稲盛流「人を生かす経営」を次世代へ――社会貢献を軸に中小企業を支援する

60歳を迎えた節目に、自身の経験を社会に還元するために立ち上げたモーニング・スター株式会社。代表の山下博士氏は、約35年にわたり京セラで培った経営哲学経営の仕組みをもとに、中小企業の経営支援を行っています。
「人を中心にした経営」「原理原則に基づく仕組みづくり」を軸に、稲盛和夫氏並びに諸先輩から受け継いだ考え方を次世代へとつなげていく。その思いと事業の特徴について伺いました。

経営の本質を伝える――稲盛哲学に基づく中小企業支援の形

まず、御社の事業内容と特徴について教えてください。

当社は、60歳のときに「社会貢献」を目的として立ち上げました。私は長年サラリーマンとして働いてきましたが、経営コンサルティングの仕事を通して、経営というものは思った以上に簡単ではありません。営業、製造、開発、管理などそれぞれの専門職を極めた方でも、会社全体を見渡す力を身につけるのは容易ではない。だからこそ、経営のあり方をもう一度原点から見直し、経営の中身を良くしていくサポートをしたいと考えました。

経営支援の軸になっている考え方はどのようなものでしょうか。

私のベースにあるのは、前職・京セラで学んだ稲盛和夫さんの経営哲学です。約35年にわたって実務を通して実践してきた中で、「人間として正しい考え方」と「経営の仕組み」の両輪が、会社を成長させる基本の鍵だと確信しました。私自身が担当した企業では、上場企業から社員50人ほどの中小企業まで、どのケースでも業績改善を実現できた経験があります。つまり、稲盛氏の教えは業種や規模を問わず通用する“普遍の経営原理”なのです。

具体的にはどのような体制で支援を行っているのでしょうか。

私一人で行うのではなく、京セラOBの専門家たちと連携してチームとして活動しています。例えば、コーチング・経営戦略・労務管理・安全衛生の各専門家など、それぞれの分野に長けた方々とパートナー契約を結び、企業の課題に応じた最適なチームで取り組んでいます。単なるアドバイスにとどまらず、現場に入り込み、経営者と社員が一体となって動く“伴走型コンサルティング”が当社の特徴です。

創業のきっかけには、どのような想いがあったのでしょうか。

京セラのコンサルティングは経費がかかり、中小企業や創業間もない企業様には手が届きにくいのが現状でした。私は長年その現場を見てきたからこそ、「良い経営を広めるためには、より多くの企業に門戸を開く必要がある」と感じたのです。そこで料金設定を大幅に下げ、志のある経営者が挑戦できる環境を整えました。利益よりも“日本の中小企業を元気にする”という理念を優先し、全員参加型の経営を伝えていくことが私の使命だと思っています。

キャリアの軌跡――実力主義の中で培われた「人を生かすリーダーシップ」

経営者として独立する以前は、京セラ一筋でキャリアを積まれてこられたと伺いました。どのような経緯で独立を意識されるようになったのでしょうか。

独立を考えたのは定年を迎えてからではなく、40代の頃から「いつかは自分の力で挑戦したい」と思っていました。ただ、当時は幹部そして役員として組織の中心にいたため、責任も重く、すぐに行動に移すことはできませんでした。そんな中、母が認知症を患い、家庭と仕事の両立を考える中で「今こそ人生の次のステップへ進もう」と決意しました。役職をすべて返上し、長年温めていた経営支援の構想を形にしたのが、モーニング・スター株式会社設立のきっかけです。人生は一度きり。やりたいことを実現したいという思いで踏み出しました。

50代で常務取締役に就任されたとのことですが、当時の京セラの評価体制はどのようなものだったのでしょうか。

京セラは学歴や年齢ではなく「実績」で評価される実力主義の会社でした。どれだけ理屈を並べても結果を出さなければ評価されず、逆に成果を上げれば年齢に関係なくチャンスをつかめる。私も現場改善や仕組みづくりに真摯に取り組み、その姿勢を評価してもらえた結果だと思います。この経験から“人を信じ、任せる経営”の大切さを学びました。社員を信頼し、チームとして力を発揮できる環境こそ、組織の最大の強みです。

