自分らしく生きる社会をつくる──NPOスローライフが描く自立支援の未来

障害のある方々の「自分らしく生きる」を支える非営利団体スローライフ。自立支援施設やグループホーム運営を中心に、働く・暮らす・安心して生きるを実現するための総合的なサポートを手掛けています。本記事では、田中代表に事業の特徴、立ち上げた背景、ご自身のキャリア、組織づくりや未来の展望まで幅広く伺いました。

“自分らしく生きる”を支える──スローライフの事業内容と理念

事業内容について教えてください。

私たちスローライフは、自立支援施設とグループホームの運営を中心に、障害のある方々が「自分の力で生活する」ための環境づくりを行っています。最終的には一人暮らしを実現し、地域の中で自分らしく暮らしていけることを目標としており、入居から生活習慣づくり、就労サポートまで、生活に必要な支援を包括的に提供しています。

御社ならではの特徴はどのような点でしょうか。

大きな強みは、グループ会社との連携により、生活支援から就労支援までを一貫して行える点です。当団体には約7社の関連企業があり、派遣事業や生活サービスなど、自立に必要な機能が幅広く揃っています。そのため利用者のステップアップを段階的に支援でき、ほかにはない「生活から就労までの一気通貫のフォロー体制」を実現しています。自立に向けて必要な環境が整っていることは、利用者にとって大きな安心につながっていると感じています。

この事業を始めた背景や理念を教えてください。

スローライフが掲げる理念は、「自分らしく生きる」。障害のある方々は社会の中で誤解や偏見から肩身の狭い思いをすることも少なくありません。しかし私たちは、それらを“欠点”ではなく“個性”として捉えています。生きづらさを抱えやすい人たちが、周囲を気にせず、自分らしく暮らせる環境をつくりたい──そんな思いから事業がスタートしました。

“自分らしく生きる”ためには、住まい・仕事・人間関係など、複数の要素が連動して整っている必要があります。当団体では「生活の安定」と「働く機会づくり」を両輪として支援し、ただ生活を支えるのではなく、その先の未来を一緒に描いていく伴走型のサポートを大切にしています。

多様なキャリアから導かれた“福祉”という道──田中代表の原点と挑戦

福祉分野への関わりは、どのような経緯で始まったのでしょうか。

もともとは福祉とは異なる業界で27年間、経営者としてさまざまな事業に携わってきました。学生支援や不動産など幅広い分野に取り組む中で、家族の事情や身近な出来事から福祉への関心が芽生え、「助けを必要とする人が安心して暮らせる環境をつくりたい」という思いが強くなったことがきっかけです。

さまざまな選択肢がある中で、なぜ“就労支援”に注目されたのでしょうか。

理由のひとつは、グループ会社に不動産事業があり、空き家や遊休物件を活用できたことです。住まいの環境を整えやすい点から就労支援を入口に選びました。また、障害のある方の中には移動が難しい方も多く、将来的には在宅ワークやIT系の仕事など“場所に左右されない働き方”を提供したいと考えています。環境の負担を減らしながら、社会とのつながりを広げ、自立へ進める仕組みをつくることが私たちの目指す支援です。

福祉領域は未経験だったとのことですが、立ち上げ時に苦労はありましたか。

制度や申請など初めてのことも多くありましたが、福祉に詳しい仲間や、長年グループホームを運営している方々の支えがあり、前向きに取り組むことができました。特に注力したのは「利用者の未来につながる支援体制をどうつくるか」という仕組みづくりです。理念に沿ったサービスを形にしていく過程は簡単ではありませんでしたが、大きなやりがいを感じています。

27年間の経営経験を通して、「自分で決断し、責任を持つ働き方」が自分には合っていると感じてきました。迷うより挑戦を選ぶ性格が、福祉事業という新たな挑戦にも自然につながったのだと思います。

“ほどよい距離感”がつくる信頼関係──組織づくりとスタッフへの向き合い方

経営者として歩む中で、スタッフとの関わり方についてどのように考えていますか。

長く経営を続けてきて感じるのは、組織にとってスタッフは何より大切な存在だということです。自分は完璧ではなく、人をまとめることに苦手意識を抱いた時期もありましたが、スタッフが真剣に仕事へ向き合う姿を見ると、感謝と同時に「自分も誠実でありたい」という気持ちが自然と湧いてきます。

