株式会社ディスフィー代表の祝達哉氏は、ゲームや映像、音楽をはじめとする幅広いエンターテイメント事業を展開しています。好きなことを仕事にしながら、仲間と共に新たな価値を創り出してきました。本記事では、会社の現状や理念、祝氏のキャリアと経営者としての歩み、社員との関わり、未来の展望、そしてプライベートに迫ります。
目次
エンターテイメントの力で人々を喜ばせる会社へ
現在の事業内容と特徴について教えてください。
弊社は「人々が喜ぶことに垣根を設けず取り組む」という理念のもと、エンターテイメント分野を幅広く手掛けています。ゲーム、映像制作、音楽を中心に、楽しさや感動を届けられるものであれば積極的に挑戦してきました。
創業当初はゲーム開発・運営がメイン事業で、大型プロジェクトも2年ほど担当してきました。その経験を通じてノウハウを蓄積し、現在では映像制作やSNS運用、さらにゲームPRやマーケティング支援などへと事業領域を広げています。クライアントの課題に応じて柔軟に対応し、「NG領域を設けないスタンス」で幅広くサポートしていることが特徴です。
社員数や組織体制についても教えていただけますか。
現在は私を含めて9名体制で活動しており、正社員5名と業務委託のメンバー3名が在籍しています。正社員と業務委託では雇用形態の違いはありますが、現場での関わり方や日々の業務においては区別を設けず、同じチームの一員として取り組んでもらっています。立場にかかわらず、互いを尊重し合いながら協力し合う風土を大切にしており、そのことがプロジェクトの柔軟さやスピード感につながっています。
テレビ業界からゲーム業界へ 経営者としての歩み
最初のキャリアや、ゲーム業界に進まれたきっかけを教えてください。
最初はテレビ局のADとして映像制作の現場に飛び込みました。当時は「映画をつくりたい」という思いが強く、映画につながると考えてテレビ業界に入りました。報道や情報番組で徹夜続きの厳しい環境を経験し、映像制作の基礎を徹底的に学びました。そんな中でファイナルファンタジーなど最新ゲームの映像表現に触れ、「ゲームは映画を超える表現になり得る」と衝撃を受けました。2003年以降はゲーム業界に転職し、開発会社やゲームメーカーでキャリアを重ねてきました。
起業を意識するようになった経緯について教えてください。
20代の頃は「自分の城を持ちたい」という気持ちが強くありましたが、結婚や子育てを経て一時は安定を優先していました。タカラトミー在籍時には子どもたちに夢を届ける仕事にやりがいを感じ、長く勤めたいとも思っていました。しかし、ライフスタイルの変化や新たな挑戦を求める気持ちからベンチャー企業に転職し、ゲームプロデューサーとしての経験を積む中でリーダーシップを発揮するようになりました。業務委託として複数の案件を担当し仲間を集めていくうちに「これはもう会社だ」と感じ、法人化を決断しました。「今いるメンバーを守りたい」という想いが経営の原動力になっています。
子どもの頃からゲームには親しんでいたのですか。
はい。ファミコン世代なので子どもの頃からゲームが大好きでした。クリスマスのプレゼントはいつもゲームをお願いしていましたし、夢中になった記憶があります。その体験が原点となり、今エンターテインメントの力で人を楽しませる仕事に携われていることを、とても幸せに感じています。
人を動かす力を意識したコミュニケーション術
お仕事に向き合う上で、大切にされていることについて教えてください。
この仕事は、コミュニケーション力がなければ成立しないと考えています。デザイナーやプログラマーのように専門技術に特化した仕事であれば、一人で完結できる部分もあります。しかしプロデューサーやディレクターは、関わる人すべてと信頼関係を築き、協力を得ながら進めていく役割です。そのため「人とどう向き合うか」が成果を大きく左右します。
私自身、職人気質というよりは、多くの人と協力して成果をつくり出すスタイルが合っています。そのため、人との関わり方を常に意識してきました。
具体的にどのような工夫をされているのでしょうか。
大きな転機となったのは、デール・カーネギーの名著『人を動かす』に出会ったことです。この本を読んだことで、自分の人生や仕事への向き合い方が大きく変わりました。以来、書かれている内容を実践することを心がけています。
