テーブルトークRPGの新時代を切り開く――POD出版が拓く創作の可能性

テーブルトークRPG(TRPG)の魅力を新しい形で発信する創作ゲームサークル「遊勇舎(ゆうゆうしゃ)」。代表の雨音多一氏は、プリント・オン・デマンド(POD)という出版形態を活用し、少数部でも自由度の高い作品づくりを実現しています。
これまでに『テーブルトークRPG ファーガソン年代記』『恋愛テーブルトーク ラブコメ!』『レストランTRPG オムレツ・ハウス』の3作品を手がけ、“成長するRPG”という新しいコンセプトを打ち出しました。本記事では、そうした活動に込められた想いや制作へのこだわりを雨音氏に伺いました。

テーブルトークRPGを通じて“創造と発見”を届ける

まず、現在の活動内容について教えてください。

遊勇舎では、テーブルトークRPG(TRPG)のルールブックやサプリメントを制作・出版しています。これまでに『ファーガソン年代記』『ラブコメ!』『オムレツ・ハウス』の3作品を発表しました。出版形態はPOD(プリント・オン・デマンド)方式で、必要な部数を必要なときに印刷するスタイルを採用しています。完全受注生産のため、少数部でも出版できるのが特徴です。

POD出版を取り入れた背景を教えてください

もともとはPDFによる電子出版から始めたのですが、紙の本の持つ「読みやすさ」「保管のしやすさ」「参照のしやすさ」にはやはり大きな価値があります。PODなら在庫を抱える必要がなく、1冊単位で制作できるため、クリエイターにとって非常に柔軟で安価な方法だと感じております。現在はAmazonさんや楽天ブックスさんなどを通じて販売しています。

現在、特に注力されている取り組みはありますか。

「Growing RPG」というプロジェクトを展開しています。これは、最初に出版したルールブックをインターネット上で更新し続け、追加ルールや新しいモンスター、アイテムなどをブログ形式で発表・追加していくという試みです。それらを一定期間ごとにまとめ、最新版として再出版する“進化型”のTRPGです。

この構想を通じて、作品とプレイヤーがともに成長していく仕組みをつくりたいと考えています。TRPGは人と人が対話して物語を紡ぐ文化です。だからこそ、作品そのものも人と共に進化していくことに意義があると思っています。

多彩なペンネームに込めた創作への情熱――“つくる人”として歩み続けて

これまでのキャリアについて教えてください。

若い頃は税務会計事務所に勤務し、諸税や経理の実務を学びました。その後、印刷会社でDTPデザインを担当し、グラフィック制作のスキルを磨きました。やがて独立してフリーランスとなり、ホームページ制作やデザインの仕事を中心に活動を続けてきました。

2019年にサークル「遊勇舎」を立ち上げ、現在の活動の土台を築きました。長く個人で制作に携わってきた経験を活かし、今は「チームとして作品をつくる」ことを意識しています。

創作活動では、複数のペンネームを使い分けていると伺いました。

詩と小説は「雨宮大智」、テーブルトークRPG関連は「雨音多一」、ゲーム制作でも「雨音多一」、音楽では「Nijiya」という名義を使っています。本名は「鈴木太一」ですが、活動のジャンルごとに名前を分けることで、作品ごとの世界観を明確にできるようにしています。それぞれの名義に“その分野で自由に表現したい”という思いを込めています。

経営者としての意識が芽生えたのは、どのようなきっかけだったのでしょうか。

2005年30歳の元旦に、地元の青年会の行事で神社へ泊まり込みをしていたとき、「これからは自分の力でデザインの仕事を続けていきたい」と強く感じたことが転機でした。その年の5月に独立し、フリーランスとして活動を重ね、現在のように自ら企画・発信する形へと発展しました。

経営を通じて改めて感じるのは、“人とつくる”ことの奥深さです。仲間と意見を交わしながら、一つの作品を完成させていく。その過程には難しさもありますが、同時に大きな喜びがあります。サークルでは雇用関係ではなく、同じ志を持った仲間として協力し合う関係性を大切にしています。

現在はサークル活動以外にも、仕事を並行されているそうですね。

はい。現在も画像処理などの事務的な仕事を行いながら、創作活動を続けています。創作だけで生計を立てることは簡単ではありませんが、その中で得られる経験やスキルが作品づくりに還元されています。今後も生活のリズムを保ちながら、長く創作を続けられる体制を整えていきたいと思っています。

