子どもたちの“今と未来”を支える福祉のかたち

障がいのある子どもたちの放課後支援を中心に、地域に根ざした福祉サービスを展開する株式会社ココシフレ。「子ども・高齢者・障がい者と“ふれあう”ことを大切に」という理念のもと、親身になって寄り添う支援を行っています。本記事では、取締役社長の黒澤恵氏に、事業の現状や設立の背景、そして地域と未来を見据えたビジョンについて伺いました。

地域の子どもたちに“居場所”と“笑顔”を

事業内容と特徴について教えてください。

当社は、障がいのあるお子さんを対象とした「放課後等デイサービス」を中心に事業を展開しています。売上の約95%を占める主力事業であり、放課後や長期休暇中に安心して過ごせる環境を提供しています。また、行政と連携して行う「子育て支援事業」にも取り組み、多角的な福祉活動を行っています。会社名の「ココシフレ」は、“子ども(コ)・高齢者(コ)・障がい(シ)を持つ方とふれあう(フレ)”という理念を込めたもので、人と人との関わりを大切にする想いをそのまま社名にしています。

会社設立の背景を教えてください。

私は看護師・助産師の資格を持ち、病院で副看護部長として勤務していました。管理職になるにつれ、患者さんと直接関わる機会が減っていくことに葛藤を感じると共に、地域支援の重要性を感じ「病気になってからではなく、地域で予防・支援に関わりたい」という思いを強く抱くようになりました。その想いを形にするため、令和2年に会社を設立。副社長の夫は介護事業で培った経験を生かし、5年前から本格的に合流しました。現在は夫婦で協力しながら、地域福祉の発展に取り組んでいます。

地域との関わりや強みについて教えてください。

現在、放課後等デイサービスは定員10名に対し、契約者数が30名を超える状況です。利用者の多くは小学生で、設立当初に出会ったお子さんたちも今では6年生に成長しました。こうした子どもたちの成長に合わせて、2店舗目の施設を建設中です。新施設では、未就学児を対象とした「児童発達支援」と放課後等デイサービスを併設した複合型の運営を予定しています。行政と連携した子育て支援事業も行っており、乳幼児健診や新生児訪問などを通じて、地域の子どもたちを“生まれたときからつなげる”体制を構築。顔の見える関係性の中で、保護者が安心して相談できる支援ネットワークを築いています。

医療から福祉へ――“地域とつながる支援”を形に

これまでのキャリアの歩みについて教えてください。

私はこれまで、医療・介護を中心に「人の暮らしに寄り添う仕事」に携わってきました。長く医療現場で働く中で感じたのは、病院での関わりが“人生の一部分”に過ぎないということです。治療や処置の時間よりも、その人が地域でどう生きていくか“暮らしの継続”を支えることこそが本質的な支援だと気づきました。

経営者としての意識が芽生えたのはいつ頃ですか。

地域の人々と関わる中で、病院の枠ではできない支援の形があると感じたのがきっかけです。制度や人員の制約により、どうしても“組織の方針”に左右されてしまう現実がありました。もっと自由な発想で地域に貢献したい――その思いが経営に踏み出す原動力となりました。法人の形態を株式会社にしたのは、地域のニーズにスピーディーに応えられる柔軟さを重視したためです。

実際に経営を始めてみて、どんな学びがありましたか。

経営には、現場では見えなかった課題が多くありました。人件費や運営費など、数字で全体を把握する力や、スタッフを支えるマネジメントの重要性を実感しましたね。一方で、会社という枠を持つことで、地域の声をすぐに反映できる“機動力”が生まれました。

経営を通じて印象に残っている出来事はありますか。

保護者の方や関係機関の方から「ここがあってよかった」「安心して任せられる」と言っていただける瞬間です。その言葉が、何よりも励みになります。福祉の仕事は、誰かの暮らしに直接寄り添うこと。その喜びを、スタッフと分かち合える今の環境こそ、私にとってのやりがいです。

“つなぐ支援”を実現するチームづくり

お仕事をされる上で、大切にしていることを教えてください。

やはり一番に大切にしているのは、「人をつなぐ」ということです。会社名「ココシフレ」に込めた想いの通り、子ども・高齢者・障がいを持つ方など、誰もが地域の中で“切れ目なく”支援を受けられるような環境づくりを目指しています。

最近では「切れ目のない支援」という言葉がよく使われますが、私たちは“切れ目をなくす”だけでなく、“人と人をつなぐ”という視点を大切にしています。支援とは制度や仕組みのことだけでなく、「心」と「体」、そして「地域」とのつながりを保つことだと思うんです。

