売)事業」の2軸で展開しています。
リユース事業では、廃棄業者・不要品回収業者・遺品整理業者などと提携し、再販可能な商品を預かって代理出品しています。これにより、廃棄コストがかかる前に、使えるものを活かすという視点で、新たな価値を生み出しています。
個人のお客様からの依頼にも対応しており、「これって売れるの?」という品でも、しっかり査定し、写真撮影から出品・販売・発送まですべて代行しています。
販売代理店事業では、ニューサンライト株式会社の応用化学製品を中心に、微生物由来の消臭剤、滑り止め溶剤、石材の洗浄剤、窓ガラスのクリーナー、さらには梱包用資材として活躍するAMESON社のプチプチ製造機の販売まで、現場ニーズに応じた商材を卸販売しています。
特に高齢化に伴い需要が拡大する特殊清掃現場などでも活躍しています。
EC販売が中心とのことですが、実店舗や支店展開はされていますか?
現在、実店舗は持たず、すべてECで展開しています。メルカリやヤフオクといった既存プラットフォームを活用し、販売チャネルを確立しています。
仕入れは東京・千葉・神奈川・埼玉の1都3県の業者と提携し、独自ルートによる再販品の確保が強みです。
また、北海道・南富良野には支店があり、現地のツアー会社と連携し、スキー用品や家電などの不要品を販売しています。
広大な土地を持つ北海道では、倉庫に不要品が溜まりやすく、いざ廃棄となれば莫大なコストがかかります。現地の人を業務委託で採用し、地域内で再販可能な品の選定・販売を担ってもらうことで、地域に根差した課題解決型のビジネスとしても展開を広げています。
「やれば結果が出る」感覚が、独立の原点だった
これまでのキャリアと、独立に至るまでの経緯を教えてください。
高校時代は剣道部に所属し全国大会にも出場したのですが、怪我でリハビリ生活に。
そこから筋トレにはまり、大学ではボディビル部を自ら立ち上げ、学生大会で団体で全国3位という成果を収めました。
ダーツ大会で賞金を得たり、パーソナルトレーナーとして活動したりと、常に「好きなことに打ち込み、結果を出す」ことを続けてきました。
在学中にはパーソナルトレーナースクールの立ち上げにも携わり、将来的に独立することは当初から視野にありました。その準備として、新卒では医療機器メーカーの営業職に就職。「5年で辞める」と決めて入社し、実際に5年で退職しました。
正社員としての経験を経て、独立を決断した理由は何だったのでしょうか?
3年ほど副業として物販に取り組み、一定の成果を得たことで「これはビジネスとして成立する」と確信を持てました。
ですが、会社の人事異動によって本業の負担が増し、副業にかけられる時間が激減してしまったんです。結果として副業収入も下がるという本末転倒な状況に陥りました。
このままでは限界があると感じ、家族に相談しました。妻の「もう独立していいんじゃない?」という言葉もあり、少し休養を取ってから起業に踏み切ったことがきっかけですね。
実際に独立してみて、感じていることを教えてください。
毎日が楽しくて仕方ありません。副業時代よりも格段に忙しくなりましたが、自分の裁量でやりたいことに取り組める今の環境に、やりがいを感じています。
スポーツ時代から「やればやるほど結果が出る」という感覚が好きで、それが今のビジネスにも通じています。まだ1位の経験はありませんが、EREWAJAPANという事業でそれを掴み取りたいですね。
もちろん、会社員時代に感じていた「社会的信用」や「安定」のありがたさも痛感しています。でも、時代の変化が早い今だからこそ、自分のスキルと稼ぐ力を育てておくことが、将来の本当の安定につながると信じています。
家族と共に進む経営─“ひとり社長”でも支えは一人じゃない
現在、どのような体制で会社を運営されているのでしょうか?
私は基本的に「ひとり社長」として経営を行っており、会計業務は妻が担ってくれています。その他に、北海道支店の業務を担当するパートナーが1名、数名のアルバイトスタッフがいて、それぞれ業務委託という形で連携しています。
特に妻の存在は非常に大きいです。彼女は学生時代にNGO法人(政府から独立して社会的・人道的な活動を行う非営利団体のこと)で代表を務めた経験があり、イベントの収益で救急車を購入し、カンボジアへ無償提供するような行動力のある人。経営的な視点やリーダーとしての資質も兼ね備えており、独立するにあたっても、最初から反対されることは一度もありませんでした。
家族の支えが、起業の原動力にもなっているのですね。
まさにその通りです。正社員を続けることで家族を守らなければという気持ちもありましたが、やればやるほど伸びていくこの業界で本気で勝負したいという気持ちが強まりました。
ただ、会社を辞めることは「逃げ」と見られるのではという不安もあったのですが、妻が「いいんじゃない?」と自然に背中を押してくれて、ようやく踏み切れたんです。
3歳になる娘もいて、今では平日にディズニーランドに行けるような働き方ができるのは独立の特権ですね。
もちろん、休みは月に1~2日程度しかないほど忙しいですが、やりたいことに打ち込めている今の生活に満足しています。
“誠実”をビジネスの芯に─義を貫く経営のかたち
経営をするうえで、大切にしている信条はありますか?