稲盛和夫氏からの学びで印象に残っていることを教えてください。

稲盛氏は「経営の根本は人間として正しい生き方にある」と教えてくださいました。書籍『生き方』は私にとっての教科書です。実は大谷翔平選手も高校卒業時からこの本を読み、余白に感じたことを書き込んでいるそうです。経営でもスポーツでも、根底にある“哲学”が人を成長させるのだと感じます。

その教えをどのように今の指導に活かされていますか。

私は「波動」という言葉を大切にしています。リーダーの心や行動の波動は、必ず組織に伝わります。誠実に働けばその空気が広がり、利己的な考えが出れば全体の力が弱まる。だからこそ経営者自身が“心の経営”を実践することが重要です。技術や戦略以上に、「人としてどう生きるか」を問い続ける姿勢が、長く続く企業を育てるのです。

組織を育てる――「人間として正しいか」で判断する経営哲学

経営を実際にされてみて、想像とのギャップはありましたか。

あります。役員時代に感じていた“経営の厳しさ”と、経営者として味わうそれとはまったく違いました。サラリーマンの頃は会社という大きな組織に守られていましたが、経営者になると経費の1円を使うにも覚悟が要る。その判断一つで会社の行方が変わるからです。今は、全国の中小企業の経営者がどんな思いで日々奮闘しているか、心から理解できるようになりました。

経営の中で特に大切にしている考え方は何でしょうか。

京セラで学んだ「アメーバ経営」の精神です。社員一人ひとりが経営者意識を持ち、自ら考えて動く“全員参加の経営”を実践すること。トップダウンとボトムアップの調和を取り、現場の声を尊重しつつ全体最適を考えることが、強い組織づくりにつながります。

経営判断の軸として意識していることは。

「人間として正しいかどうか」で判断することです。稲盛氏は「損得ではなく善悪で決めなさい」と教えてくださいました。私もホームページに「道義と信義で判断する」と掲げています。たとえ自社が損をしても、お客様が喜ぶことを優先する――利他の心こそが企業を成長に導く原動力だと思います。

印象に残る組織文化のエピソードはありますか。

京セラでは、社員が上司に対しても遠慮なく意見を言える風土がありました。稲盛氏は「正しいと思うなら恐れず言え」と語っていました。私も今、組織を支援する中で、立場に関係なく“正しいことを言い合える関係”を築くことを大切にしています。

経営支援で意識している基本は何でしょうか。

「売上を最大に、経費と時間を最小に」。私は36歳の頃、売上700億円で利益ほぼゼロの企業を2年で黒字化した経験があります。特別なことをしたわけではなく、収入を増やし、支出を減らすという基本を徹底しただけ。派手な戦略よりも原理原則に立ち返ることこそ、時代に左右されない経営の要だと考えています。

未来への展望――「永く続く会社を育てる」ために

今後のビジョンについて教えてください。

私は会社を大きくすることよりも、「ご縁をいただいた一社一社を本当に良い会社に育てること」に集中したいと考えています。出会った経営者や社員の方々が、心から働く喜びを感じながら永く続く経営を実現できるようサポートすることが私にとっての理想の未来です。

「永く続く会社」とはどのような会社でしょうか。

経営者がいなくなっても理念が受け継がれ、社員が誇りを持って働き続けられる会社です。規模や業種ではなく、正しい考え方を軸にどんな状況でもブレないことが大切です。経営とは短期的な利益ではなく、人と人との信頼で成り立つもの。会社が続くということは、人の思いが続くということなのです。

これから力を入れていきたい取り組みはありますか。

今後は志を同じくする仲間とのネットワークをさらに広げたいと考えています。専門分野の異なるパートナーと連携し、経営者が孤独にならない環境を整えることが目標です。中小企業の経営者は、日々の判断を一人で抱え込みがちです。だからこそ、互いに学び合い支え合う仕組みを築き、前を向ける“灯”をともしていきたいと思います。

経営者やこれから経営を志す方へメッセージをお願いします。

会社の規模ではなく、「人として正しいことを積み重ねる」「社会に生かされているという自覚」「常にチャレンジする気持ちと風土」が何より大切だと思います。経営は孤独なようでいて、やはり人を信じ、人に助けられて成り立つもの。周囲とともに歩みながら、永く愛される会社をつくっていってほしいと思います。私自身も、出会うすべての企業と共に学び、支え合いながら、残された時間を社会のために尽くしていきたいです。