心が安定し、安心して暮らせる環境があるからこそ、体も元気でいられる。そうした循環を生むために、地域や家族と連携しながら一人ひとりの生活を支える――それが、私たちが日々の仕事の中で大切にしている考え方です。

社員の方々との関係づくりで意識していることはありますか。

現在、正社員・パートを含めて約10名のスタッフが在籍しています。小規模な組織だからこそ、日々の「会話」を大切にしています。形式的な会議だけでなく、業務の合間や終業後など、気軽に意見を言い合えるミーティングの場を設けています。
現場で感じたことや気づきをスタッフから聞くことで、子どもたちへの支援や保護者対応にも新しい視点が生まれるんです。

日々のコミュニケーションが、組織の強さにつながっているのですね。

そう思います。理念や方針をただ伝えるだけではなく、スタッフ一人ひとりが“なぜこの仕事をしているのか”を理解し、共感できる環境をつくることが重要です。その積み重ねが、利用者の方々にとっても安心感や信頼につながっていく。だからこそ、私たちは「言葉で伝える」「対話を重ねる」ことを何より大切にしています。

未来へ――“生まれてから大人になるまで”を支える福祉のかたち

今後のビジョンについてお聞かせください。

現在の主力事業は、6歳から18歳までの子どもを対象とした放課後等デイサービスですが、人生のライフサイクルで見れば、その期間はほんの一部分に過ぎません。私たちは「生まれてから、成長し、社会に出て、そして大人になっていく」そのすべての過程を支援することを目指しています。

今後は、就学前の児童発達支援から成人後の就労支援まで、切れ目のないサポートを展開していく予定です。すでに新しい複合型施設の建設が進んでおり、2026年2月には稼働を予定しています。そこでは幼児期の支援と放課後等デイサービスを一体化させ、将来的には“働く場所”としての就労支援事業所も併設する構想を描いています。

18歳以降の支援では、どのような取り組みを考えていますか。

「働く=自立」ではなく、“自分らしい生き方を支援する”ことを重視しています。障がいの有無にかかわらず、一人ひとりに合った働き方や暮らし方を共に考え、生活リズムや社会との関わり方を整えることで、自分のペースで生きる力を育む場をつくりたいと思っています。

今は保護者の方が生活を支えていますが、将来的には子どもたち自身が自分の力で社会と関わり、地域の中で自立していけることが理想です。そのために、就労支援型の事業所や生活訓練の拠点を整え、“働きながら暮らしを学ぶ”という仕組みを根づかせていきます。

「生涯にわたる支援」を目指す上での想いを教えてください。

私たちが理想とするのは、「地域の中で誰もが自分らしく生きられる社会」です。生まれた時から関わり、成長を見守り、やがて自立へと導くという循環を地域全体で支えることができれば、子どもたちはもっと伸びやかに未来へ進めるはずです。福祉の枠を越え、地域づくりの一端を担う存在を目指し、子どもたちの笑顔があふれる場所を増やしていきたい。そこに関わる大人たちも幸せになれる“優しい連鎖”を広げていくことが、ココシフレの使命であり、これからの挑戦です。

心を癒し、体を動かす時間が次のエネルギーに

お仕事以外でのリフレッシュ方法を教えてください。

自宅では3匹の犬を飼っていて、日々たくさんの癒しをもらっています。2匹のスピッツと1匹のマルチーズで、家に帰るといつも元気に迎えてくれるんです。忙しい日々の中で、動物と触れ合う時間は心が整う大切な瞬間ですね。

また、体を動かすことも好きで、時間があるときはゴルフに出かけたり、地域の仲間とバレーボールを楽しんだりしています。プレー中は仕事のことを忘れて夢中になれるので、いいリフレッシュになります。

心と体を健やかに保つことが、次の挑戦へのエネルギーになる。これからも“人とのつながり”を大切にしながら、地域の子どもたちや仲間たちと共に、温かい循環を生み出していきたいと思います。

「経営道」をご覧になっている方々へ、メッセージをお願いします。

経営者として大切にしているのは「人」そのものです。人とのつながりや出会いがあるからこそ、企業は成長していける。どんなに仕組みや制度が整っていても、そこに“人の想い”がなければ続きません。

企業の発展も挑戦も、すべては「人」を財産として大切にできるかどうか。それを忘れずに、一つひとつの出会いを大事にしていけば、きっとどんな困難も乗り越えていけると思います。

私たちココシフレも、そんな“人の温もり”を軸に、地域と共に歩み続けていきたいです。

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