株式会社The New Doorは、2024年5月に設立されたスタートアップ企業です。
インバウンド向け宿泊施設の運営を軸に、パーソナル英語コーチングや国際体験プログラム、多拠点生活の促進など、国境や文化を越えた「出会いと学びの場」をつくる事業を展開しています。
松山代表が掲げるのは「地域の魅力は、人を通して伝わる」という理念。
宿泊事業を“箱”としてではなく、地域の人々と来訪者がつながるきっかけを生む拠点と捉え、観光を通じた多文化共生と地方活性の両立を目指しています。本記事では、松山代表にその理念と事業の背景について伺いました。
目次
世界と地域、人と人が交わる拠点をつくる
まず、現在の事業内容や特徴について教えてください。
弊社は設立して間もない会社ですが、現在は主にインバウンド向けの宿泊施設運営を中心に行っています。加えて、私自身が担当しているパーソナル英語コーチング、そして今後展開予定の国際体験プログラムや多拠点生活促進プロジェクトなど、国内外の人々が交流できる仕組みを整えています。
これらの事業は「地域の人と世界をつなぐ」という目的のもと、地元事業者と協力しながら“ローカル体験×宿泊”の新しい形を生み出すことを目指しています。
このような事業を始められた背景を教えてください。
私自身、長く海外で暮らし、働き、子育てもしてきました。特にドバイでの経験を通じて、多文化共生の本質を日常の中で学びました。ドバイは多言語・多宗教・多国籍が共存する街で、「違いを尊重しながら共に生きる」ことが自然に根づいているんです。
その後、日本でインバウンド観光や地方創生の仕事に携わる中で、日本の地域の素晴らしさを改めて感じる一方、「もっと世界に開かれた場をつくりたい」と思うようになりました。世界に日本の地域の魅力を発信し、同時に日本の人々にも「自分が輝ける世界は一つではない」と感じてもらえるような出会いの場をつくりたいという想いからThe New Doorを立ち上げました。
宿泊事業のコンセプトについて、もう少し詳しく教えてください。
私たちの宿泊事業は、単なる宿ではなく「人と人が出会い、交流する場所」を目指しています。宿泊施設という“ハード”を拠点に、地域の方々と連携してローカル体験を提供する“ソフト”の部分を重視しています。
たとえば、地元の料理体験や文化交流など、旅人と地域が自然に交わる機会をつくることで、「地域の魅力は人を通して伝わる」という理念を形にしています。宿での出会いを通じて、誰もが自分らしく輝けるきっかけを見つけられる。そんな場所づくりを目指しています。
自分の可能性を信じて踏み出す――海外経験が育んだ“挑戦する力”
英語を学び始めたきっかけを教えてください。
大学では小学校の教員免許を取得しましたが、当時は「自分が何に向いているのか」を模索していました。卒業後、英語が話せたらかっこいいな、という気持ちだけでオーストラリアへ。英語はまったく話せませんでしたが、「自分の世界を広げたい」という想いで飛び出しました。
現地では英語を話さなければ生きていけない環境。サバイバルのような日々を通して、必死にコミュニケーションを学びました。そこで得た経験を整理し、後に「パーソナル英語コーチング」として体系化しています。
その後のキャリアはどのように展開されたのですか。
帰国後、外資系航空会社に就職し、成田空港で地上職員として勤務しました。多国籍なお客様とのコミュニケーションを通して、「言葉がつなぐ世界の広がり」を実感しました。結婚・出産後はドバイへ移住し、現地のインターナショナルスクールに就職。日本人がほとんどいない環境で、仕事と子育てを両立させました。
その経験が現在の原点につながっているのですね。
そうですね。知らない世界に飛び込むことは怖いですが、出会いが人生を変える瞬間を何度も体感しました。だからこそ、どんな人にも可能性があると信じています。私の事業も「新しい出会いの場をつくること」が核にあります。知らなかった人・文化・生き方を知ることで、自分の可能性に気づく。そんな出会いの場を提供したいと思っています。そういった想いから、会社のビジョンは、「一人一人が自分らしく幸せに生きている未来を創造する」としました。

自分の人生のハンドルを握る――起業を決意した瞬間
経営者を志すようになったきっかけを教えてください。
海外での仕事を経て、日本ではインバウンド向け観光ベンチャーに勤めていました。地域の魅力発掘や英語人材育成など、多くの経験をさせていただき、マネージャー職にも就きました。しかし、コロナ禍で事業が大きな転換期を迎え、仕事のボリュームも増加。子育てとの両立で体調を崩したことを機に、「自分の人生の時間の使い方は、自分で決めたい」と強く思うようになりました。