学び続ける姿勢――良きお手本を真似ることからすべてが始まる

経営者やこれから経営を志す方々へメッセージをお願いします。

一番大切なのは、良いお手本を素直に真似ることだと思います。どんな分野でも成功している人には理由があり、そこには学ぶべき“型”があります。私も京セラの成長期を経験し、「伸びる会社には伸びるだけの型がある」と実感しました。その型を徹底的に真似ることが、成長の第一歩です。

経営者は順調なときほど自分流に走りがちですが、原点を忘れてしまうと道がずれていきます。尊敬する中村天風さんも「学ぶとは、すなわち真似ること」と説かれています。真似て、真似抜いた先にこそ、自分の血肉となった判断力が生まれ、運も味方してくれるのです。

リフレッシュ方法を教えてください。

最近は読書と体を動かすことが中心で、特に高野山の空海に関する本に没頭しています。思想や修行の深さに触れることで心が整いますし、水泳や友人との語らいも良い気分転換です。

経営とは「人を理解し、自分を律すること」。どんな時代も、正しい考え方と学び続ける姿勢を忘れずに生きていきたいと思います。

関連サイト

    お問い合わせ内容
    氏名
    会社名

    ※会社・組織に属さない方は「個人」とお書きくだい

    役職

    ※会社・組織に属さない方は「一般」をお選びください

    メールアドレス
    電話番号
    どこでお知りになりましたか?
    お問い合わせ内容
    プライバシーポリシー

    株式会社アイドマ・ホールディングス(以下「当社」といいます)は、次世代型営業支援サービスを提供しております。当社に対するご信頼とご期待に応えるためには、お客様から取得した又は業務委託元等の取引先からお預かりした個人情報の取扱いの重要性を、全ての従業員が強く認識し、適正に取り扱うことが不可欠と考えております。そこで、当社は、個人情報に関する法令等及び以下に定める個人情報保護方針を、従業員一同がこれを遵守することを宣言します。 1. 個人情報の取得・利用・提供について 業務を通じて取り扱う個人情報、また従事する従業者の個人情報について適切に取得するとともに、事業活動を通じて定めた個人情報の利用目的の範囲で適切に個人情報を取り扱い、利用目的を超えた利用をいたしません。 またその行動を遵守するための措置として従業者教育や内部監査等を行います。 2. 法令等の遵守について 個人情報を取り扱う上で、個人情報保護法をはじめとする法令や、関連ガイドライン等の国が定める指針、条例、その他の規範を確認し、遵守します。 3. 個人情報保護のための安全対策の実施について 個人情報を安全且つ適切に取り扱うことを確実にするため、個人情報保護管理者を中心とした「個人情報保護マネジメントシステム」としての管理体制を組織し、また従業者一人ひとりへの教育を通じて、個人情報の滅失、破壊、改ざん、毀損、漏洩等の予防に努めます。 また、日々の確認、内部監査等を通じて、不適切な取扱いについては早期に検出し、原因を精査して是正、再発防止に努めます。 4. 個人情報の取り扱いに関する苦情及び相談 個人情報の取扱いに関する苦情、相談等に対して、受付窓口として「個人情報相談対応窓口」を設置し、本人の意思の尊重のもと遅滞なく、速やかに対応を行います。 5. 個人情報保護マネジメントシステムの継続的改善 当社の経営環境、社会情勢の変化や情報技術の進歩等に対応した個人情報保護を実現するため、柔軟に「個人情報保護マネジメントシステム」を見直し、継続的な取組みのレベルアップ、改善に努めます。 制定日 2014年2月1日 改定日 2022年4月1日 株式会社アイドマ・ホールディングス 代表取締役 三浦 陽平 〒141-0021 東京都 品川区上大崎 2-13-30 oak meguro 5・10F 個人情報に関するお問い合わせ窓口 株式会社アイドマ・ホールディングス 個人情報相談対応窓口 〒141-0021 東京都 品川区上大崎 2-13-30 oak meguro 5・10F 電話/03‐6455‐7935 メール/privacy@aidma-hd.jp 受付時間/10:00~18:00(土日祝日、年末年始の休業日を除く) 担当責任者/経営管理本部 担当役員

    プライバシーポリシー に同意して内容を送信してください。