私の座右の銘は「義に死すとも不義に生きず」。
これは江戸時代の会津藩主・松平容保の言葉で、意味としては「不正をしてまで生き延びるよりも、正道を貫いて潔く散る方がいい」というものです。
この言葉を胸に、ビジネスでも誠実さを何より大切にしています。
例えば、どのような場面でその信条が活きていますか?
リユース事業においては、お客様からお預かりした商品を代理で出品しています。そのため「いくらで売れたのか」「どれだけ手数料が引かれたのか」といった内容を、完全に明示しています。いわゆる「明朗会計」のスタイルですね。
リサイクルショップなどでは、100円で買い取られたセーターが6,000円以上で売られているというケースもよくあります。私自身、昔お気に入りの靴を1,000円で買い取られ、翌週に12,000円で販売されているのを見て、強い違和感を覚えました。
そうした経験があるからこそ、「出品価格や売上の開示をすることで、お客様と長く誠実に付き合っていける」─そう信じて事業に取り組んでいます。
目指すのは“世界に広がるEREWA”
今後の事業展開や、描いている未来像について教えてください。
EREWAの意味を伝えたいなと考えています。
社名には、
ECO(環境への配慮)
RE(再生・リユース)
WA(日本の和の心)
という3つの思いを込めています。
大きく分けて2つの展望があります。1つ目は、国内拠点の拡大です。現在の北海道支店が非常にうまく機能しており、これは再現性のある成功モデルだと考えています。今後はこの仕組みを、関東以外の主要都市にも展開していきたいと思っています。
もう1つは、海外展開です。日本国内で集めた良質な中古品を、海外に向けてどんどん販売していくために、現地での輸送や販売ルートを確保したいと考えています。そのためにも、今からしっかりと貿易体制を整えておく必要があります。
実は「EREWAJAPAN」という社名にもその想いを込めていて、今後「EREWA USA」「EREWA THAILAND」「EREWA CHINA」など、各国での展開を見据えています。
世界のどこにいても、「もったいない」の精神とともに再利用文化を広げられる企業にしていきたいですね。
進出するエリアにこだわりはあるのでしょうか?
特定の地域に固執はしていません。ご縁があったところから柔軟に展開していければと思っていますが、戦略的に見ると高級住宅地や別荘地との相性が非常に良いと考えています。
例えば、すでに熱海や箱根、軽井沢といった地域とのご縁があり、そうしたエリアには価値ある物が多く眠っています。
“眠っているモノ”というと、具体的にどのようなものですか?
想像を超えるレベルで、高級品や未使用品がそのまま捨てられていたりします。これは本当に“もったいない”ことです。
私たち日本人が日常的に使っている「もったいない」という言葉が、いまや世界標準語にもなりつつある中で、その言葉に込められた精神を実践し、循環型の社会を築く一翼を担えたらと思っています。
経営に挑むあなたへ──“協業”の姿勢で、共に歩む仲間に
最後に、これから経営に挑戦しようとしている読者の方々へメッセージをお願いします。
私自身、この会社を立ち上げてまだ1年ほど。まだ経験は浅い立場ではありますが、実際に動き出してみると驚くほど楽しくて、充実感のある毎日を過ごせています。
何より大切なのは、自分の理念や信念をぶらさずに持ち続けること。それさえあれば、どんな困難があっても、乗り越えていけると実感しています。
これから起業を考えている方、独立を迷っている方がいたら、ぜひその想いを胸に、勇気を持って一歩を踏み出してほしいと思います。私もまだまだ道半ばですが、将来的にはそうした方々の力になれる存在になりたい。そんなふうにも考えています。また、私は「競合」ではなく「協業」というスタンスを大切にしています。
リユースという事業は、社会にとっても大きな意味を持つ領域です。一緒に手を取り合いながら、より良い未来をつくっていけたら嬉しいです。