そのとき、どんな行動を起こしたのでしょうか。
まずは自分の得意と好きに立ち返り、英語とコーチングを掛け合わせた「パーソナル英語コーチング」を立ち上げました。口コミで広まり、フリーランスとして活動を開始。その後、祖父の空き家を再生する機会が訪れ、宿泊事業へと発展しました。

とても自然な流れで事業がつながっていますね。
そうなんです。好きなことを追求するうちに道が開けていった感覚です。人生は“点”の連続ですが、振り返るとその点が一本の“線”になっていた -そんな実感があります。
今も探究心を持ち続けているのですね。
はい。私は不安を「分解して理解する」タイプなんです。不安は“わからないこと”から生まれる。だからこそ、学び続けて知ることで前に進めると考えています。自分を知り、人を理解することが、コーチングにも経営にも通じていると思います。
“人を育てる力”が組織を強くする――信頼と対話のマネジメント
チームづくりやコミュニケーションで意識していることは何ですか。
私はワンオンワンがとても好きで、対話の時間を大切にしています。人の話を丁寧に聞くことで、その人の「得意」や「課題」が見えてくる。英語コーチングでも、スキルだけでなく“マインドの変化”をサポートしています。
人材育成は経営の柱でもありますね。
まさにそうです。例えば英語コーチングでは、英語を教えるだけではなく、その人がどんな未来を描きたいのかを一緒に考えることが大切。英語は手段であって目的ではありません。自己理解や挑戦のプロセスを通じて人生を前に進める――そんな学びの場をつくることが、私の使命だと思っています。
組織づくりにもその哲学が活かされていますね。
はい。「地域の魅力は人を通して伝わる」という理念のもと、青森・横浜・愛媛の3拠点で活動しています。地域の方と直接話し、その人自身の魅力に触れることで「だからこの場所が素敵なんだ」と感じる瞬間がある。そうした出会いを積み重ねながら、チームとしても地域としても成長していきたいと思っています。
青森から世界へ――“多文化共生の拠点”を築く未来
今後のビジョンを教えてください。
現在は青森を軸に、横浜・愛媛の3拠点で事業を展開しています。今後は青森に「多文化共生の交流拠点」をつくり、地域に眠る遊休資産を活用しながら、宿泊・体験・交流を組み合わせた新しい観光モデルを広げていく計画です。
地域にも還元される仕組みなのですね。
はい。宿泊や体験で得た収益は、できる限り地域に還元します。地元の方が体験提供者となり、観光を支える多様な人材を増やしていく。その中で関係人口を拡大し、何度も訪れたくなる“地域ファン”を育てたいと考えています。
青森発のモデルを全国へ広げていく構想もあるとか。
そうですね。現在、青森県のアクセラレートプログラムにも採択されており、行政や地域企業と連携しながら基盤づくりを進めています。将来的には青森での成功モデルを全国へ展開し、地方創生のプラットフォームへと成長させたいです。
私が創りたいのは、文化や言葉の違いを超えて、人の可能性がひらく“出会いの場”が各地に広がっていく未来です。地域と世界が出会う瞬間には、人生が変わるような学びが必ずある。
青森から、その新しい流れをつくる一歩を踏み出しています。
すべての人に可能性がある――挑戦を恐れず、自分を信じる
プライベートの過ごし方を教えてください。
語学を学ぶのが好きで、今は中国語を勉強しています。また、子どもの夢を応援する“推し活”も私の楽しみです。最近は体づくりにも力を入れており、心身ともに整える時間が仕事への活力にもなっています。
最後に、経営を目指す人や新たな挑戦を考える人へ、メッセージをお願いします。
まず伝えたいのは、「誰にでも輝ける世界がある」ということです。自分の可能性を信じることが、すべての出発点だと思います。迷ったときは頭ではなく心に聞く――ワクワクする方向を選べば、道は必ず開けます。
「経営者になる」というのは、手段でしかありません。「自分は何を成し遂げたいか」「どんな未来をつくりたいか」などの目的があり、その目的を達成するために必要であれば、経営者になる。遠いゴールから逆算して今を選ぶ“バックキャスティング”の発想が大切です。また、1人でやろうとせず、想いや目的を共有できる仲間と「共創」すること。共感が輪を広げ、社会を動かす力になると信じています。