たとえば「相手の立場に立つ」「相手の考えや価値観に寄り添う」といったことは、どんな場面でも欠かせません。また「あなたは価値ある存在だ」と感じてもらえるように接することで、相手のモチベーションが高まり、自然と協力関係が築けます。私はスマホにメモを残して常に見返し、実際のコミュニケーションに活かすようにしています。
実際に実践してみて効果は感じられましたか。
大きな効果がありました。以前の私は「これがやりたい」「こうしたい」と自分の思いを優先しがちでした。しかし相手の視点を理解し、互いにメリットのある関係を築くよう意識すると、協力を得やすくなり、プロジェクト全体の推進力も増しました。組織やチームは一人では成立しません。お互いの強みを尊重し合いながら、共に成果を目指すことが大切だと強く実感しています。

受託から自社コンテンツへ 未来への挑戦
今後の事業展開や未来の展望について、差し支えない範囲で教えてください。
昨年末、大型ゲーム案件が終了したことをきっかけに、会社として新たな転換点を迎えました。その案件を中心に集まってくれたメンバーは、今では映像制作やSNS運用、ゲームの企画・運営、マーケティング支援など幅広い業務に取り組んでくれています。どの分野でも柔軟に対応し続けてくれるスタッフには感謝の思いしかありません。
一方で、彼らが抱いている願いでもあり、私自身の目標でもあるのが「自社発のコンテンツを世に送り出すこと」です。現在は受託案件を中心に活動していますが、次のステップとして「これは私たちの作品だ」と胸を張って言えるゲームやサービスを開発し、世の中に誇れる形で発信したいと考えています。YouTubeの「はふりちゃんねる」での情報発信も続けていますが、それをさらに発展させ、本格的な自社コンテンツへとつなげたいという思いがあります。
もちろん、まずは足元を固めることが先決です。ありがたいことに売上も伸びつつある今、いただいている案件を着実に遂行し、安定した経営基盤を築くことが当面の課題です。その上で、自社の強みを活かしたオリジナルコンテンツを世に出す――それが次なる挑戦であり、会社としての大きな目標です。
仕事が趣味 経営者の素顔と熱中する時間
経営以外で熱中されていることやリフレッシュ方法はありますか。
正直に言うと、いわゆる「趣味らしい趣味」はあまり持っていません。私にとっては仕事そのものが趣味であり、人生の大部分を占めています。子どもの頃から大好きだったゲームや映像に携われている今、好きなことをそのまま仕事にできているのは幸せなことです。
ただ、その分どんなことをしていても「仕事目線」になってしまうのも事実です。子どもと一緒にゲームをしていても「こういう仕組みになっているのか」と考えてしまったり、映画を観てもつい映像制作の観点で分析してしまう。家族との時間すら、自然と仕事とつながっているのです。
経営という立場では、営業や資金調達、組織づくりといったマネジメント業務が中心ですが、ときどき撮影や編集などの現場仕事に関わると、気持ちがリフレッシュされます。スタッフからすれば「社長が出てこなくても…」と思われるかもしれませんが(笑)、自分自身にとっては原点を思い出させてくれる大切な時間でもあります。
仕事以外の「熱中体験」を味わうことはありますか。
昔はパチンコやパチスロに熱中していた時期もありました。しかし今では、その感覚はビジネスに置き換わっています。もちろんギャンブルのように運任せではなく、戦略や努力が求められる世界ですが、「自分の選択や行動で結果を出す」という点では共通するものがあります。
例えば、資金調達を成功させて新しいプロジェクトが動き出した瞬間や、大きな成果を出せたときの達成感は、かつてのパチスロや競馬の遊技とは比べものにならないほどの高揚感を与えてくれます。競馬に例えるなら「馬券を買う側」ではなく「自分自身が走る馬」として勝利をつかむ。その達成感が、今の自分にとって一番の“快感”であり、最大のモチベーションになっています。
そしてこれからは、その走りをさらに加速させ、仲間や社会を巻き込みながら新しい景色を切り拓いていきたいと考えています。