想像力がつなぐチームの輪――言葉と心でつくる創作の現場

お仕事をされる上で、大切にされていることを教えてください。

何よりも「想像力(イマジネーション)を持つこと」を大切にしています。想像力とは、相手の立場にたって考える力だと思っています。仕事上のやり取りでも、日常生活でも、相手がどう感じるかを思いやることが基本です。

テーブルトークRPGもまさに“言葉で物語を紡ぐ”世界です。ゲームマスターとプレイヤーが会話を通じて物語を進めていく中で、相手の反応を想像しながら発言する。そうした積み重ねが、楽しいセッションや良い人間関係を生み出します。創作でも仕事でも、「想像力」は人と人とをつなぐ大切な架け橋だと考えています。

その想像力は、もともとデザインの仕事から培われたものですか。

はい。グラフィックデザインの仕事は、まさに創造力と想像力の融合です。たとえば「この文字の大きさでは高齢の方が見づらいかもしれない」「この色の組み合わせだと刺激が強すぎるかもしれない」といったように、常に見る人の感覚を想像しながら形にしていきます。そうした積み重ねが、今の創作活動の“原点”になっています。

サークルメンバーとの関わりで意識されていることはありますか。

コミュニケーションでもやはり“想像力を持って接する”ことを心がけています。相手がどんな気持ちで話しているか、どんな言葉なら伝わりやすいかを考えながら言葉を選ぶようにしています。

サークルには20代の若いメンバーも多く、世代の違いを感じることもありますが、それも一つの刺激です。お互いの考えを尊重し、立場や年齢を越えて創作を楽しめるように、常に柔軟な姿勢で向き合うことを大切にしています。

二年に一作、確かな歩みで――仲間と紡ぐ創作の未来

今後のビジョンや目標について教えてください。

今は「2年に1作品、新作を発表する」ことを一つの目標にしています。その間には、既存作品を補うサプリメント(拡張ルールや追加設定)を随時制作していく予定です。新作とサプリメントを交互にリリースすることで、作品世界をより深く、長く楽しんでもらえるようにしたいと考えています。

継続的に作品を出すために意識していることはありますか。

特に意識しているのは“無理をしない持続的な創作”です。テーブルトークRPGはテストプレイの工程が非常に重要で、実際にプレイヤー同士で遊びながら改善点を見つけていく必要があります。ですが、限られた時間の中でこの作業を十分に取るのはなかなか難しい。だからこそ今後は、テストプレイの時間をもっと確保し、作品の完成度を高めていきたいと考えています。

サークルとして今後挑戦したいことはありますか。

作品づくりを通じて、人と人が自然に集まり、つながる場を増やしていきたいです。現在は約10名のメンバーで活動していますが、参加の度合いはそれぞれ異なります。企画の中心でシステムを設計する人もいれば、アイデアやデザインを支える人もいます。その柔軟さこそサークルの強みだと思っています。

今後は新しいメンバーを迎えながら、より多様な発想が交差するチームにしていきたいです。全員の力を合わせて、一つひとつの作品を丁寧に完成させていく――それが遊勇舎のこれからの目標です。

言葉と音を紡ぐもうひとつの創作――生成AIで広がる表現の世界

サークル以外では、どのような活動や趣味をお持ちですか。

最近は音楽制作にも関心を持ち、生成AIを使って詩や歌詞をもとに楽曲を作ることを楽しんでいます。私は詩や小説も書いており、どちらも「言葉」を使った表現です。詩や小説では「雨宮大智」という名前で作品を発表していますが、音楽の世界でも同じく言葉の力を軸に、自分なりの表現を探しています。

AIを活用した音楽制作では、歌詞を入力するとAIが自動でメロディを生成してくれるのですが、その完成度の高さには驚かされます。自分の言葉が音楽という形で新しい命を持つ感覚がとても刺激的で、リフレッシュの時間にもなっています。

AI技術を取り入れることへの抵抗はありませんか。

むしろ“創作の新しい可能性”として前向きに捉えています。AIを道具として使うことで、これまでにない発想や展開が生まれる。人間が考える余白が増えるように感じています。

テーブルトークRPGも、小説も、音楽も、すべての根底にあるのは「言葉で世界をつくる」という共通点です。これからも、テクノロジーと人の想像力が共存する形で、自分らしい創作を愉しんでいきたいと思っています。

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