経営者像について、実際にやってみて感じたギャップはありますか

経営者になればいつか楽になるのでは、と考えていた時期もありましたが、実際には常に“オン”の状態が続く仕事でした。ただ、それは苦しさではなく「責任を果たしたい」という思いの表れです。スタッフが時間を守り、丁寧に働いてくれている姿を思うと、自分だけが気持ちを緩めるわけにはいかないと感じます。“かっこつけたい”という表現が近いかもしれませんが、スタッフに対して誠実であり続けたいという気持ちが、日々の原動力になっています。

スタッフとのコミュニケーションで大切にしていることは何でしょうか。

立ち上げ当初は「家族のように接したい」と考えていましたが、福祉事業では適切な距離感も重要だと気づき、現在は“ほどよい距離”を意識しています。必要以上に踏み込みすぎず、しかし気持ちは寄り添う。そのバランスが働きやすい職場づくりにつながると考えています。日々の会議で業務連携を取りつつ、時には食事をしながらリラックスした時間を共有するなど、自然体で信頼関係を深める関わり方を心がけています。

また、教育面では外部研修や専門家の勉強会を取り入れつつ、自社の理念に沿った形で育成する体制を整えています。責任者は資格が必要ですが、補助業務であれば無資格でも働けるため、意欲ある人材が挑戦しやすい点も大切にしています。

私自身、障害という“線引き”をなくし、一人ひとりの個性を尊重する姿勢を最重視しています。この価値観をスタッフと共有し、互いを信頼し合えるチームでありたい──それがスローライフの組織づくりです。

“本当の意味での自立”を支える未来へ──スローライフが描く中長期ビジョン

今後のビジョンについて、どのような未来像を描いていますか。

福祉支援は、幼少期・18歳・成人といった年齢ごとに区切りが生まれやすく、長く寄り添いたくても難しい場面があります。だからこそ私は、年齢に関係なく「その人の人生にずっと寄り添える支援」を実現したいと考えています。若い方でも、中高年の方でも、その人が“自分らしい形で自立していけること”。そのための仕組みづくりこそ、スローライフの使命だと思っています。

支援の最終形として、どのような関係を目指しているのでしょうか。

現在は利用者の方を私たちが支える立場ですが、将来的には「利用者の方が私たちを支えてくれる関係」に発展していく未来を描いています。たとえば、スキルを身につけた利用者が仕事を手伝ってくれたり、得意を生かして一緒にサービスをつくったり──支援する側・される側を越えた“パートナーのような関係性”が理想です。

スローライフならではの強みはどのような点でしょうか。

私たちは「本当に自立できる環境づくり」にこだわっています。自立の土台となるのは、安心して暮らせる住まいです。スローライフのグループホームは一般的な施設よりワンランク上の住環境を整えており、「ここに住みたい」と思ってもらえる空間づくりを徹底しています。清潔さや静けさ、安心感は、心の落ち着きや自立への意欲にも直結します。

もちろん“自立”とは、一人で全てを背負うことではありません。必要な場面では支え、時には私たちが頼ることもある。そんな双方向の信頼関係があるからこそ、人は前に進んでいけるのだと思います。

スローライフは、単なる生活支援の場ではなく、「人生の可能性を広げる場所」でありたい。住まい・仕事・心の在り方を含め、自立につながる環境づくりをこれからも丁寧に積み重ねていきます。

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“人と関わる時間”が原動力──田中代表のリフレッシュと大切にしていること

経営以外で、心のリフレッシュになっているものはありますか。

常にオンの状態が続く中で、息抜きになっているのが「経営者仲間とのゴルフ」と「子どもたちとのサッカー指導」です。ゴルフでは同じ立場の仲間と気兼ねなく話しながら過ごせるため、自然と心がほぐれます。笑い合う時間そのものが、何よりのストレス発散になっています。

サッカー指導は長く続けられているそうですね

はい。指導は十年以上続けています。最初は自分の子どもが所属する少年団の指導から始まり、先輩に誘われて本格的にクラブチームに関わるようになりました。「子どもと過ごせる時間は今だけだ」という言葉に背中を押され、気づけば長く続けている大切な時間になりました。子どもたちの笑顔や成長は、何よりの活力です。

経営とサッカー指導に共通点はありますか。

どちらも「相手を理解し、信頼し、成長を見守る」姿勢が重要だと感じます。子どもたちが少しずつできることを増やしていく姿を見ると、自分も多くの気づきを得ますし、その学びは経営にもつながっています。人と関わり、成長に寄り添う時間こそ、私にとって大きなリフレッシュであり、エネルギーの源です。これからも、人とのつながりを大切にしながら前に進んでいきたいと思っています。

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